かつて何処かの歌番組にRIP SLYMEが出演し、デビュー前の仕事について語っていたのを覚えている。私が特に覚えているのは、メンバーであるRYO-Zのエピソード。
彼は以前、薬局に勤めていたらしい。
「棚に薬並べている時に、『なんか、違げえなぁ』と思いました(笑)」(RYO-Z)
それが契機となり、薬局は一日で退職。ミュージシャンに“転職”したそうだ。

いや、私は決して「転職」を勧めているわけではない。でも、誰しもが一度は「辞めたいなあ」とか「違う仕事をしたいなぁ」とよぎった経験があると思うのだ。
しかも、それがハードワークだったら尚更。
やり甲斐を感じられたならば良いが、キツいだけだったら苦痛でしかないんだもの。踏ん張りどころなのか、否か……。

キツい仕事と言われて、個人的にある職業が思い浮かぶ。それは「医者」と「看護師」。
傍目から見て、本当に「ハードそうだな……」と感じられてしまうのですよ。いや、業務がキツいだけじゃない。
人の生死に触れる場面も日常茶飯事。ぶっちゃけ、よくこなしてるよなぁ。……実際のところ、どうなんでしょう。辞めたいんじゃないのか? 投げ出したいんじゃないのか?
その辺の疑問について、現役看護師に直接話を伺ってみました! 興味ある職業だけに、聞きたいことは山ほどあるんだ。

では、第一の質問。もう、そのものズバリで行きます。
「今までに辞めたいと思ったことはあったか?」
これを直撃すると、皆一様に口にするのは「山場は3年目」という事実であった。
「1年目は新人として突っ走って、2年目は慣れてきて。そして3年目になるとようやく一人前とみなされ、新しい立ち位置に立つことで別のストレスに直面するんですよね」(看護師Nさん/キャリア12年目)
これは、どの職業でも一緒だと思う。仕事のキャリアも3年目を迎えると、概要がわかってくる。そのタイミングと同時に新人教育を任されるようになったり、より重要な業務を任されるようになったり、重荷が増えるわけだ。看護師としての大きな壁が、ここで待ち構えていた。
もちろん他の職業でも。

当然、その前段階で離職する人も多いという。
「1~2年目は仕事ができないから“お荷物感”を自覚する。もう、自分で自分がイヤになった」(看護師Iさん/キャリア5年目)
看護師に限らずだが、初めての世界に触れて戸惑い、へこみ、心が折れていく新人は数多い。

では、辞めそうな新人に気がついた場合はどうしてる? 要するに、引き止めてあげたり、気にかけてあげたりするのか。それとも“去る者は追わず”なのか。

「看護師には『プリセプター』(先輩看護師が新人看護師をマンツーマンで指導する制度)っていうのがあって、辞めそうな子がいたら悩みを聞いてあげたり、相談に乗ってあげたりします。悩みに対しては『それは大変だよねぇ』と共有してあげるのが一番大事なので」(看護師Iさん)
「看護師って慢性的に人不足なので人材が少なくなると、結局は自分の仕事が増える。だから一人でも一緒に頑張ってくれる人が欲しいっていうのが本音。あとは、指導者としての自分の評価も下がりますしね…。」(看護師Nさん)
「見ていて全くモチベーションを感じられない子は、無理して引き止めたりはしないです。それで、周りの後輩がやる気をなくしても困るし……」(看護師Yさん)
それぞれ、考え方には温度差がある模様。でもハードな職場に悩むナースはどんな病院にもいる、ということだろう。


そんなシビアでハードな職場にも関わらず、どうしてナースを続けている? もういっそのこと、辞めてしまってもいいじゃない! ……いや、ナースを続けていくには、理由があるみたいです。
「ずっと看護師をやってきて『自分の仕事は、看護師!』という想いと誇りみたいなものがあるから。正直、給料がいいというのもありますけどね(笑)」(看護師Nさん)
「認定看護師になりたかったんですよね。で、資格を取るにはその部署における経験として5年が必要だったんです」(看護師Yさん)
なるほど、自分のキャリアを考えつつ、誇りが持てる仕事だから続けると。ナースの意思の強さを実感した。そしてこんな風にキャリアを重ねていくうちに熟練度は増し、いつしかベテランになっているのかも。また経験を積むほど大事にされ、転職しやすいのも看護師のメリットである。

一方で、こんな意見もある。
「看護師っていつでも人手不足だから、自分が辞めてしまうと患者さんのためにならない。」(看護師Iさん)
今回の取材に際し、多くの看護師さんに話を伺った結果、異口同音で聞かれるのは「患者さんからの感謝の言葉が一番の支えであり、癒される」という言葉だった。
「時間外業務が多くなったり、患者さんの態度にイラッと来て自己嫌悪になったり、憂鬱になる瞬間は多いけど、仕事自体は嫌いじゃない。動けない患者さんをお風呂に入れてあげて『生き返った~!』って言ってもらえたら、本当に報われます」(看護師Iさん)
「ありがとう」、「看護師さんで良かった」という一言が、彼ら彼女らにとっての“やりがい”や“達成感”となるようなのだ。

よく考えると、多くの看護師はスタート時から強い耐性を持っているはず。看護学校でのハードな日々をクリアし、ようやく“白衣の天使”となった者ばかりなのである。その体験を胸に、女の世界ならではの人間関係や、患者と医者の狭間で一生懸命働いているのだ。

そんな事情を知ると、僕らも看護師への見方も変わってくるよね。今度入院したら、感謝の言葉を言いまくらなくちゃいけない。
(寺西ジャジューカ)

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