Mr.Children ホールツアーを完走、近い距離でとっておきの音を/ライブレポート・セトリ
撮影/薮田修身

■Mr.Children/【Mr.Children Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ】ライブレポート
2017.04.20(THU)at 東京国際フォーラム ホールA
(※画像8点)

口笛を吹いて、耳を澄ませば、七色の光はそこに表れる

Mr.Childrenのライブをホールで楽しむのはなんて贅沢な体験なのだろうか。いい歌、いい演奏をいい音響、いい環境でじっくり楽しむことができるからだ。
14本のツアーの12本目(当初はファイナルの予定だったのだが、2公演延期でファイナルではなくなった)となる東京国際フォーラムでも素晴らしい歌と演奏の数々を堪能した。

今回のツアーは昨年行われたホールツアー「虹」の延長線上にあるものだろう。メンバーも前回と同じく桜井和寿(Vo,Gt)、田原健一(Gt)、中川敬輔(Ba)、鈴木英哉(Dr)というMr.Childrenの4人に加えて、小春(Accordion)、SUNNY(key,Vo)、山本拓夫(Sax)、ICCHIE(Ttrumpet)という8人編成で、オープニングナンバーも前回と同じ「お伽話」。まだ音源化されていない新曲だが、今の桜井の思いをそのまま綴ったような歌が真っ直ぐ届いてきた。人間の内面の闇に肉迫しつつも最終的には光を描いた歌と解釈することもできそうだ。

2曲目の「いつでも微笑みを」はハンドクラップの中での歌。
大人っぽい粋な演奏が気持ちいい。この8人にはヒカリノアトリエというバンド名が付いていて、Mr.Childrenを母体としながらも、この8人でもひとつのバンドとして成立している。ジャズやフォークなどの要素も取り入れたヒューマンな演奏は時には歌と寄り添い、時には歌を支え、そして時にはボーカル同様に歌っていく。

Mr.Children ホールツアーを完走、近い距離でとっておきの音を/ライブレポート・セトリ
撮影/薮田修身

Mr.Children ホールツアーを完走、近い距離でとっておきの音を/ライブレポート・セトリ
撮影/薮田修身

「25周年は華々しいことをやりたいと思ったので、ドームツアーをやりますが、その前に24周年に何をやるか考えて、今までにやってなかったホールツアーをやろうと思いました。何がいいかって言うと、皆さんが近いんです。さらにいいことは音がいいんです。
ステージにいる8人がすべて生で演奏をお聴かせします」と桜井が語っていた通りの生ならではの人間味あふれるステージが展開された。

ビッグバンドジャズ風にスイングする演奏が楽しかったのは「PIANO MAN」だ。せつない歌と演奏に胸をゆさぶられた「Another Story」、極上の小説を読むのにも似た余韻が残った「クラスメイト」など、“さりげない名曲”がたくさん演奏された。彼らは大ヒット曲を山ほど持っているが、アルバムの中で控え目に存在している楽曲がまたいいのだ。渋い脇役かと思いきや、実は主役を張ることもできる。

桜井の弾き語りコーナーで披露された「水上バス」は曲解説のトークを挟んで、1コーラスずつ分割しての演奏。
中島みゆきの「ファイト」をカバーする場面もあった。桜井の歌の作り手としての魅力も歌い手としての魅力も堪能できるコーナーだ。

日常を切り取った歌でありながら、深遠な広がりを見せたのは「横断歩道を渡る人たち」だ。「柔らかくて温かくて、でもすごく強い願いをこの歌に乗せてお届けします」という桜井の言葉に続いては再びバンドも加わっての「口笛」。シンガロングが起こり、会場内がひとつになっていく。思いの詰まった歌と演奏がグイグイと深く入ってきたのは「掌」だ。
新曲「こころ」も演奏された。桜井はもちろんバンドの全員も歌うようなプレイを披露。

