2月27日は「Pink shirt day(ピンクシャツの日)」。
カナダでは2月の最終水曜日を「いじめ反対の日」に掲げ、国を揚げてピンク色のシャツを着て、いじめ撲滅を訴える活動を行っている。今ではカナダ全土、イギリス、アメリカなど、世界75カ国に広まりをみせる「ピンク・シャツデー」運動だが、もとは2人の少年の「勇気」から始まった。バンクーバー経済新聞のMio Sherさんに話を聞いた。

2007年、カナダのノバ・スコシア州の男子高校生がピンク色のポロシャツを着ていたというだけで、上級生から「ホモ」などとからかわれ、暴力などのいじめを受けた。それを知った2人の男子生徒が、ディスカウントショップでピンク色のシャツを50着ほど購入し、クラスメートにシャツを着るようにメールで依頼。翌朝、学校に行ってみると、そのメッセージは直接連絡をしなかった生徒にも伝えられ、校内はピンクのシャツや小物を身に着けた生徒であふれ、それ以来、その生徒に対するいじめはなくなった。「少年の行動は、いじめの否を直接説き伏せたりすることもなく、自然発生的な力でいじめを止めさせる結果となり、大きな社会現象を起こしました」(Sherさん)。

ラジオなどメディアを通して同運動が広まり、ピンク・シャツデーのフェイスブック上には、個人や職場での参加表明の写真や、有名人らのいじめエピソードなども掲載され、活動は国境を越え年々広がりをみせている。BC州では、いじめ問題は学校だけでなく、職場、インターネット上にも存在することから、職場単位での参加も広く呼びかけ、実際に多くの企業がスポンサーとしてピンクシャツを着て同運動に賛同しているという。「『これが、私のいじめに対するスタンダードです』というように、バンクーバーの人々はピンク・シャツデーの日に自然にピンクを身に着けます。学校でいじめと呼ばれるものは、大人になるとハラスメントという言葉に代わります。大人になったからといって終わるものではありません。皆が考え継続して訴えていかなければならない運動です」(Sherさん)

「いじめ反対」と声を大にして立ち向かうことが困難だとしても、どんな表現であれ自分の考えを示すことはできる。「ピンク・シャツデーはピンク色のシャツや物を身につけることで、『いじめを認めないという意思』を伝えることができるシンプルかつ効果的なアクション」だと、Sherさんは訴える。

日本では、2011年から小説家で詩人の中園直樹さんが、ピンク・シャツデーの普及活動に励んでいる。今年は、北海道、本州(埼玉、東京)、四国(愛媛)、九州(福岡)でピンク・シャツデーイベントが行われる予定だ。

「直接、いじめには関わらなくても見て見ぬ振りをして傍観者でいることは、結果的にいじめを肯定しているということになる」ということを、少年たちが大人に教えてくれた。今、私たち大人はいじめを見過ごすだけでなく、率先して反対するという意思をしっかりとみせ、子どもたちに伝えていく必要があるだろう。2月27日、ピンク色のネクタイや、アクセサリー、シャツなどを身につけて「意思表示」してみませんか?
(山下敦子)