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「わたしを離さないで」7話。胸のでかさが本人を識別する記号

2016年3月4日 10時00分

ライター情報:杉江松恋

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「わたしを離さないで」第7話でびっくりしたのは、保科恭子を演じる綾瀬はるかの胸が本人を識別する記号として扱われていたことだ。
「おっぱいでかい!」
で三浦春馬演じる友彦は恭子を連想したわけで、どれだけおっぱいばかり見ていたんだと思ってしまった。まあ、そばにいたら見ちゃうだろうけど。

美和の頑なさの下にあったもの


あだしごとはさておき。
ついに最終章「希望」に入り、物語は現在の時間へ完全に戻ってきた。すでに酒井美和(水川あさみ・演)と土井友彦の「提供」も始まっており、恭子は美和の介護人として働いている。前回のこの原稿で、美和の厭な性格がドラマを回すために不可欠な要素として機能していることについて触れたが、その彼女の真意もついに明かされ、恭子との関係も明らかに進展した。いくつもある未解決事項のうち、1つは確かに前進したようだ。

美和の大規模な提供が決まり、彼女はつぶれたはずの陽光学苑を訪れたいと言い出した。それも美和、恭子、友彦の3人で。介護人として恭子はその実現に乗り出し、離れた施設で暮らす友彦にも連絡を取る。そして3人による小旅行が実現したのである。今夜放送される第8話では、その陽光学苑跡地で衝撃的な出来事が起きることが予告されている。恭子が、自身の幼少期に瓜二つの少女(鈴木梨央・演)に出会うのだ。ドラマオリジナルの展開であり、謎解きがいよいよ始まろうとしている。

友彦の「絵」は何を示すのか


カズオ・イシグロの原作『わたしを離さないで』も3部構成になっている。〈陽光学苑編〉〈コテージ編〉〈希望編〉となるドラマ版とも切れ目はほぼ一緒だ。原作には各部ごとの題名が付されていないので最終編に〈希望〉とつけたのは制作者の思いを反映したものということになる。
ドラマ第2部は、友彦と生きていく覚悟を決めた恭子が美和に希望を打ち砕かれ、何もかもを振り捨ててブラウン・コテージを出ていくことで幕を下ろした。原作のこの箇所は、そこまで明確に人間関係を示すものではない。ルース(ドラマの美和)の心無い一言でキャシー(恭子)とトミー(友彦)、そしておそらくはルース自身もが大切にしていたであろう思いが踏みにじられてしまう。そのことによって起きるはずのことを直視したくないあまりに、キャシーは背を向けて立ち去ってしまうのだ。
そのきっかけは、トミーが絵を描きだしたことだ(ここはドラマと同じ)。ノーフォーク(ドラマののぞみヶ崎)行きの最中でトミーは「提供者」に与えられる「猶予」について触れ、それを手に入れる鍵は「絵」ではないかと言い出した。

ライター情報

杉江松恋

1968年生まれ。小説書評と東方Projectに命を賭けるフリーライター。あちこちに連載しています。

URL:Twitter:@from41tohomania

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