去る8月8日。天皇陛下がビデオメッセージで「お気持ち」を表明されました。
かねてより伝えられていた「生前退位」について直接の言及はなかったものの、その一言一言は様々なメディアで報じられ、大きな話題に。この一件によって改めて、天皇陛下の存在の大きさを再認識したという人も多いのではないでしょうか。

さて、そんなわが国の象徴・天皇陛下ですが、私たち庶民には知りえないことが多く、謎に包まれた存在であるのも事実。そんな習性を巧妙に突かれて、まんまと大勢の人を騙した事件が13年前に発生しました。

エスパー伊東、石田純一らも出席 偽りの結婚披露宴


2003年4月6日。この日、東京・赤坂のカナダ大使館地下パーティー会場に400人もの人が集まりました。ある人物の結婚披露宴に出席するためです。

参加者の中には、ダイヤモンド☆ユカイ、エスパー伊東、石田純一、デーブ・スペクター夫人など、有名人がずらり。一体誰の門出を祝うのかというと、皇族の夫妻だといいます。家名は有栖川宮。伏見宮、桂宮、閑院宮とならぶ世襲親王家の一つです。

最も、有栖川宮が存在したのは、1913年(大正2年)まで。10代目当主の威仁親王が薨去したため、とっくの昔に断絶しています。
つまり、「有栖川」を騙る新郎新婦は偽者ということになるのですが、披露宴出席者はそんなこと、知る由もありません。
日本史の教科書にも登場し、東京の南麻布には「有栖川宮記念公園」という名を冠する公園まであるこの家名に、嫌疑を掛けた人は皆無でした。おそらく、誰の目も欺けると想定して付けた偽名だったのでしょう。

自称・皇族と自称・元女子アナ 怪しげだった夫婦


ここで、本事件の犯人となった夫妻を紹介しましょう。なお、後の公判で、2人の間に一切の恋愛関係・内縁関係・婚姻関係がなかったと判明しているので、それぞれ「夫役」・「妻役」として記載していきたいと思います。
夫役となったのは、自称「有栖川識仁(さとひと)」として政治団体の代表を務めていた北野康行。妻役を演じたのは自称元女子アナの有栖川晴美こと坂本晴美。
自らの誇らしき経歴・出自を自称する似たもの同士の御両名ですから、きっと、馬が合ったのでしょう。

披露宴会場には、2人のブロマイドを販売するグッズコーナーも


2人は意気投合した後に結託して詐欺行為を行ったわけですが、出席者の一人・エスパー伊東によると、この結婚披露宴、何とも珍妙だったとのこと。
料理は安っぽく、引き出物はバウムクーヘン。会場にはブロマイドなどを販売するグッズコーナーが設置してあったとのこと。さらに夫妻とのツーショット写真には料金1万円が発生するという、皇族とは思えないたくましき商魂を披露。被害総額は、グッズの売り上げと一人当たり数万~10万円にも及ぶ祝儀代合わせて、約1200万円に上ったといいます。


実刑判決が下った後も、北野が坂本にあてた手紙を掲載した週刊新潮に対して慰謝料請求の訴えを起こすなど、金にはとにかく貪欲だった2人。「皇族」という金看板を使って金儲けをするセンスを、何か他のビジネスに活かしていたら、ちょっとした成功くらいは収めていたかも知れません。
(こじへい)