「今ならまだ間に合うぞ……鍵は、鍵は……あれ、ない。遅刻する〜!」

慌てて玄関から戻り、前日はいていたズボンのポケットを探り、散らかっている部屋を掘り返してさらに散らかし、前夜からの行動パターンを反芻し、あるはずないとわかっていながら冷蔵庫の中も覗いてみる。


そんな経験をしたことはないだろうか。いや、必ずあるはずだ。少なくとも私にはある!
でもこれさえあれば大丈夫。iPhoneアプリで探し出すことができるキーホルダーが登場した。現在、アメリカの大手クラウド・ファンディングサイト“kickstarter”で注目を集めているその商品の名は“Hone”

クラウド・ファンディングとはネット上で製品やサービスをプレゼンし、支援者から目標額のお金が集まったら製品化されるというシステム。
でもまだkickstarter上にあるということは実物は手にすることはできないということか。ならばということで開発者のGeoffrey Litwakさんに話を聞いてみた。

「一緒に開発をしているパートナーがとにかく鍵をなくす奴で、ほとんど毎日『鍵はどこだ!』って探し廻ってたんですよ」

LitwakさんとLouis GerbargさんはiPhoneやiPad用のアプリを開発する会社の共同創設者でハードウェアを作ったことはなかったという。しかしGerbardさんがあまりにも鍵をなくしてしまうので遂に制作に踏み切った。

サイズは54x32x15mm、厚さは少し厚めだがキーホルダーサイズだ。重さは電池込みで0.6オンスというから約17g、10円玉4つ分程度の軽さだ。
デザインは何にも合わせやすい黒くてシンプルなミニマル系で、最大50mまでの範囲内で探すことができる。普通の日本の住まいの中ならまず大丈夫だろう。

「Honeの最大の特徴の一つは電池寿命です。リチウムボタン電池(CR2032)一つで6カ月持ちます。以前にも似たような製品はあったんですけど、電池寿命が短くて不便だったんです。キーホルダーを毎日USBにつないで充電しなきゃいけないなんてカッタルイですもんね」

しかもバッテリーの残量が少なくなるとiPhoneにメッセージが届くというから便利だ。
しかしこのキーホルダー、目下iPhone4SとiPad3でしか使えない。

「省電力設計のBluetooth4.0の技術を採用しているので仕方がないんです。Androidでも採用されている機種はあるんですが、統一規格がないためまだ製品化できていません。省電力BluetoothがOSに組み込まれたらすぐにでも作りたいのですが」

ちょっと残念だが、iPhoneユーザーからだけでも世界中から900人以上の人が支援をし、500万円以上($67,550)の資金が集まっているのだから世界には鍵をなくす人は余程多いのだろう。日本からの支援者もいるという。

今回はすでに目標資金に到達しており金銭的に製品化には問題はないが、それでも一人でも多くの日本人に知って欲しいとLitwakさんは熱弁する。


「僕らは日本の電化製品のデザインの影響をとても強く受けているんです。特に90年代のソニー製品が大好きで、今回もそのエッセンスをデザインに反映させようってがんばりました。どこまでできてるかはわかりませんけどね」

「日本には今でも世界のどこにもないような製品があるし、僕自身楽天で時々買い物をします。だから日本の人に知ってもらうことは特別なんです」

将来的には自サイトでの販売も予定しているが、当面7月17日まではkickstarterでクレジットカードを使って支援ができる。電池込みで一つ$49で入手することができるが日本へは送料$15が加算される。

最近鍵が見つからなくて遅刻した経験のある人は、とにかく迷わず支援すべし!
(鶴賀太郎)