胃の検診でバリウムを飲んだことがある人からよく聞くのは、「死ぬほどマズイ」「昔より美味しくなった(量が減った)」「実はバリウムより発泡剤のほうが辛い」などの言葉。
さらに、「ベッドに縛り付けられてぐるぐる回されるのが地獄絵図のよう」とか「バリウムが出てこないと、固まってしまい、最悪の場合、開腹手術にもなりうる」なんて恐ろしい噂も耳にする。


これらは本当なのだろうか。噂によって、いたずらに恐怖心を抱く人も多そうだけど……。
実際、自分自身、今年初めてバリウムを経験したところ、驚くほど呆気なく終了となった。

バリウムはもちろん美味しくはないが、重たい飲むヨーグルトみたいな感じで、特別マズイというほどでもない。発泡剤もさほど辛くなかった。
それよりも、大変だったのは、検査台に載ってぐるぐる回らされること! 
「手すりにしっかりつかまってください」と言われ、ぐるぐる回らされているうち、途中で逆さ吊りにされているような感覚に陥り、必死で手すりを握りしめた。
そして思った。
今はまだ自分の腕力で自分の体を支えられているけれど、高齢になったら、ムリな気がする。これってどういう状況なのか。
『ここ10年で、これだけ変わった! 最新医学常識99』(祥伝社黄金文庫)等の著書を持つ、医療法人社団池谷医院の池谷敏郎院長に聞いた。

「バリウムは、確かに昔に比べ、品種改良され、いろいろ工夫されているので、飲みやすくなり、量も少なくなっています。使用する際のポイントは、胃壁にいかに効率よく付着するか。
より少ない量のバリウムで、より美しく写すことができるかが大切で、味や香料を混ぜれば理論上どんな味や香りでも可能だと思います。ただ、好みの問題もありますし、賞味(?)期限だってあるので、レパートリーを拡げても売れ残りが出るリスクがあります。そういった事情があるので、味に対しては一般的にそこまで追求されていないのだと思います」
そもそもバリウムがそこまで嫌な場合には、胃カメラを受けるほうがお勧めだそうだ。

ところで、胃壁に満遍なくバリウムを付着させるためだということは分かっているものの、一時的に逆さ吊りになる気がするのは気のせいなのだろうか。
「逆さ吊りっぽく感じるときはありますが、逆さまにはしていないはずですよ。おそらく何度も回転させられ、自分の体の位置や頭の位置がわからなくなっているだけで、実際にはたいして動いていないはず。
ディズニーランドのアトラクション『スターツアーズ』みたいなものだと考えると良いと思います」

では、「バリウムが出ないと、最悪の場合、開腹手術になる」って噂は本当?
「バリウムは石灰みたいなものなので、下剤をもらって飲みますが、それでも出ない人は確かにいます。最悪の場合、やはり手術もないわけではありませんが、腸閉塞など、よほどのレアケースですよ」
その「よほどのレアケース」ってどういう場合に起こるのだろうか。
「日頃から便秘がちの人は、可能性が高まりますね。対策としては、普段の便秘対策と同じで、水分をとることや、オリーブオイルを大さじ1~2杯飲むこと。オリーブオイルを野菜ジュースに入れて飲むのも良いですね」
また、足を開いて腰とお尻を落とし、お相撲さんの「四股踏み」の要領でお尻を左右に動かすのもお勧めだそうだ。
「それでもバリウムを飲んだ翌日に出なかったら、翌々日には医師に相談しましょう」

いずれにしろ、バリウムや検査の噂を真に受け、過度に恐れることは、プレッシャーにつながり、逆効果。
気を楽にして臨むことが大切なのかもしれない。
(田幸和歌子)