線路の上を車が走る? アラスカの不思議なトンネル
(写真上から)<br>アラスカ鉄道の車窓から。順番を待つ車の列。トンネル入口は左端。<br>でかいアラスカ鉄道の、カレの列車。<br>ウィッティアから始まる氷河クルーズ
アラスカ。オーロラ鑑賞や氷河クルージングで近年人気が高まっているが、空の玄関口アンカレッジから南東に約80km、氷河観光で有名なウィッティアに、その不思議なトンネル、“Anton Anderson Memorial Tunnel”はある。


長さ約4kmのトンネルの中にはレールが敷かれているが、実はここ、車も走れるのである。踏切を想像してもらうと分かりやすい。地面にレールが埋め込まれた形になっていて、列車も自動車も走れるのだ。ただし幅がとても狭い。列車が走っている時は車が通れない。車が通っている時は列車が走れない。
すれ違いは不可能なので一方通行。そんなわけで、時間を決めて、片道ずつ順番に走るルール。時間に遅れてしまうと1時間近くは待たなければならないが、まあ何か、のんびりしていていい。

トンネルがこのスタイルになったのは西暦2000年から。以前は列車しか走れなかったが、ウィッティアの街への陸路はこのトンネル以外にはない。車社会のアメリカ、なんと列車に車を積み込んで、トンネルを行き来していたという。
その後、交通量の増加や利便性の向上のため、今のスタイルになったのだそうだ。

さて、アンカレッジからウィッティアへ、アラスカ鉄道で氷河観光に出掛けた筆者たち。友人がうとうとしていると、サービス精神旺盛な車掌さんが近づいてきて「俺の列車で寝るな。景色を見ろ」と肩を叩かれてしまった。列車がトンネルに近づくのはお昼ごろ。脇には信号待ちの車の列。
珍しいトンネルにカメラを向けている人もたくさん。お互いに手を振って列車はトンネルの中へ。数分で通過し、列車はウィッティアに到着する。見どころの多いアラスカ鉄道沿線、トンネルはひとつのパーツに過ぎないけれど、ちょっと面白い。

普段は自転車・歩行者は通れないのだが、6月17日、トンネル内を歩くイベントが開催される(自転車はダメ)。このため2時間に渡ってトンネルは通行止めになる。
日本でも高速道路の開通前にはウォーキングイベントが開かれたりするが、開通後のイベントはちょっと考えられない。さすがアラスカという感じ。観光客でも参加できるようなので、旅する予定のある方は、氷河観光のついでに参加してみてはいかが?

最後になるが、このトンネル、元々は太平洋戦争時に日本軍の攻撃に備えて作られたものだとか。なんだか歴史を感じますね。詳細はウェブサイトをどうぞ。
(R&S)

「Anton Anderson Memorial Tunnel」紹介サイト*英語ページ