
10月16日、『徹子の部屋』である。
「丹波哲郎さん、追悼です。爆笑です」
畳み掛けるように、「追悼」と「爆笑」。この言語感覚、並みの芸人さんでは、到底かなうはずもない。スゴイなぁとうっとり聞き入っていると、こんな言葉が続いた。
「これまでもこっちとあっちの世界をよく往き来されてたわけですが、今回のはちょっと、長いかもしれません……」。乙なことを言う。
16日、17日と2日間連続で、これまで丹波哲郎が出た回を振り返り、2日目の冒頭でも、「爆笑です。爆笑というと、失礼ですけど、本当に爆笑なんです」と、強調していた。
で、まず驚いたのは、あの超人・徹子が、丹波哲郎相手には、常に、後手後手にまわるということ。
霊界のことを知るよう勧められ、ビデオを貸すと執拗に迫られ、頑なに拒む徹子。
放送開始と同時に一方的にしゃべられ、
「ちょ、ちょっと待って下さい(焦り)。こういう方です(苦笑)」と、いつになく他人の暴走を制止する場面もあった。
丹波のどこまで本気か、どこまで真実かわからない話に対し、いちいち過剰に反応し、少女のようにはしゃぐ徹子。
「空手6段ってホント? ホントなの?」と無邪気に尋ねたり、丹波が「宮本武蔵の木刀」といって持ち込んだ棒を借りて、「もう、ほんっとにイヤッ! 吐きそうなほど重いのよ、コレ!」と、逆ギレする徹子。
機械オンチで軍隊を落第したという話にも、
「ウソ言ってません?」「オレにとっては多少だよ」「多少ウソ言ってるのね?」「いや、ウソじゃないよ」と、まるでスイートな恋人同士のじゃれあいのようである。
また、丹波が81歳のとき出演した回で、1年半、毎日3時間ずつ歩いてると聞いたときも、「え〜ッ! ホントに?」「なんでオレがいちいちウソ言わなきゃいけないの?(笑)」とひとしきりじゃれあった後、「それにしても、体がまっすぐでスゴイわね。で、昔から態度大きいけど……○○ってのは本当?」と、唐突に話題を変え、次々に思うさま過去の噂の真偽を問いただしていた。
もともと徹子は、マッチョな男性が登場する回には、腕や胸を触らせてもらって、はしゃぐ姿がよく見られている。だが、丹波哲郎は「肉体的マッチョ」要素に加え、断定的な物言いに象徴される「精神的マッチョ」要素、さらに「霊界」という不思議要素まで持っているわけだから、徹子が夢中にならないわけがないのかもしれない。
最後に「奥様には会えたでしょうか。また、こちらにもいらしてください」と、大きな丹波のパネルを見詰め、まるでそこにいるかのように話しかける徹子の姿は、20年間拒み続けてきた「霊界」を受け入れたかのようにみえた。徹子・ミーツ・霊界。
(田幸和歌子)