個人的に文学を全く読まないので、皆が当たり前のように知っている歴史的名作の内容もほとんど把握してません。知ってるのは、タイトルくらいかしら?

とは言え、以前、「夏目漱石が“I LOVE YOU”を“月がきれいですね”と訳した」というエピソードをコネタ取材時に知り得た時は、あまりに素敵すぎて感激したことを覚えています。



ゾンビハンターである「私」と凄腕の剣士「先生」


無料コミックサイト「コミック アース・スター」にて連載中『こころ オブ・ザ・デッド ~スーパー漱石大戦~』なる作品が、今大きな話題を呼んでいます。
夏目漱石『こころ』の登場人物たちとゾンビが対決していくマンガがすごい

「夏目漱石没後100年記念漫画」と銘打ったこの漫画は、夏目漱石著『こころ』の登場人物たちの原作そのままの友情、ラブロマンスだけではなく、大量のゾンビをなぎ倒していく“スプラッタ要素”が満載になっているそう。

同作のあらすじは、以下です。
―――――――――
しがないゾンビハンターである「私」が出会った、凄腕の剣士「先生」。
教えを乞う「私」に対し、頑なに距離を置く「先生」。
そんな日々が続く中、突如届いた「先生」からの遺書。
そこに記されていたゾンビアポカリプスの驚くべき真相とは……!?
―――――――――

それにしても、解せない。
何がどうなって“スプラッタ要素”を付け加えちゃったのか? 『こころ オブ・ザ・デッド』で“アメイジング翻訳”を行う架神恭介先生に話を伺いました。
「初めは『柳生オブ・ザ・デッド』というロードムービーゾンビアクションを提案していましたが、担当者と相談したところ、柳生よりも夏目漱石の『こころ』の方が良いのでは? と打診されました。『この人、何を言ってるんだろう』と困惑したので、とりあえず引き受けてみたということです」(架神先生)
架神先生が仕事を引き受ける基準は「何言ってるんだ? と思うかどうか」だそう。まさに、このムチャな設定は基準をクリアしていたわけです。「これは俺がやらないと他にやる人がいないな」とまで思わせたというのだから、完全にこころに響いている。


漱石ファンも「だいたい合ってる」


作品の内容については無料公開されているので皆様のその目でご覧いただきたいのですが、かなりブッ飛んでます。
夏目漱石『こころ』の登場人物たちとゾンビが対決していくマンガがすごい

夏目漱石『こころ』の登場人物たちとゾンビが対決していくマンガがすごい

夏目漱石『こころ』の登場人物たちとゾンビが対決していくマンガがすごい

人間関係の複雑さあり、悶々としたリビドーあり、アクションあり、ゾンビあり。


ただし。何度も言いますが、私は漱石の『こころ』を読んだことがありません。本当に、『こころ』は『こころ オブ・ザ・デッド』のようなストーリーなんですか?
「ご安心ください。極めて忠実にストーリーをなぞっておりますし、これからもそうです」(架神先生)
夏目漱石『こころ』の登場人物たちとゾンビが対決していくマンガがすごい

夏目漱石『こころ』の登場人物たちとゾンビが対決していくマンガがすごい

夏目漱石『こころ』の登場人物たちとゾンビが対決していくマンガがすごい


とは言え、やっぱりメチャメチャです。第1話ではいきなり「私」がチェーンソーを振り回して“ゾンビ狩り”しているし、第3話ではゾンビを撒くために急いで作ったうどんを放り投げたりするし、お嬢さんが茄子を食べてる様子が異常にムラムラさせるし……。
夏目漱石『こころ』の登場人物たちとゾンビが対決していくマンガがすごい

きっとこれらは、漱石の『こころ』を読んでない人でも楽しめるよう意識しているからなのでしょう。

「もちろんです。だから、ゾンビも柳生新陰流も忍者も出てきます。また“スーパー漱石大戦”と銘打っていますので、『こころ』の既読者はもちろん、夏目漱石作品全体のファンに届けられるよう様々な作品から色々なキャラを出していきます」(架神先生)

実は架神先生、この作品に取り掛かる前まで漱石には全く触れて来なかったとのこと。学生時代に授業で読んだ覚えもないし、予備知識はほぼ無し! だからこそ、漱石未体験の読者の気持ちも理解できるのです。それでいて、既読者のこともないがしろにしていない。
「漱石ファンからは『(こころの内容に)だいたい合ってる』という声をいただいています」(架神先生)


「読者のIQを下げていく。
ソンビ状態になって欲しい」


『こころ オブ・ザ・デッド』製作に備え、他作品も含め漱石を読み込んだ架神先生。そして、今では評価している模様。インタビューでは、漱石のセンスを以下のように激賞しています。
「漱石はすごいギャグのセンスありますよね。『坊っちゃん』の序盤とか。初めて四国行った時、着いた漁村が東京の大森くらいの大きさだから『人を馬鹿にしていらあ』というセンスはすごいですよ。
そんな理不尽な罵倒、ちょっと思いつかない」(架神先生)
夏目漱石『こころ』の登場人物たちとゾンビが対決していくマンガがすごい


どうかと思う漱石の独特な感性と架神先生のセンスがコラボし、完成した『こころ オブ・ザ・デッド ~スーパー漱石大戦~』。漱石ファンからの反響も上々だし、夏目漱石と“スプラッタ要素”の相性は良さそうです。今後に期待!
「1話目で読者のIQを20下げます。2話で30、3・4話で50下げます。ここまでで読者にはソンビ状態になって欲しいですね。期待していてください!」(架神先生)
(寺西ジャジューカ)