近頃、Mr.Childrenの名曲『抱きしめたい』の盗作問題がお茶の間を賑わしている。平浩二の『ぬくもり』がその問題となった曲なのだが、確かに聴いてみるとほとんど詞が同じで言い訳のしようがないレベル。

そのため、『ぬくもり』も商品回収が決まったのだが、この曲の作詞を担当した沢久美は「私は60歳を超えていて、ミスチルもよく知らないし、『抱きしめたい』はまったく知らない」と盗作を否定している。

いくら60歳を過ぎているからといって、音楽関係者にもかかわらずMr.Childrenを知らないということはありえるだろうか。しかし、本人が知らないというのなら仕方がない。
今回は沢氏に教えるという意味でも、『抱きしめたい』のようなMr.Childrenブレイク前のラブソングを紹介していこう。

『君がいた夏』


この曲は1stシングルであり、ファンなら誰しも知っている曲。リリース直後にFM802のヘビーローテーション曲に選ばれるなど、一部の音楽関係者の目に早くも留まった。ここにもMr.Childrenの音楽的な才能が伺える。

曲は夏の甘酸っぱい思いを歌っているのだが、《キリンぐらい首を 長くしてずっと待っていた》や《おもちゃの時計の針を戻しても何も変わらない》など今では考えられないほど可愛らしい歌詞が随所に見られる。
ちなみに、『君がいた夏』というタイトルだが、レコーディングは冬に行ったという。

『君の事以外は何も考えられない』


渦中の『抱きしめたい』のカップリング曲。デビュー前の1990年には出来ていたらしい。とても軽やかな曲なのだが、桜井さんは当時交際していた女性のことだけを考えて書いたと告白し、こう振り返っている。
その子となんかしている瞬間も曲が浮かんだりしてたんですね(笑)。だからこの歌詞の《君が居眠りする間に新しい歌が生まれる》というのも可愛く書いているけど、本当は……」
なお、この桜井さんの発言を聞いたギターの田原さんは「その曲作りへの根性というか執念は恐ろしい」と賞賛している。


『車の中でかくれてキスをしよう』


これもファンならば、知っているという「隠れた名曲」のひとつ。ブレイク前のミスチルの曲は、どこか可愛げがあるポップな曲調が多いのだが、この曲はかなり切なげなメロディーだ。《君は泣いてるの? それとも笑ってるの? 細い肩が震えてる》という歌詞が印象的である。
つい先日、Mr.ChildrenがRADWIMPSの対バンツアーに呼ばれた際には、野田洋次郎と桜井さんのコラボでこの曲が披露された。

『and I close to you』


桜井さんがとても好きだったボビー・ウーマックの影響を受けて作った曲。明るいサウンドとは対照的に歌詞は切なく、《あいつの裏切りも 僕の想いも 揉み消すつもりなの?》、《何故そんなにあいつじゃなきゃダメなの?》と悲しい男の胸中を表している。
この曲が披露されることはほとんどなく、Mr.Childrenとしては1996年の「regress or progress」ツアー以来歌っていないが、2011年のap bank fesでは、スキマスイッチと桜井さんがボーカルを務めるbank bandのコラボという形で歌われた。


『Replay』


「恋人同士なんだけど、倦怠期でつまずきの時期を、別れとかのテーマじゃなくて前向きなもので書きたくて」と桜井さんが語ったように、倦怠期を乗り越えどう前向きに歩むかがテーマとなっている。
この曲はポッキーのCMタイアップに起用されていることもあり、歌い出しがサビから始まる(ミスチルの曲ではかなり珍しい)ことと、そのフレーズが約15秒であることが特徴的だ。

『マーマレード・キッス』


『車の中でかくれてキスをしよう』のような静かなバラード。桜井さんはこの曲を振り返り、「僕自身はかなりやらしい気持ちでS○Xの事とか歌ってるつもりだったんだけど、相変わらず爽やかな感じで捉えられてしまったらしいというのが悲しかったんですよ(笑)」と話している。
そう言われてみると確かに《求めてる Make love》、《重なるHeart 静かにとけてく》というような意味深な歌詞が多い。
映像化はされていないが、[(an imitation) blood orange]のドームツアーにて2013年に演奏された。

『LOVE』


2012年の20周年ライブで久しぶりに披露されたこの曲。ミスチル初期の爽やかさが残るバラードだが、歌詞は結構ドロドロしており、《彼になる気も無くて責任などさらさらさでもね 少し胸が苦しい》、《かなり勘の鋭い僕の彼女を怒らせるのもなにか違ってる》と歌われている。
桜井さん自身も「この娘もいいな、あの娘もいいなって気持ち、そのまま書いた(笑)」と認めていたり、曲中の《野球で鍛えた君の彼氏》は高校時代に女性を巡って三角関係になったギターの田原さんのことではと噂されたりしている。


『my life』


失恋をテーマにした歌で《62円の値打ちしかないの? 僕のラブレター》という始まりのフレーズが印象的だ。62円というのは当時の切手の値段であり、時代を感じさせる。
《ラブレター》、《破れた》、《フラれた》という韻の踏み方からも、この当時から桜井さんの言語センスが凄かったことが分かる。

『メインストリートに行こう』


とても陽気なノリであり、当時プロデューサーだった小林武史は、1995年に発売されたライブドキュメント内で「この曲がライブで盛り上がる切り札だった」と語っているほど。
《車止めて クラクションは 2Times 君を呼び出す合図》という歌詞は当時、携帯がなかった時代背景を感じることができ、ドリカムの『未来予想図ii』に通じるものがある。

このようにブレイク前も名曲揃いのMr.Children。ぜひ皆さんも改めてこれらの名曲を聴いてみてはいかがだろうか。