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「ちかえもん」は悲しくてやりきれないコメディか

2016年1月28日 12時00分

ライター情報:近藤正高

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先週は、ザ・フォーク・クルセダーズの「悲しくてやりきれない」(1968年)だった。
何かといえば、NHKの木曜時代劇「ちかえもん」(木曜よる8時~)第2回(1月21日放送)の劇中で、松尾スズキ扮する主人公・近松門左衛門がうたっていた歌である(今回も「うた 近松門左衛門」のテロップがお約束のように登場)。

先々週放送の第1回で近松が歌っていたのは「大阪で生まれた女」だったので、次は「やっぱ好きやねん」か「悲しい色やね」あたりではないかと踏んでいたのだが、いや、すっかりはずしました。まあ、オリジナルの「悲しくてやりきれない」を歌ったフォークルも関西は京都出身のバンドなので、近松が歌っても何の無理は……ありますな。
フランキー堺が居残り左平次を演じた映画『幕末太陽傳』(1957年)。2015年には青木崇高の主演で舞台化(江本純子脚本・演出)もされている。「ちかえもん」で青木が扮する万吉も目下、遊郭に居残り中

それはともかく第2回、本作の狂言回しというべき「孝行糖売り」の万吉(青木崇高)は前回より引き続き、「元禄のキャバクラ」=堂島新地の遊郭・天満屋に居残り、遊んだ金が払えない代わりに雑務をこなしていた。これが意外とてきぱきとこなし、またそのキャラクターゆえか、遊女や店の人たちからも妙に人気を集める。そのなかにあって、つんけんしてまったく愛想のない遊女が一人。それが早見あかり演じるお初なのだが、万吉は彼女を一目見たとたんすっかり惚れこんでしまう。

名作『曾根崎心中』の新解釈か


恋の病にかかった万吉、お初を嫁にしたいと近松に相談に赴く。非モテの中年男に恋愛相談とはどう考えてもお門違いだが、さすがに作家とあって、「一、見栄 二、男 三、金 四、芸 五、精 六、おぼこ 七、ゼリフ 八、力 九、肝 十、評判」のうちどれか一つ備わっていれば女ができるという十カ条を説いて聞かせる。こう、いくつかキーワードをあげるともっともらしく聞こえるのは、いつの世も変わりませんな。ちなみに五の「精」は精力かと思いきや、さにあらず、精を出して働くことらしい。以下、六の「おぼこ」は母性本能をくすぐる子供っぽさ、九は度胸を指す。

しかし万吉にはどうやら十カ条のいずれも当てはまらない。そこをどないかしてくれと問い詰められ、近松は投げやりに「イモリの黒焼きにでも頼れ」と答える。イモリの黒焼きは惚れ薬、飲ませれば最初に見た相手を好きになると教えこまれ、万吉さっそく外へ飛び出す。考えたらいまは冬、イモリも冬眠して見つけるのは至難のはずが、そこは彼のこと、前回のサバと同じくどこからか手に入れてくる。

こうしてできあがった惚れ薬。

ライター情報

近藤正高

ライター。1976年生まれ。エキレビ!では歴史・科学からドラマ・アイドルまで手広く執筆。著書に『タモリと戦後ニッポン』(講談社現代新書)など。愛知県在住。

URL:Culture Vulture

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