
甲子園に広島代表として出場している広陵の野球部寮で約半年前に暴力事件があり、被害の詳細を生徒の親を名乗る人物がSNS上に投稿し大炎上している。これを産経新聞が8月5日に報じたことで問題が急浮上した。
旭川志峯のブラスバンドから「仁義なき戦い」のテーマソングが流れ…
7日に行われた広陵と旭川志峯の1回戦は前のカードが延長までもつれたため、予定開始時刻より約45分遅い午後7時29分にプレイボール。完全に日が落ち最初からナイターとなった。
広陵名物の野球部員を中心とした大応援団が3塁側アルプス席の前方を占めたが、チアガールと吹奏楽部員たちの姿はなかった。バックスクリーンの電光掲示板には、真偽は不明だがSNSで加害者として名指しされた選手の名もある。
旭川志峯の1回表の攻撃を三人で封じ、広陵の最初の攻撃となった1回裏、大型メガフォンを持った広陵野球部員応援団は総立ちとなり、地響きのように応援の声を飛ばす。太鼓も戦場のドラのように打ち鳴らされた。
だが2回表、1死から旭川志峯の石田が右中間を破るスリーベースを放つと広陵側は沈黙。数では広陵の半分に及ばないと見られる旭川志峯の応援団のマーチが沸き上がる。
4回表、平凡な内野ゴロの処理が崩れて旭川志峯にノーアウト2塁のチャンスを献上した広陵。旭川志峯のブラスバンドは、広島のチーム相手にあえてなのか「仁義なき戦い」のテーマソングを打ち込んでくる。
結局3塁に走者を進ませた旭川志峯がヒットで先制点を奪取。
しかし先発の堀田はこれ以降、得点を許さず3安打10奪三振で完投、打線も効果的な犠飛2本などで3点を挙げ、広陵が地力の差を見せて押し切った。試合後、部員が乗ったバスには保護者らの拍手に加え、「がんばれ広陵」との声援も飛んだ。
試合中も暴力事件に絡むヤジが飛ぶこともなく、平穏に推移したように見えた。
しかし、敗れた旭川志峯の元野球部員の男性Cさん(17)は「あんなに炎上して広陵の選手のメンタルは大丈夫かなと思いましたけど、やっぱり影響はあったと思います。エラーなんかも結構してましたから」と振り返った。
「高野連がとった措置は“後付け”の印象」
さらに、女性ながら高校時代に男子に交じって野球部でボールを追ったという大学生のDさん(20)は「きょうの球場は広陵にブーイングをするというより旭川志峯を応援する人が結構多かったです。旭川の方がよっぽど遠くてアウェーなのに、甲子園から近い広島のチームが全然応援されないっていうのは複雑ですね」と冷静に分析した。
Dさんは、野球部を離れ転校した被害者の元部員の心中を思いやりながら、今回ここまで問題が大きくなったのは高野連と学校の対応に原因があるとして、こう指摘した。
「確かにまだ高校生なのに、一選手が“加害者”としてネットにさらされるのは可哀想だし、よくないです。でも高野連は広陵に対外試合禁止などの措置をきちんととっていないと思います。
それを乗り越えて甲子園に勝ち上がってきたなら全然応援もできると思うんですけど、高野連がとった措置は“後付け”の印象がして。
被害者の家族のインスタを見ましたけど、対応を引き延ばしにされたまま何事もなかったようにされて、いつの間にか大会の抽選も始まって、みたいな流れと理解しました。学校側も対応していると口で言うだけで行動が伴っておらず、結局逃げてるように見えます」
Dさんが指摘したように、広陵は地力を発揮して1回戦を突破したが、一連の問題が解決したとは到底言えない。勝ち上がることで問題の所在を置き去りにできないばかりか、さらにくすぶり続ける可能性もある。熱闘の裏で、暗闘も続く。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班