
39話は、こんな話
勝手に単身、炭坑に入ったあさ(波瑠)を親分・次郎作(山崎銀之丞)が叱ったのは、それだけ炭坑が危険な場所だったから。あさは、炭坑への認識を新たにしていく。
はつ(宮崎あおい/さきの大は立)は、五代友厚(ディーン・フジオカ)から、
惣兵衛(柄本佑)が賭場にいると聞かされ、危ない場所へたったひとりで探しに向かう。
啖呵にピストル
「うちはそないなほんまは自分の考えもなしに日和見を決め込むおひとが一番苦手出す」からはじまって、
「誰から生まれてきたと思うてはりますのや」
「なめたらあきまへんで」と、あさの決め台詞が炸裂した39話。
極めつけに、言う事聞かない炭坑夫たちの前でピストルを暴発させてしまう。
死傷者は出なくてよかったとしか言いようがない。そもそも、五代にピストルの扱いはちゃんと習ったのだろうか。
この場合の死の恐怖はほんとうに偶然だが、炭坑では常に死と隣合わせにあることを、39話の最初で明確に定義づけされる。
あさが小屋に入ったとき、たくさんカゴに入っていたメジロは、現代におけるカナリアの役割(危険を事前に察知する)をしているようだ。
それほど危険な場所の作業を女性たちも手伝っていることを知るあさ。さっそく、彼女の驚きを大阪の新次郎(玉木宏)宛に手紙にしたためて送る。
それをしげしげ読む新次郎の表情と、時々の合いの手がいい。「坑夫の男衆」のところで眼が最高潮に見開かれる。そのあと、女性のことを書いていて、ちょっと安心したことだろうと想像すると可笑しい。
傍らで見ているうめ(友近)の反応やツッコミも相変わらずリズミカルだ。
旦那さまと離れて九州に来たことで、あさにとって新次郎の存在がいかに大切か気づくという効能もあったことを強調するこの回、「あさが来た」では、あさと新次郎の夫婦の絆を大事に描いていることがよくわかる。
よく働く縫い物
身体はたくましいが、あさが女だということに何かと文句を言う坑夫と、見た目はふらふらしているが、なにも言わずにあさに任せてくれる旦那さま。どちらが男らしいか、あさが頭を悩ましていると、亀助(三宅弘城)までが、「男らしいってなんなんだっしゃろなあ」とつぶやく。このとき、亀助はあさと一緒になって縫い物をしていて、それも意外と器用そうで、ところがあさは相変わらず上手じゃなさそうという男女逆転も意味深。
そしてまたあさは針を指に刺してしまい、その痛みと共に大切なひとのことを(以前ははつのこと、39では新次郎のこと)思い出す。
五代がはつのところにまで!
大切なひとを思うのは、はつも同じ。
突然現れた五代友厚から、惣平衛の居所を聞いて訊ねて来る。新次郎の次は五代がはつのところまで来て助け船を出そうとするとは。なんて恵まれた美人姉妹。
新次郎は、藍之助に独楽はもってきてくれるが、惣平衛のことは探さないのだろうか。はつたちが夜逃げしたときは探していたし、もともと惣兵衛とは関係も浅くない新次郎のことだから、何か思いがあってのことだろうか。
賭場でちらっと顔を見せた惣平衛らしき人物は髭を生やし、足が薄汚れていた。
(木俣冬)
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