今年の4月10日、東京の海の玄関口・晴海ふ頭から、飛行船が飛び立つようになったことをご存知だろうか。大きな機体が、都心のビル群にゆっくりと向ってゆく。


株式会社日本飛行船が運航する「ツェッペリンNT」は全長75m、ジャンボ機よりひと回り大きい。乗客を乗せて飛べるものとしては日本で唯一。ヘリウムガスの浮力で浮き上がる原理は風船と同じだけれど、その内部はカラッポではなく、カーボンファイバーの骨組が入っているのだという。

「飛行船は『空気より軽い』乗り物です。ふわりと離陸し、揺れの少ないフライトを楽しめます」(日本飛行船)
早速晴海ふ頭に行ってみると、ファンは多いよう。多くの見物客の中、「ツェッペリンNT」はふわりと浮かび、右回りにゆるりと旋回しながら都心方面へ消えた。
エンジンが付いているので音はする。しかし、飛行機やヘリコプターに比べると圧倒的に静か。静かさゆえ、地上300~600mの低空を飛ぶことができるのだという。東京タワーとスカイツリーの中間くらいの高さから、渡り鳥の目線で風景を楽しめる。「天使になったよう」と語るお客さんもいるそうだ。ああ、気持ちよさそう。


現在運行されているのは、「東京コース」(40分)と「横浜東京コース」(90分)の2つの遊覧コース。10人乗りということもあって、値段の方はやや高め(税込\63,000~\126,000)だが、どんなお客さんが乗っているのだろうか。
「これまではご年配のお客さまが多かったです。海外旅行は体の負担が大きいので、年1回の海外旅行の代わりに飛行船クルーズを、というお客さまもいます。今年は、20代のカップルでの利用も増えていますね」(日本飛行船)
どんなふうに、利用されているのだろうか。
「最近は、いち早くスカイツリーを上空から見てみよう、という方が多いですが、過去には金婚式や、貸切でプロポーズに利用された方もいらっしゃいます」(同)
プロポーズ……相当に自信がないと難しそうだが、うまくいってもいかなくても、決して忘れられないものになることは、まちがいない。


航空機が台頭する前の1920~30年代には、ツェッペリンNTの3倍以上、全長250mに近い飛行船が国際飛行に使われていたという。シャワーやキッチン、個室まで完備されていたそうで、それはそれは優雅な旅だったという。化石燃料をあまり使わない飛行船は、今再び脚光を浴び、ボーイング社なども開発に乗り出しているという。ツェッペリンNTも、60年ぶりに開発・建造された飛行船なのだそうだ。

古くて新しい乗り物、飛行船。乗るのはちょっと難しいという方も、見物に訪れてみてはいかが。
初夏の少しまぶしい太陽の下、ホントに気持ちよさそうです。
(R&S)