「いつも、どこかで」は、アプリを立ち上げた時間のストーリーが読める電子書籍マンガ。
たとえば、いま12時。

「いつも、どこかで」を起動すると、12:00のイラストがオンになっている。それ以外の時間帯のイラストはオフのモノトーンだけど、12時台だけカラーになっている。
12:00をタップすると、マンガがはじまる。お昼寝している園児たち。時計の秒針の音が響く。寝かしつけたと思いきや……。

現実世界の時間がお昼12時であれば、12時の世界を描くマンガが開く。
13時になると、13時のマンガへの入り口が開く。

「アンビエント・コミック」というジャンル名がつけられている。
アンビエントは、英語でambient。周囲の、環境の、という意味だ。
アンビエントミュージックといえば環境音楽。
日常生活の中に溶け込む、音楽自身が主張しない音楽だ。
アンビエント・コミック「いつも、どこかで」も、日常に溶け込むようなマンガだ。物語をひっぱる謎があったり、ぐいぐい展開する物語の起伏があったりするモノではない。
ふとした日常のワンシーンを描く。

効果音や音楽が巧く使われる(電子書籍ならでは!)。
15:00を開くと、何かを揚げている音。
ドーナツだ。ページをめくると、イージーリスニングっぽい音楽。女子たちのデザートタイム。ページをめくるとパチンコの喧噪。それぞれの時間のおやつタイムが描かれる。

公式サイトに推薦文が載っている。

「今ここと、同じ時間が流れてるみたいな、不思議に愛しいマンガじゃよ」しりあがり寿(マンガ家)
「待ち遠しかったり読みのがしたり。時間とすれ違いのもどかしさ。恋にも似ているかもしれません」今日マチ子(マンガ家)
「『なんとな〜く、寂しい』『なんで、私ばっかり…』──そんな時にじんわり効く、よむアロマテラピー」奈良葉子(編集者)
まさにアロマテラピー、そんな感じ。気持ちがふっと軽くなるような短い時間。

一度読んだ時間帯のマンガは、あとからいつでも読める。
いろんな時間帯で読んでいくと、それぞれのピースとして描かれたそれぞれの時間帯の物語が、つながっていく。

実際に連続した時間帯がオープンになっていれば、ページをどんどんめくっていける。
ぼくは、いま朝の5時と8時以外をオープンにしたので、9:00から読み始めれば、4:00までの20時間20本を通して読むことができる。
前の時間帯のラストと次の時間帯のはじまりが、ゆるやかに繋がっている。
読んでいくうちに、だんだん、描かれるなにげない情景が、自分に馴染んでくる。
いろいろな人がいて、いろいろな時間があって、いろいろなことが起こっている。それらが愛しいと気づく。

24本すべてを開くと、ちょっとしたオマケがあるらしい。
iphone版とAndroid版が発売中。
こんど、朝5時に起きよう。(米光一成)