ミスタードーナツ(ミスド)が凋落の一途をたどっています。
今春、クリスピー・クリーム・ドーナツ(クリスピー)が相次いで閉店したことが話題になりました。
クリスピーの経営状態は良好ではないと考えられますが、これはミスドにとっても対岸の火事ではありません。ミスドの経営状態も危機的状況だからです。
ミスドを運営するダスキンの17年3月期第1四半期の連結決算は、売上高が前年同期比1.0%減、本業の儲けを示す営業利益が61.6%減と減収減益になりました。ミスドを主体としたフードグループが深刻で、売上高が4.3%減、営業利益が4億円の赤字(前年同期は6700万円の赤字)です。
ミスドの不振は一時的なものではありません。国内チェーン全店売上高は下降線をたどっています。直近5年では、12年3月期が1147億円、13年が1111億円、14年が1030億円、15年が1020億円、16年が915億円と一貫して減少しています。フードグループの営業利益は3期連続で赤字です。
店舗数(営業拠点数)も激減しています。12年3月末には1373店ありましたが、16年3月末には1271店にまで減っています。
外食産業の市場規模は、1997年の29兆円をピークに下降線をたどっています。コンビニエンスストアなどの中食産業の台頭で外食産業は脅威にさらされています。ミスドも例外ではありません。
中食産業による脅威に加えて、コンビニのレジ横におけるドーナツの本格的な販売の開始がミスドに追い打ちをかけました。
店舗数を減らしているとはいえ、ミスドはドーナツチェーンでは圧倒的です。しかし、ドーナツを販売しているセブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートのコンビニ主要3社だけでも店舗数は4万店を超えています。規模の面では太刀打ちできません。ミスドの周りには、さしずめ“コンビニ連合による包囲網”が敷かれており、四面楚歌の状態といえます。
●コンビニにない武器を持つミスド
厳しい状況に置かれているミスドですが、一方でミスドにはコンビニドーナツにはない差別化された武器が存在します。
品揃えに関しては、ミスドの代名詞といえる「ポン・デ・リング」や定番の「オールドファッション」、クリーミーな味わいが売りの「エンゼルクリーム」といったドーナツを数多く取り揃えていることが特長となっています。品揃えの豊富さは、コンビニドーナツを圧倒しています。
ミスドは、多くの店舗で店内調理を行っています。これは現状のコンビニではできないことです。ミスドならではといえるでしょう。
ミスドには熱烈なファンが存在します。71年に1号店がオープンし、75年にオールドファッション、03年にポン・デ・リングを販売開始しています。その後、長きにわたって親しまれてきました。また、ミスドの人気キャラクター「ポン・デ・ライオン」がミスドのイメージアップに一役買っています。
ミスドは、コンビニにはない強みを持っていますが、経営環境は厳しさを増していることに変わりありません。コンビニドーナツに対抗できる新機軸を打ち出していく必要があります。8月1日から順次実施するドーナツの食べ放題「ドーナツビュッフェ」のような、コンビニではできないことを行っていく必要があります。話題性のあるキャンペーンを継続していくことが必要不可欠といえるでしょう。
コンビニが仕掛けたドーナツ戦争、コンビニもミスドの客を奪うには至っていませんが、ミスドも経営が逼迫しています。ミスドは生き残ることができるのでしょうか。それとも、クリスピーのように閉店の嵐でジリ貧に陥ってしまうのでしょうか。今、ミスドは試練に立たされているといえそうです。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)