Mr.Children ホールツアーを完走、近い距離でとっておきの音を/ライブレポート・セトリ
撮影/薮田修身

Mr.Children ホールツアーを完走、近い距離でとっておきの音を/ライブレポート・セトリ
撮影/薮田修身

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撮影/薮田修身

「昨年、立て続けに近しい人が亡くなったんですが、自分の心の中で確実に生きていると思えたら、悲しさやさみしさが少し薄らぎまして。人間の心はどこにあるのかと考えた自分なりの結論ですが、大事な人、愛する人のことを思い浮かべて、こんなことを言ったら、どんな顔をするかなって考える思考回路そのものが心なんじゃないかと思いました。新曲を作ってる時もこれを聴いたらどんな顔をしてくれるかなって、皆さんの存在が頭にあります。皆さんの存在が心になっているし、僕らの音楽が同じように皆さんの心になってくれたらと願いながらやってます」というMCに続いて演奏されたのはツアータイトルにもなっている最新シングル「ヒカリノアトリエ」。
「皆さんも含めてヒカリノアトリエになれたら」との言葉もあり、観客も口笛で参加。ステージ下からのミラーボールなど、照明を効果的に使った演出も見事だった。

1曲演奏されるごとに熱烈な歓声が起こり、濃密な一体感に包まれての本編ラストはメンバー4人とSUNNYでの「終わりなき旅」。最後は鈴木のまわりに集まってのフィニッシュ。気迫と意志が詰まった演奏に胸が熱くなった。

Mr.Children ホールツアーを完走、近い距離でとっておきの音を/ライブレポート・セトリ
撮影/薮田修身

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撮影/薮田修身

アンコール1曲目の「one two three」では観客もハンドクラップで参加して開放感と一体感のあふれる空間が出現した。
続いての「花の匂い」は温かな歌とギターと鍵盤が染みてきた。

「今日はライブをやれて楽しいです。いつもこんなふうに楽しく過ごせればいいんだけど、なかなかそうはいかなくて。“なんで私だけがこんな目にあわなくちゃいけないんだ”という日があるかもしれないけれど、そんな時も必ずあなたの一歩一歩の足音を誰かがどこかで聞いています」という桜井の言葉に続いてはキーボード入りの5人編成で「足音 ~Be Strong」。鈴木のカウントに続いて、ギター、ベース、キーボード、歌が加わっていく。桜井が最後のフレーズを繰り返してのエンディング。聴き手にエネルギーを吹き込んでいくような温かさと力強さが宿った演奏だ。

希望の歌がたくさん演奏された夜だった。この日、彼らの音楽は聴き手の胸の中に光をもたらしたのではないだろうか。それも一瞬で消えてしまう光ではない。ヒカリノアトリエはなぜ“アトリエ”なのか。それは絵のようにそこに残り続ける音楽を作り出しているからなのではないだろうか。生きていると、困難に直面することもある。悲しいことや苦しいこととも遭遇するだろう。だからこそ、光の存在のかけがえのなさが際立っていく。暗い世の中だと思う瞬間も多々あるのだが、Mr.Childrenがいるのだから、今の時代もそんなに捨てたもんじゃない。口笛を吹いて、耳を澄ませば、七色の光はそこに表れる。
(取材・文/長谷川誠)

≪セットリスト≫
1. お伽話
2. いつでも微笑みを
3. メインストリートに行こう
4. You make me happy
5. PIANO MAN
6. Another Story
7. クラスメイト
8. (弾き語り)
9. 口笛
10. 掌
11. マシンガンをぶっ放せ
12. fantasy
13. 蒼
14. こころ
15. ヒカリノアトリエ
16. Any
17. 跳べ
18. 擬態
19. 終わりなき旅
<ENCORE>
1. one two three
2. 花の匂い
3. 足音 ~Be Strong

≪リリース情報≫
配信限定 Best Album
『Mr.Children 1992-2002 Thanksgiving 25』
『Mr.Children 2003-2015 Thanksgiving 25』
2017.05.10リリース
¥2,500(税抜)

≪ツアー情報≫
【Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25】
2017年6月10日(土)11日(日)愛知・ナゴヤドーム
2017年6月17日(土)北海道・札幌ドーム
2017年6月29日(木)30日(金)東京・東京ドーム
2017年7月4日(火)5日(水)大阪・京セラドーム大阪
2017年7月15日(土)16日(日)福岡・福岡ヤフオク ! ドーム
2017年8月5日(土)6日(日)神奈川・日産スタジアム
2017年8月12日(土)13日(日)大阪・ヤンマースタジアム 長居
2017年8月26日(土)広島・エディオンスタジアム広島
2017年9月9日(土)熊本・熊本県民総合運動公園陸上競技場(えがお健康スタジアム)

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