アンパンマンの謎に理科の先生が答える本
アンパンマンに関する仰天の事実が満載! これをオフィシャルでやってるのがエライ。
以前、Bitで「『アンパンマン』のキャラクター誕生秘話」という記事があったが、さらにアンパンマンに関する素朴な疑問をついたトンでもない名著を発見した。
1998年にフレーベル館から発行された、中学の理科の先生・鈴木一義氏の『アンパンマン大研究』だ。


基本的には教え子240人からの質問に、鈴木先生が答えている形式なのだが、アンパンマンの作者・やなせたかし氏自身も部分的に一言を添えており、この掛け合い、まるでコントのように面白いのだ。

たとえば、「アンパンマンの名前は、誰がつけたのですか?」という問いには、鈴木先生は「『アブブ〜、ボク、アンパンマンでちゅ!』。アンパンマンがかまどから生まれて出てきたとき、最初にこう言いました。名づけたのは、アンパンマン自身です」とキッパリ断言! ノリノリなのだが、これに対し、やなせ氏のコメントは「でもね、ほんとうは作者の僕かもしれないね」とずいぶんおとなげない……。

また、「アンパンマンは、トイレに行くのですか?」には、鈴木先生は「アンパンマンはトイレに行きません。(中略)アンパンマンのあんこは非常にエネルギー効率がいいので、すべて分解吸収されエネルギー源になります。
ですから、排出するような無駄なものはなく、トイレに行く必要もないわけです」と力説! だが、これもやなせ氏は「へえ、そうなんですか。さすが理科の先生、理論的ですね。とにかく、アンパンマンはトイレに行きません」と、ガッカリするほど薄いリアクションである。

さらに、「ばいきんまんが変装したとき、なぜ誰も気づかないのですか?」という鋭いツッコミには、鈴木先生も「ばいきんまんの変装がとてもうまいからでしょう。それとも、みんなが鈍いのでしょうか」と逆に疑問を投じているが、それを受け、やなせ氏は「疑わないこと、これはアンパンマンワールドの一つの約束なのです」と力技でねじ伏せている。
「ジャムおじさんは、アンパンマンの顔を作る材料がなくなったら、どうするのですか?」には、「あんこがなくなったときは、かしわもちのみつごくんのあんこをもらったり、カレー、クリーム、栗あんなどをつめます。
小麦粉がない場合は、パイ生地や素麺など他の材料で代用します。濡れた顔をフライぼうやが揚げて、あんドーナツにしたこともありました」と、ものすごい妄想を楽しそうに語る鈴木先生だが、やなせ氏は「実におもしろいところですが、いつもの素材がやはり一番」と、身も蓋もない返し。あんまりです……。

もちろんやなせ氏が「そのとおりです」と相槌を打つ場面も多々あるが、微妙なすれ違い、読んでいる側としては「もうちょっと歩み寄ってやれよ!」と思わなくもない。

他にも、本書には「アンパンマンの顔は、くさったりカビが生えたりしないのですか?」「ばいきんまんは、お風呂に入りますか?」「カレーパンマンのカレーは、甘口ですか、辛口ですか?」など、気になる疑問がぎっしり。
これを読めば、ますますアンパンマンワールドの虜になるはずだ。

(田幸和歌子)