
水戸市南町の繁華街で7月28日夜、サバイバルナイフやナタで通行人6人を次々に切りつけて重軽傷を負わせ、殺人未遂の現行犯で逮捕された塩原弘和容疑者(48)の横顔が集英社オンラインの取材で浮かび上がってきた。現場近くの分譲マンションに住む塩原容疑者は地元の名門高校を2度留年した後、国立大学を経て農協に就職、10年ほど前に元茨城県警幹部だった父親を亡くしていた。
「お父さんが警察署長やってたほどの人なので…」
登記簿謄本によれば塩原容疑者は、現場近くの19階建てマンションの中層階の約72平方メートルの部屋を新築当時の2018年に購入しており、笠間市内の実家から1人で転居したとみられる。
実家の2階建て住宅は1990年に新築、父母が半分ずつ共有していたが、2016年12月に父親の持ち分全てを母親が相続していた。実家の近くに住む男性がこう証言した。
「事件のニュースを見てすぐ、『あいつだ』と思いましたよ。母親と喧嘩している様子を知っているので。塩原容疑者一家は30年ぐらい前に笠間稲荷神社の近くからここに引っ越してきたんですよ。当時は本人が中学生くらいで、祖父母と父母と弟の6人家族でした。白い犬も飼っていました。
あの一家とは付き合いはなかったけど、容疑者と母親がよく言い合ったり何かモノを壊す音がしていましたよ。昼夜問わずに大喧嘩していて、容疑者の『何でボクばっかり』という声も聞きました。
弟さんと何か比較されたりしたんじゃないですかね。弟さんは奥様と子供を連れて月に1度ほど遊びに来ていました」
母親と塩原容疑者のあまりの険悪ぶりに、男性はいつか警察沙汰になるのではないかと懸念していたという。しかし……
「お父さんが警察署長をやってたほどの人なので、周りも気を遣ってたんですかね。
まあ近所迷惑なほどうるさいのに謝罪の一つもないので、近隣のみなさんもあの一家とは距離を置いていましたね。
お父さんは忙しいのか、家にあまり帰ってきていなかったようでしたけど、10年ほど前にお亡くなりになりました。その際は容疑者が喪主をきちんと務めたんですが、それを機に本人は家を出て、以来こちらに戻ってきていないですね」
「名門高校を2度留年し中退、通信高から茨城大学へ」
塩原容疑者は笠間市内のJAで16年間勤務していたといい、当時の上司が取材に重い口を開いた。
「2006年の4月から新卒入社、2022年12月に自己都合で退職しています。職場では頭がいいことで知られていて、中学、高校と名門と呼ばれる進学校に進んだもの高校は2回留年した後に中退、その後通信制高校に通った後、茨城大学に進んで5年間で卒業したそうです」
勤務態度は真面目で無断欠勤なども職員同士のトラブルも聞いたことがありませんが、本人はコミュニケーションを取るのは上手ではなかった印象はあります。とにかくおとなしい男性で、お酒も飲まないし、バーベキューなどの社内イベントにも顔を出すほうではありませんでしたね。
仕事の評価は高いわけでも低いわけでもなく、可もなく不可もなくという感じ。生真面目な性格を反映してか糊の効いたシャツに手入れされたスーツをきっちり着こなし、言葉遣いも丁寧な職員でした。
ですから今回の事件には驚いています。普段は眼鏡をかけていて、身長は170センチないぐらいの小柄で細身でした」
署長や県警本部の課長を務めたほどの警察幹部だった父と、折り合いの悪かった母。職場では決して荒々しい態度を見せなかった気弱な元“優等生“を凶行に駆り立てたのは何だったのか。
県警によると、塩原容疑者は約10年前に「誰かにつきまとわれている」「誹謗中傷されている」などと警察に相談しており、事件後は「私を止めに来た人を切り付けた」などと供述しているという。県警の捜査に注目が集まる。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班