少々、唐突すぎる感じで家を飛び出してしまったカホコ(高畑充希)のパパ・正高(時任三郎)。

色々ありつつも、カホコがお願いした結果、家に帰ってくることとなったパパの行動は予想の範囲内だったのでいいとして、今回はカホコが良くも悪くも変わる原因となっている初恋の相手・麦野初(竹内涼真)について書いていきたいと思う。


『過保護のカホコ』は第5話に自己最高視聴率である12.1%を記録するなど、なかなか好調なようだが、その要因のひとつとして、同時期に放送されているNHKの朝ドラ『ひよっこ』でブレイクした竹内涼真の存在があることは間違いないだろう。

SNSなどでの反応を見ても、普段はツンツンしているものの、いざという時には優しい態度を見せる麦野の姿にキュンキュンしている女性が多いようだ。

しかし、男の立場からするとキュンキュン要素はわりとどーでもいいため、「涼真くんカッコイイ!」補正ナシのレビューとなるので悪しからず。
ここが変だよ麦野くん「過保護のカホコ」オレは竹内涼真の格好良さにごまかされないぞ!5話
イラスト/北村ヂン

君は何のために絵を描いているのだ、麦野くん


前回、カホコから抽象画を全否定された上にビリッビリに破かれてしまった麦野。それで目が覚めたのか(?)、今回は突然方向転換をして、

「どうやらオレはね、人物を描いた方がこのあふれる才能を発揮できるんじゃないかなって」

とか言い出し、カホコの肖像画を描くことに。

アナタ、「ピカソを超える」ために抽象画をメインに描いていたんじゃなかったっけ!?

一見、チャラく見えるものの、実は自分の目標をしっかりと持っている芯の一本通った男……というようなキャラクター設定であるはずなのに、もっとも大事にしているはずの絵画に対する態度がブレブレじゃあ、何を言っても説得力がない。

○○が描きたい、○○を作りたいということよりも、単に有名になりたい、成功したいという思いの方が強い、美大の学生にいかにもよくいそうなタイプに思えてしまうのだ。


実際、麦野が絵を描くモチベーションは、みずからの創作意欲というよりは、自分を捨てた(?)母親に対する愛憎から来ているようだ。

物心ついた頃には父親が亡くなっており、母親の手で育てられた麦野は、「絵が上手だから、大きくなったら画家になったら」と絵の具を買ってもらったことを喜んで、一生懸命に絵を描くようになった。しかし7歳の時に母親が自分を置いて出ていってしまったのだという。

その後は施設に預けられ、養子にもらってくれる人もいなかったため、バイトをしながらなんとか奨学金で大学に進学した。

「いずれピカソを超えてアイツを見返してやる」

と言いつつ、母親に買ってもらった絵の具のチューブを今まで大事に持っていたのは、画家として有名になって母親と再会したい……的な思いもあったのだろう。

前作『はじめまして、愛しています』との関係性は?


親から育児放棄された結果、施設に預けられた……といえば、思い出すのが昨年放送された遊川和彦脚本のドラマ『はじめまして、愛しています』だ。

親から捨てられた子どもと、江口洋介&尾野真知子の夫婦が出会い、特別養子縁組をするというストーリーだったが、江口&尾野夫婦がその子につけた名前がハジメだった。


麦野初(ハジメ)と同じハジメだ。

さらに言うと、『はじめまして、愛しています』でハジメを産んだものの、育児放棄をして逃げてしまった母親(志田未来)が見ていた絵が、ゴヤの「わが子を食うサトゥルヌス」。

一方、麦野に「モデルになって欲しい」と頼まれたカホコの目にとまり「ヌードモデルをやらされるのでは!?」……と勘違いした絵が、同じくゴヤの「裸のマハ」だった。

このふたつのドラマのリンクにどういう意図があるのか、今のところよくわからないが、実の親から育児放棄されたものの、養子としてもらってくれる里親と出会えたハジメに対して、出会えなかった未来が麦野ということなのだろうか?

そして、ふたりとは対照的に親から過保護に育てられてきたカホコではあるが、母・泉(黒木瞳)のサイコなまでの過保護(過干渉)っぷりは、育児放棄はもちろん虐待だけど、行きすぎた過保護もそれはそれで虐待なのでは!? と思わされる。

オレは麦野にごまかされないぞ!


麦野と関わることによって、これまで普通のことと思ってきた「過保護」に対し疑問を持つようになったカホコ。

第5話の最後では、「カホコ、もうママに甘えないようにする」と、過保護からの卒業宣言も飛び出した。


これまでのようにブチ切れて泉に反発するのではなく、ちゃんと向き合った上で、しっかりと自分の気持ちを伝えたすごくいいシーン!

……だったのだが、コレに対する泉の反応は、黙って家から出て行っちゃうというもの。

普通のドラマだったら色々なことが一気に解決しちゃいそうな感動的なシーンの後に、それを丸ごと台無しにする展開を持ってくるというのは、いかにも遊川脚本らしい。

これまで愛情をガンガンに注いできた娘から、もう必要ないと言われたことで心がモッキリ折れてしまったのか? よく分からない男にたらし込まれたせいで、娘が自分のもとから離れていく……という怒りなのか?

泉とその母・初代(三田佳子)との会話の中で「愛するより、信じる方が難しいんだから」という話が出ていたが、自分勝手な愛情を注ぎまくる一方だった泉が、カホコを信じて自立を認めることができるのか? というあたりが今後の重要なポイントとなっていくのだろう。

そして、唐突に「できれば交際を許してほしいと思ってますけど」とか言い出した麦野……ッ! カホコからの告白をあんなにアッサリ断ってたくせに。しかも、「しっかりしててちょいエロな女子」が好みなんじゃなかったっけ? どのタイミングでカホコのことを好きになったのかよく分からなかったよ。

まさか、川に捨てた絵の具のチューブをカホコが川に入って探してくれたからとか……? そんなベタな展開が今時あるかッ!

女性視聴者は、お姫様抱っこなどのキュンキュン展開でごまかせても、オレはごまかされないからな!
(イラストと文/北村ヂン)