「缶入りトマトスパゲティ」ってなに?
「缶入りトマトスパゲティ」と「缶入りチーズマカロニ」。いずれにせよ、どちらも、あまり日本人向きではないかも……。
ニュージーランドでホームステイをすると、かなりの確率で登場し、かつ、日本人には不評な食事がある。それが、「缶入りトマトスパゲティ」。
缶に詰められたスパゲティは、5、6センチと短く、ソースをたらふく吸って膨張し、すっかり伸びきっている。しかも、歯にちょこっと当たっただけで切れるほどの柔らかさ。トマトソースはというと、ケチャップに甘味料を入れすぎたような味。正直、おいしくない。

定番の調理法は、スパゲティを鍋でかき混ぜて温めるか、電子レンジでチンし、それを生の食パンの上に乗せるだけ。ソースでふやけたパンの触感と、フニャフニャのスパゲティの触感があいまって、この世のものとは思えない一品になる。
缶には「ニュージーランダーの大好物」と堂々と書かれているが、これはただの謳い文句ではないようだ。実際、ニュージーランドの多くの家庭で「保存食」として買い溜めされ、また、昔ながらの老舗カフェに行くと、朝食メニューとして、この「スパゲティ&パン」があったりする。以前、雑誌に「あなたのニュージーランダー度チェック」という記事が載っていたが、チェック項目には「スパゲティは伸びるまで料理する」「“アル・デンテ”という言葉を聞いたことがない」などと書かれていた。こういう食文化だからこそ、缶入りスパゲティは手軽でおいしいと人気なのだろう。

さて、この「缶入りトマトスパゲティ」には、「缶入りチーズマカロニ」なる姉妹商品がある。これも、スパゲティ同様、不気味なまでにソフトなマカロニが、こってりと甘いチーズに絡みついている。
トマトスパゲティよりはおいしいが、これはあくまでも、チーズマカロニがおいしいというわけではないので、あしからず。
 
ニュージーランドでは食品の多くをオーストラリアから輸入している。「おいしい」と思うものはたいていオーストラリア産で、「あれ?」と思うものはたいていニュージーランド産だったりする。まさかとは思ったが、スパゲティの缶を見てみると、“メイド・イン・ニュージーランド”とはっきり書かれていた。やっぱりというか、期待を裏切らないというか。ある意味、さすが、です。

(畑中美紀)