ここ数年、洋楽・邦楽ともにカヴァーアルバムが流行中。徳永英明の『VOCALIST』や平井堅の『Ken's Bar』、MR.BIGのエリック・マーティンによる邦楽女性アーティストカヴァーアルバム『MR.VOCALIST』など、シリーズ化されるヒット作も数多く登場し、すでにブームを超えてひとつのジャンルとして定着しつつある。


そんな中、ヘヴィメタルファンのあいだで話題となっているのが、北欧はフィンランドから登場したスーパーグループ「ノーザン・キングス」。日本でも人気の高いナイトウィッシュのベーシスト兼ヴォーカリストのマルコ・ヒエタラや、ソナタ・アークティカのヴォーカリストであるトニー・カッコなど、実力派ヴォーカリスト4人が集結し、1stアルバム『リボーン』を2007年10月(日本盤は08年5月)に、2ndアルバム『リスローンド』を08年11月(日本盤は09年2月)に発売した。

この「ノーザン・キングス」、4人の歌唱力、そしてバックの演奏力は文句なし。そして楽曲選択とアレンジは絶妙。メタラー向けの存在だけで終わらせておくにはもったいない存在で、特に1980~90年代の洋楽黄金期を体験したアラフォー世代にはたまらない楽曲をカヴァーしている。1stアルバムでは映画『マッド・マックス/サンダードーム』の主題歌「孤独のヒーロー」やカッティング・クルーの「愛に抱かれた夜」、ピーター・ゲイブリエルの「スレッジハンマー」、2ndアルバムではボン・ジョヴィの「ウォンテッド・デッド・オア・アライヴ」やa-haの「テイク・オン・ミー」、そしてフランク・シナトラの「マイ・ウェイ」など、誰もが知っている楽曲から、ややマイナーながらも痒いところに手が届く楽曲まで、原曲を再構築した最高のメタルアレンジで提供してくれている。


例えば2ndアルバムに収録されているカイリー・ミノーグの「ラッキー・ラヴ」は、電話の呼び出し音からまるでホラー映画『エルム街の悪夢』や『スクリーム』のようなイントロから曲が進み、そのまま終わるかと思った終盤に超高速メタルヴァージョンが待っているという展開。そして日本盤ボーナストラックとして収録されているマイケル・ジャクソンの「ゼイ・ドント・ケア・アバウト・アス」は、何かを予言していたか荘厳な葬送曲のようなアレンジでカヴァーされている。

日本盤の発売元であるワーナーミュージック・ジャパンの担当者によると、「1stアルバムはフィンランドでゴールド・ディスクを獲得しています」とのこと。2ndアルバムもフィンランドのナショナルチャートで16位のヒットを記録。 日本ではヘヴィメタルファン向けの存在となっているが、母国フィンランドでは国民的な人気を博しているようだ。そんな「ノーザン・キングス」のことがちょっとでも気になったら、まずはワーナーミュージック・ジャパンのサイトで視聴してみてほしい。

(高岡昌己/studio woofoo)