フジテレビの番組「人狼〜嘘つきは誰だ?〜」やTBSの番組「ジンロリアン〜人狼〜」など、テレビ番組にまで進出を果たした「人狼」。元々はヨーロッパの古典的なゲームでしたが、さまざまな国からルールを改良したゲームが出ています。
インターネットの掲示板との相性もよく、インターネット上で盛んに遊ばれることで人気に火が付き、ニコニコ動画などでもプレイ動画が出てくるようになり、とうとうテレビ番組になったり大がかりなイベントが開催されたりアプリがたくさん出ていたりしています。

でも、このゲーム。ちょっとルールが複雑だったり、特殊な用語があったり、定跡と呼ばれるようなものがあったりして初心者にはわかりにくいのも事実です。今回は「いまさら人に聞けない人狼」と題して、詳しく説明していきましょう。

■まずは基本ルールから

「ある村で、狼に食い殺された死体が見つかります。これは人狼の仕業に違いありません! でも、人狼は昼間は人間に化けているため、区別がつきません。
果たして村人の中で誰が人狼で誰が人間なのでしょうか?」

ゲームの基本背景はこのような感じです。だいたいは最初に食い殺された人が司会者となり、その後の進行役となります。進行役はGM(ゲームマスター)とも呼ばれます。残りの人はランダムに配られたカード(これは他の人には決して見せてはいけません!)によって村人か人狼か配役が決まり、その通りにゲームをするのです。

ゲームの目的は、村人側は人狼を全員退治すること。人狼側は村人と同数になることになります。
人狼は村人よりも数が少ない間はおとなしくしていますが、同数になると本性を現し残りの村人を食い殺してしまうのです。

ゲームは昼と夜とを交互に繰り返していきます。昼の間は村人(人狼も含む)が話し合いを行い、処刑する人(縛り首にする→吊りと言う場合もあります)を多数決で1人決めます。夜は人狼がこっそり村人を1人食い殺します。なので、昼の間に人狼を全員退治できれば村人の勝利。退治できずに村人と人狼の数が同数になると人狼側の勝利となるわけです。


話し合いにおいてやってはいけないことはただひとつ。自分が何の役割であるのかを物理的な証拠を見せて公開することだけです。つまり、ランダムに配られたカードに「あなたは人狼です」とか「あなたは村人です」と書いてあるのですが、それを見せてしまうことは許されないというわけですね。そうしないと「私は村人です。その証拠にカードを見せます」と村人全員がやれることになり、人狼は絶対に勝てなくなるからです。物理的な証拠を見せなければ「私は村人です」と言っても証拠が無いので、人狼側も「いやいや私も村人です」と言えるし、それが本当かどうかすぐにはわからないのです。


この「誰が本当のことを言っているのかわからない」というのがゲームのキモになるのですね。村人の中には特殊な能力を持った役職持ち(後述します)がいますが、人狼側は「いや、私も役職持ちなので、処刑すると村のためになりません」となりすますこともできるのです。話し合いを重ねて、誰が嘘をついているのかを推理するゲームなのです。

このルール自体はほとんどの人狼系で変わらないのでまずはここまでをしっかりと把握しましょう。

■人類側には役職がある

村人達はただ人狼に食べられるわけではありません。さまざまな能力を持った、特別な村人がいます。
役職は人数によって変わったりしますが、ほとんどのゲームに出てくる基本的な役職を紹介しましょう。/で分けてあるのはゲームによって別の呼び名をしているものです。

●占い師/予言者
占い師は夜の間に占いを行い、対象の人が人間か人狼なのかを占うことができます。

●霊媒師
霊媒師は夜の間に死者の霊を呼び出し、昼間に処刑された人が人間だったのか人狼だったのかを聞くことができます。

●ボディーガード/狩人
ボディーガードは夜の間に指名した人を人狼の襲撃から守ることができます。

●狂人/憑依者
人間なんだけれども人狼側という特殊な存在です。
人狼側が勝つと勝利になりますが、人間なので、狂人が1人だけ残った(人狼が全滅した)場合には人狼側の負けになります。

これらの役職はプレイ人数に応じて増えていったりします。他にもゲームによってはさまざまな役職が存在します。

■ゲームの流れ

ゲームはだいたいこのように進行します。

・0日目の夜(司会者が殺される)

・1日目の昼
司会者「死体(司会者のこと)が発見されました。この村には人狼がいるようです。話し合いで誰かを処刑してください」
 ↓
話し合いをして誰かを処刑する

・1日目の夜
司会者「恐ろしい夜がやってきました」
 ↓
能力を持った役職(後述します)の能力が発揮される
 ↓
人狼によって誰かが食べられる

・2日目の昼
司会者「昨晩の犠牲者は、●●さんです。では話し合いをしてください。」

話し合いをして誰かを処刑する

・2日目の夜
司会者「恐ろしい夜がやってきました」
 ↓
能力を持った役職(後述します)の能力が発揮される
 ↓
人狼によって誰かが食べられる



以下、村人側か人狼側が勝利条件を満たすまで繰り返します。勝利条件を満たすと司会者が「おめでとうございます。この村にはもう人狼はいません」「残念ながら、村人と人狼の数が同じになってしまいました。もう人狼を止めることはできません……」と言い、どちらかの勝利が確定します。

ゲームで死んでしまった場合、ゲームの場から退場し、その後は一切話すことができません。ですが、例え死んでしまっても勝利条件を満たしていれば勝利です。自分が村人の場合、人狼に殺されてしまったとしても人類側の勝利となれば自分も勝ちになるというわけなのです。

■ゲームで覚えておくといいこと

人狼はたくさん遊ばれている中で、ここはこうした方がいいという定跡のようなものがある程度確立しています。参加者の熟練度や性格によって、必ずしもこれらが正しいとは限らないのですが、ほとんどのゲームにおいて有効である手法です。

●後何回処刑することができるのか?

