鼻が詰まると味がわからなくなるのはなぜか
美味しい料理を作るにも、鼻は命です。
カゼをひいて鼻が詰まってから、味が全然わからない。

食欲は普通にあるのに、ごはんも味噌汁も、焼き魚も納豆も、甘いアイスすら、なんだかのっぺりした味に思える。
さらに、みかんなどは苦くすらある。
そんななか、不思議と、唯一、もとの味をとどめているのは、ちょっと苦めのたくあんだった。

同じ鼻詰まり状態でも、得意な味の分野、苦手な味の分野が存在するのだろうか。そもそも鼻が詰まると、味がわからなくなるのはなぜなのか。医師の友人に尋ねると、
「基本的に嗅覚は嗅神経で、味覚の神経とは別。だから、鼻の神経をやられたからといって、味覚の神経がやられていなければ味はわかるはず」
と、あっさり否定された。

あれ? じゃ、なんでカゼをひくと味がわからなくなるの?
「それは、カゼによって、鼻の神経がやられて、それと一緒に、味らい(舌の上面にある味覚を感じる器官)が荒れるからでは?」
つまり、直接鼻詰まりのせいでなく、カゼの症状によって、味らいが荒れるせいで、味がわからなくなるということだ。

それにしても、なぜカゼをひくと苦味ばかり感じるのか。
「舌は場所によって感じるものが違うんですよ。たとえば、甘いものは舌の前のほうで、酸味は真ん中、いちばん後ろ(奥)が苦味なんです」
ちなみに、舌の前方3分の2を支配しているのは「顔面神経」で、後ろ3分の1が「舌咽(ぜついん)神経」なのだとか。
「ひょっとしたら、苦味だけを感じやすいというのは、いちばん奥の舌の神経に比べて、前面の顔面神経のほうがやられやすいのかも?」
いろいろな部分がカゼによってマヒしてなお、感覚が残っているのが、いちばん奥の舌の神経ともいえるのかもしれない。

鼻詰まりとの因果関係は薄いようだが、「苦味」ばかり感じるときは、確実に体の不調のサインのようです。

(田幸和歌子)