「ピカソの絵ってヘン」って言っても良いですか
この本を見ると、絵の楽しみ方がガラリと変わっちゃうかも。
「ピカソの絵って、落書きみたいなのに、なんで有名なの?」
子どもなどにそう聞かれて、困ったこと、ありませんか。

「ピカソは本当はすごく上手に描けて、昔は写真みたいな絵も描いてたんだけど、わざとああいう絵にしたんだよ」
ピカソのことをほんの少し知っている人なら、こんな答えを返したこともあるかもしれない。


実際、「ゲージュツ」を理解することや説明することはすごく難しく、自分なども絵画展などに行くと、絵をアタマで理解しようとするあまり、つい絵を観る時間よりも、絵に添えられた説明を読むことにたっぷり時間を費やしてしまったりする。
絵の見方には答えはないのに、答えを求めるクセがついているのかもしれない。

そんなとき、衝撃だったのが、『小学館あーとぶっく ピカソの絵本あっちむいてホイッ!』(構成・文 結城昌子)。
1993年に刊行されたこの本には、ほかに『ゴッホの本うずまきぐるぐる』『モネの本太陽とおいかけっこ』『ルノワールの絵本ないしょかな?』『シャガールの絵本空にふわり』などなど、たくさんのシリーズがあり、シリーズ累計60万部を売り上げている名作なので、ご存じの人も多いかもしれない。

なかでもこの『ピカソの本』は、タイトルからして「あっちむいてホイッ!」と、不謹慎ではないかと思うほどの遊び心を見せてくれる。

なかをのぞいてみると、ピカソのおなじみの顔に、こんな文字が添えられている。
「ピカソが描いた顔 顔 顔 あっちを見たりこっちを見たり どっちをむいているのかわからない ピカソとあそぼう あっちむいてホイッ!」
また、フツウにはありえない四角ばった顔にも、
「四角い目と四角い口でにらめっこ あっぷっぷ??」
「わからないゲージュツ」を難しく考えず、こんなふうに楽しんで良いなんて……。これは大人から見ると、ちょっとショッキングでもある。

さらに、丸い皿に描かれたヘンな顔には、こんな文句も添えられていた。
「お皿の中も顔 顔 顔(中略)表情はどんどん変わる ピカソはぜんぶ好きだから ぜんぶひとつに描いた かわるかわるピカソの絵もどんどんかわる」
「ピカソの絵の顔ってヘンな顔〜! なんでいくつも顔があるの?」
とゲラゲラ笑う子どもの見方は、実は大人よりもちゃんと作品を見ていたということだろうか、と思わされる。
「ゲージュツなんてわからない、でも、楽しい・好き」それだけで、良いのかも……そんな気もしてくる。

『シャガールの本』にしても、青、バイオリン、空にふわりと浮かぶもの、そんな理屈でなく心で感じるあの独特な世界を、まるで歌のように言葉を添えて、案内してくれるこの『小学館あーとぶっく』。


ちょうど12月11日まで上野の森美術館で、シャガール展もやっていることだし、絵と友だちになるためのきっかけとして、見てみると、絵との違った触れ合い方・見方が生まれるかもしれません。
(田幸和歌子)

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