村人側は、役職の人達を殺されないようにしつつ、人狼を退治しなければなりません。その際に常に把握しなければならないのは、あと何回昼がやってくるか(処刑することができるか)です。これを「吊り手(数)」と言ったりもします。

例えば11人の村(司会者を入れると12人)で遊ぶとしましょう。その場合、人狼は2人、占い師が1人、霊媒師が1人、狂人が1人、ボディーガードが1人、村人が5人になります。

この人数の場合、ゲームの進行と残り人数は以下のようになります。

1日目昼:残り10人(処刑1)
1日目夜:残り9人(処刑1、人狼犠牲者1)
2日目昼:残り8人(処刑2、人狼犠牲者1)
2日目夜:残り7人(処刑2、人狼犠牲者2)
3日目昼:残り6人(処刑3、人狼犠牲者2)
3日目夜:残り5人(処刑3、人狼犠牲者3)
4日目昼:残り4人(処刑4、人狼犠牲者3)

もし万が一、一度も人狼を処刑することができなかった場合。4日目昼で7人死んだ時点で人類2人vs人狼2人となり、ゲームが終了してしまいます。なので、最低でも4回ある昼の話し合い中に人狼を1人でも処刑しなければならないというわけです。「後何回処刑することができるのか」は常に頭の中に入れておかないと、無駄な手を打ってしまうことになるのです。

●カミングアウト(CO)

カミングアウトは、自分が役職持ちであるということを告白することです。昼の話し合いのときに「自分は占い師です。昨晩占った結果、●●さんが人狼だということが判明いたしました」といったように、役職を宣言することになります。

COしてもいいのは占い師、霊媒師です。村にとって人狼を探し出す切り札になりうる、もしくはあと何人の人狼がいるのかを把握できるこれらの役職持ちは貴重な存在です。普段は人狼の襲撃の対象にならないよう、自分の正体を明らかにしない方がいいのですが、人狼を見つけた時にはCOをしてこの人が人狼です! と言った方がいいのですね。また、そうすることにより、ボディーガードの防御の対象にもなったりします。

●対抗CO

占い師がCOをした場合、他に誰も占い師だと言う人がいなければかなりの確率でその人は本物の占い師です。そうなると、あとはボディーガードがその人を守りつつ、疑わしい人を占い師が占っていけば人狼は遠からず発見されてしまいます。

人狼側がこれを防ぐためにはどうしたらいいでしょうか。それは、人狼側でも1人「私が占い師です」と言ってしまえばいいのです。証拠はどこにも無いので、他の村人は誰が本物かわかりません。このように、誰かがCOしたときに「いや、それはおかしい。なぜなら私が本物だからです」と一緒にCOすることを対抗COと言います。

人狼側は、最初の夜などにジェスチャーとかで「自分が占い師のふりをする」という担当を決めておいた方がいいでしょう。

●ローラー

ローラーとは疑わしい候補が何人かいたら、それらの人達を順番に処刑してしまうことです。

例えば占い師COした人が2人いたとしましょう。この場合、かなりの確率で本物の占い師が1人と人狼が1人となります。3人がCOした場合は本物、人狼、狂人ですね。なので、占い師COした人を順番に処刑すると、本物の能力者は失ってしまいますが確実に人狼を処刑することができます。

村人側は何をしても最終的に人狼を全て処刑できれば勝ちです。勝ちのためなら本物の占い師であろうと処刑してしまえばいい、というわけなのですね。役職ローラーは残りの吊り手を考えながら実行する作戦です。

●寡黙吊り

人狼を引いた人が身を守るために一番いいことは何でしょうか。それは、黙ってしまうことです。喋らなければボロが出ません。この人は「怪しい」となるのは、「前に話した内容と矛盾していると怪しい」「他の人の話した内容と矛盾していると怪しい」の2通りが主なので、黙ってしまえば怪しまれようが無いのですね。

なので逆に、黙っている人=寡黙な人を処刑するという戦法があります。これを「寡黙吊り」と言います。多く喋っている人=場をコントロールしようとする人を占い、寡黙な人を吊るというのが基本的なセオリーになります。

寡黙吊りの問題点は、初心者だと何を話していいのかわからないことが多く寡黙になってしまいがちになるので、結果として初心者吊りになってしまうということが挙げられます。


他にも色々な定跡があったりしますが、一番の基本はこのあたりです。これらを頭に入れておくと、より人狼が楽しめるでしょう。また、さまざまなコンテンツを見て人狼に興味を持った人もこういう知識があると、何故あの人はここでこうするのかということがわかり、より楽しめると思います。

人狼を見てみたい! と思われた方は、ちょうど本日4月16日(火)19時からニコニコ生放送将棋の棋士による人狼が開催されますので、見てみるといいでしょう。

人狼はとても面白いゲームです。機会があれば、是非一度遊んでみて下さい。
(杉村 啓)

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