3月に行われる学校行事・卒業式。
普段は単に「卒業式」って呼ぶけれど、実際の式では急にかしこまった感じの「卒業証書授与式」って名前になってたりする。


だから、正式名称は“卒業証書授与式、略して卒業式”。
……と、みなさん思ってませんか?

文部科学省に話を伺った。
「文部科学省では“卒業式”と呼んでおります。指導要領でも、卒業式と明記しているんですね。各学校の実態は把握しておりませんが、文部科学省としては、小中高すべてで“卒業式”という名称を使っております」

どうやら、国としては卒業式の方が正式名称らしい。“コンビニエンスストア、略してコンビニ”の理論とは違うみたいだ。


ただ歴史を紐解くと、ちょっとややこしくなる。もともとは「卒業証書授与式」って呼ばれていたというのだ。
このことは『立教大学教育学科研究年報第51号』の「卒業式の成立と定着過程」に詳しく書かれていた。この論文によると、卒業式のルーツは明治時代初期から始まった、小学校の“進級試験”にあるという。

当時、小学校は年齢関係なく、試験(筆記と口述)の結果によって進級が決まるシステムだった。新しい時代になり、優れた頭脳を持つ人材を育てることが、日本を成長させると考えられたからだった。
そんな中、子どもをがんばらせるために、試験は保護者や一般の人たちに公開されていた。

ただ、試験を見てても一般の人には優劣がわからない。そこで「誰がよくできる子なのか」が最もわかりやすい方法として、及第点を取って進級した子へ、試験後に証書の授与が行われるようになった。当時は進級が「卒業」と呼ばれてたから、これこそが卒業証書の授与だったってわけだ。

のちに試験科目数が増え、就学率が上がって受験人数が増えると、卒業証書を試験当日に用意することが難しくなり、証書の授与は試験の翌日に行われるようになった。これによって証書授与は「式」になり、この式は「卒業証書授与式」と呼ばれ、全国へ広まっていった。


……という、卒業証書授与式が生まれるまでの、ざっくりとした流れ。つまり「卒業式」よりも前に、「卒業証書授与式」っていう呼び方が広く使われていたらしい。

ちなみに文部科学省へ、卒業証書授与式じゃなく卒業式って呼び方にしてる理由を聞いたところ……
「特に理由があるわけではなく……経緯もちょっとわからないですね」
とのこと。

文部科学省のルールでは卒業式、学校のルーツとしては卒業証書授与式、ということのようだ。
(イチカワ)