
児童館というと絵本やおもちゃなどが用意されていて小さな子どもたちが遊ぶ施設というイメージがあるかもしれない。だが、昨今では中高生の居場所づくりのための児童館が増えているという。
音楽スタジオ、バスケコート、クッキングスタジオも完備
池袋駅から徒歩15分程度の閑静な住宅街にある「ジャンプ東池袋」に取材に訪れると、職員が笑顔で出迎えてくれた。平日は午前10時から午後8時(中学生は午後7時)まで、土日は午後6時まで利用可能だという。
この日は夏休みということもあって平日の正午過ぎでも施設の利用者は20人以上いて、机に座って漫画を読んでいる中高生や友達同士で談笑する中高生など思い思いの過ごし方をしていた。
館内の施設について職員が説明する。
「本棚の漫画を読んだり、ゲームをしたり、タブレットを使ったりして過ごすこともできます。最近の中高生で盛り上がっているのは麻雀です。競技として熱中している子も多く、大会にも出ているそうです」
これまでジャンプではビリヤード台、ダーツ、卓球台、ピアノ、クッキングスタジオと様々な物や設備を揃えてきた。驚くことに館内に音楽スタジオまであり、屋上にはストリートバスケット風のバスケコートまであるのだ。
この日、音楽スタジオに練習に訪れていた男子高校生はこう語る。
「自分がここに来るようになったきっかけはバンドの練習です。
また、別の女子高校生は友達と気兼ねなく集まれる場所だと笑顔を見せた。
「ジャンプに集まってから友達と話して、また別の場所に遊びにいったり、逆に遊んでからジャンプに来てゆっくり過ごすこともあります。学校に登校することが難しくてもジャンプには来れたりする中高生もいますし、ここに来ていれば友達ができたりするのでいいですよね」
様々な子たちがジャンプに集まって来ているというが、普段の様子について職員に尋ねてみた。
「平均すると中高あわせて1日60人くらいが普段利用していますね。仲のいい友達同士でタブレットをさわりにきたり、1人でくる中高生だと漫画を全巻読破するという目的があってくる中高生など様々です。
外国籍の中高生も来ていて、友人同志で通訳しながら日本語を学んだり、ジャンプで知り合った友達を通して日本語に触れる機会にもなっていました。職員とおしゃべりがしたくて遊びに来る中高生もいます」
「お金がかからずに遊べる場所がないという話をよく聞きます」
小さな子どもたちが遊ぶ児童館と大きく違うのはどういった点だろうか。職員は言う。
「幼い子たちですと怪我をしないようになど各部屋で職員が見守ることもありますが、ジャンプでは各部屋に職員がいて様子を見守るといったことはほとんどありません。
中高生ですので、人に迷惑をかけないなどルールを守れるようになっていることが前提でもあり、もしルールを守れない場合はその都度対応していますが、どのようにして過ごすのかは自由ですし各々の判断に任せています」
過去には家庭の事情などで家に帰りたくない中高生がジャンプに来ていて、児童相談所に連絡したケースもあったという。事情を抱える中高生たちに職員はどのように接していくのだろうか。
「仮に何か事情があるような中高生がいたとしても根掘り葉掘り聞くことは逆効果だったり、周りの人たちに自分の置かれている状況を知られたくないという思いから隠すこともあります。
また、自分がそのような状況にあると自覚していないことも。ですので、抱えてる事情について見つけることはとても難しい。
職員は中高生ひとりひとりと信頼関係を作ることを心掛けながら中高生と関わっていますので、信頼関係ができてくると会話の中で本人の方から悩みを打ち明けてくれることもあります。
それから月に一回子どもの権利擁護委員の弁護士の方に来ていただいているので、中高生はそこでも相談できます。以前に家庭に事情を抱え帰宅を望まない高校生の相談からシェアハウスを紹介してもらったり、バイトがブラックでどうすればいいか、などいろいろな相談にのってくれています」
こども家庭庁が発足されてから若者の支援について、これまでよりも国が推進しはじめたこともあり、ジャンプにも地方からの視察などが多く来るようになったという。中高生向けの児童館の必要性について職員が語る。
「近年、他県から行政の視察が増え、全国的に動きが進んでいるように感じます。それぞれ環境は違いますが、中高生向けの居場所・児童館は必要かと思います。
繁華街にはこの年代の子には魅力的に見える場所がいっぱいあるでしょうし、危険に巻き込まれることもありますからね。
中高生からお金がかからずに遊べる場所がないという話をよく聞きます。なんとなく誰かと話をしたい時、ちょっと寂しかったりする時、暇な時などどこにも居場所がないというのは中高生たちにとってつらいことだと思いますし、安全に遊べる場所として中高生向け児童館は今後もっと増える必要があるのではないかと思います」
様々な子たちの受け皿になっているジャンプ。親とも先生とも違った側面から接する“職員”という大人の存在は、心も体もグンと成長する思春期の子たちにとってきっといい影響を与えているに違いない。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班