天海祐希が主演している木曜劇場『Chef~三ツ星の給食~』(フジテレビ系)が低視聴率に苦しんでいるようです。初回から視聴率8%という厳しいスタートで、11月3日に放送された第4話は4.9%。
関係者の間では「早くも打ち切りか?」と囁かれており、今後の展開に注目が集まってしまっています。

本作は「三ツ星の給食」のサブタイトルの通り、天海演じる三ツ星レストランの天才女性シェフが、ひょんなことから小学校における給食の料理人になるという物語。さて、天海×小学校で思いだされるのは、2005年に放送された連続ドラマ『女王の教室』。
この今から11年前のドラマは、『Chef』のとはまた違った意味で話題になりました。

初回から批判殺到だった『女王の教室』


『女王の教室』は、まるで絶対君主のような強権のもと、担任の6年生クラスを支配する「いいかげん目覚めなさい」が決め台詞の女教師・阿久津真矢(天海祐希)と、その生徒たちの1年間にわたる戦いを描いたドラマ。
従来の学園モノといえば、『金八先生』や『ごくせん』、『GTO』、『伝説の教師』のように、教師vs問題児という図式で展開されるのが定番。が、『女王の教室』は違います。
問題のある教師vs善良なる生徒(もちろん一部問題児はいましたが)、という構図のもと物語が進んでいくのです。

実際、この阿久津真矢、教師としてはかなり滅茶苦茶。自分に楯突く生徒を雑用係にしたり、成績の優劣で差別したり、挙句の果てには、生徒を授業中にトイレに行かせないで失禁させたり……。初回からこうした過激な描写が度々描かれたので、一部の視聴者、特にPTAからは批判が殺到。「打ち切りにしろ」という、そんな意見すら上がったといいます。

こうした苦情は番組だけではなく、スポンサーにまで飛び火。
その影響から、提供クレジットの表示を自粛する動きが見られ、第5話~第8話に至っては、全スポンサーが提供クレジットを表示しないという異例の事態に。
多額のスポンサー料を支払って得たPRの機会を、企業自ら放棄するくらいですから、よほど激しいバッシングにさらされたのでしょう。

『女王の教室』制作に至った原点とは


日テレはなぜ、これほどの問題作の放送に踏み切ったのでしょうか? それにはこんな理由があります。
なんでも、ドラマ制作にあたり、プロデューサーらスタッフが小学校へ取材に行ったときのこと。あるクラスを見学した際、授業中にも関わらず、生徒たちは勝手に席を立ったり、友達とおしゃべりをしていたといいます。先生も先生でその振る舞いをとがめもせず、見て見ぬフリをしていたというのです。

この教室の風景が、ドラマの構想を練る上で重要な材料になったのだとか。
つまり、『女王の教室』誕生の背景には、現代の学校教育に対する強烈な問題意識があったのです。
さまざまなしがらみによって、事なかれ主義的になっている教師と生徒の関係性。その痛烈な批判として、天海演じる阿久津真矢のキャラクターはつくられたのでしょう。

核心をついたメッセージの数々


その批判精神は、真矢の劇中における一言一言によって表現されます。

■「この国では、100人のうち6人しか幸せになれないの」

■「特権階級の人たちが、あなたたちに何を望んでるか知ってる?今のままずーっと愚かでいてくれればいいの」

■「要するに、自分さえ良ければ良いの、みんな。ま、今は日本中そうだけど」

■「普段は個人の自由だなんて言って権利を主張するくせに、いざとなったら人権侵害だと大人に守ってもらおうとして。
要するに、いつまでたっても子供でいたいだけなのよ」


なんとも核心を突いた強烈なメッセージの数々。こうした言葉を脚本家の遊川和彦氏が臆面もなく連ねられ、真矢役の天海が堂々と発せられたのも、作品に明確な意志があったからに他なりません。
この制作側の熱が視聴者にも伝わったのか、初回視聴率14.4%から最終話で25.3%、瞬間最高視聴率31.2%を記録するという快挙を達成。批判を恐れず当初の企画意図を貫き通した、制作者側の大勝利と言える事例ではないでしょうか。
(こじへい)

※イメージ画像はamazonより女王の教室 DVD-BOX