脚本:中島丈博 演出:西本淳一ほか

1話は、こんな話
昭和57年(1982年)、高校生なのに妊娠してしまった眞澄(美山加恋)。
父親は交通事故で死んでしまい、家族にも学校にも秘密にして、子供を生むことにする。
ドロドロの愛憎劇が売りになっていた東海テレビ制作の昼ドラ。
最近はライトな作品も多くて物足りなかったが、久々に愛憎劇が帰ってきた。
それも「新・牡丹と薔薇」って、ドロドロ伝説を生んだ「牡丹と薔薇」(04年)のタイトルを冠し、メインスタッフも同じで、新たなドロドロ伝説を生み出すというから、期待いっぱい。
「牡丹と薔薇」の凄さは、北村ヂン氏の「1分でわかる」をご覧いただくとして、「新・牡丹と薔薇」の第1話。
速い、熱い、濃い
冒頭2分、猛スピードでヒロインの母となる眞澄が背負ったヘビー級の運命を説明してしまう。主人公かと思ったらその子が主人公になるわけで、そりゃ話を早く進めないと。その手腕に舌を巻く以上に、妊娠検査結果を話している医者(「牡丹と薔薇」に出ていた西村和彦)につき従う看護婦が、「牡丹と薔薇」のダブルヒロイン小沢真珠と大河内奈々子。牡丹の花が出て来て、うふふ、みたいなところもサービス、サービスゥ〜。
この回の主人公である眞澄がどんなにがんばって二の腕むきだしで明るい花柄のワンピースを着ていても、ふたりの看護婦の存在感のほうに意識がいってしまうという異様さに腹を抱えてしまった。
いかにもな意地悪な友人、いかにもな祖父母が出てきて、さらに、「牡丹と薔薇」でぼたん(大河内)の義母を演じた川上麻衣子も出て来て、異様な存在感を示す。
眞澄のお母さんも濃い。
回想ででてくる眞澄が大学生と子供をつくってしまう流れの身も蓋もなさ。脚本家の中島がかつて書いた映画「祭りの準備」(75年)をなんだか思い出してしまった。
急速な男女関係のあとに、お腹の赤ちゃんを診ながら「うん、これはすごい」とか「胎動」云々と医者が言うのも、人間の野性的な熱情を肯定しているようで、あはは、と開放的な気分になる。
すでに第1話で、こんなにネタがてんこもり。勢いづいて、1話のラストがすごい。
陣痛に苦しみのたうちまわる眞澄とオーケストラのBGMと雷鳴という惜しげない王道の演出。
その前に、娘が妊娠したと聞いて、血相変えて帰ってきた母の驚きの前に、落雷ガーン! それからお母さんのビックリ顔のアップ! 赤ちゃんの父は「死んだ」と聞いて、また雷ゴロゴロ。念が入りまくっている。
「(娘がいることを)ひた隠しにして、ひたすら女優業に励んでるっていうのに」
と娘の妊娠にヒステリックになるお母さん、「ひた隠し」「ひたすら」と韻を踏む台詞で女優感出すのも、素敵。
わあ、毎日、こんな感じだったら、毎日、お昼はこってり中華のランチフルコースで、朝夜、控えめにしなくちゃ、って感じですよ。どうしましょ。
(木俣冬)