「一晩寝ただけではHPが回復しない」 副腎疲労症候群が原因かも?

Twitter上で一時期、「30代→40代のアップデート内容」というテーマの投稿が話題になった。40代になって30代からどんな風にアップデートされるのかを箇条書きで示すものである。しかし、いずれも衰えを感じさせるリアルなアップデート内容が切々につづられるのが特徴だ。



その数ある投稿のうち、「一晩寝ただけではHPが回復しません」というものがあった。40代になると疲れがとれにくくなるのは、多くの40代が感じているかもしれない。

原因を調べてみると、さまざまな原因が考えられるようだが、どうやら「副腎疲労」が原因の一つとしてあるようだ。

そこで副腎疲労に詳しい小西統合医療内科院長の小西康弘先生に詳細を尋ねてみた。

副腎疲労とは何か


「まず『副腎(ふくじん)』とは、両方の腎臓の上に乗っているそら豆の形をした臓器です。精神的、あるいは肉体的にストレスがかかったときに、ストレスから私たちを守ってくれる『抗ストレスホルモン』を分泌します。ホルモンは自律神経とともに私たちの心や身体のバランスを保つためにとても重要な器官です。
副腎疲労とはその名の通り、副腎が疲労してしまい、その働きが低下することです。40歳代になると、それまでよりも過度なストレスがかかるようになり、副腎が酷使される傾向があります。そして、それが長期間続くことで、副腎が悲鳴をあげ、疲労してしまうのです」

小西先生によると、副腎疲労症候群になると、例えば次のような状態になるという。

・朝起きるのがつらい。
・熟睡できず、朝目が覚めても疲れがとれていない。
・甘いものや塩分が濃いもの(しょっぱいもの)が好き。
・エネルギーが不足している感じがする。元気が出ず、だるい。
・性への興味が低下している。性欲がない。
・ストレスにうまく対処できない。小さなことでもイライラし人に八つ当たりしてしまう。
・風邪や呼吸器の感染症にかかりやすい。かかってもなかなか治らない。ぶつけた傷も治りにくい。
・気持ちが落ち込む。うつっぽい感じがする。
・ボーっとすることが多い。集中力が低下した。
・物忘れをすることが多くなった。
・甘いものを食べると元気になるが、その後だるくなる。
・我慢ができなくなり、急にきれてしまう。
・夕食後の午後6時以降になると少しずつ元気になってくる。



副腎疲労症候群になりやすい人の傾向


また小西先生によると、副腎疲労症候群になりやすいタイプがあるという。

「副腎疲労になりやすいのは、ストレスが多く、それを自分で抱えてしまう人です。
例えばビジネスマンは社会的な責任が大きくなるにつれて、ストレスにさらされる機会が増えます。さらには、家庭では子供の教育のために経済的な負担が増える時期でもあります。最近では、男性だけでなく女性の社会的進出により、女性も社会的、経済的ストレスにさらされる頻度が増えていることも見逃すことができません。
ただ、同じストレスがかかってもすべての人が、心や身体のバランスを崩すわけではありません。周りの人に相談するなどしてうまく対処できる人は、副腎に過度の負担がかかることがありません。しかし、うまくストレスの発散ができず一人で抱え込んでしまう場合は副腎疲労に陥るリスクが高いです」

副腎疲労が疑われる場合の対処法


「一晩寝ただけではHPが回復しない」 副腎疲労症候群が原因かも?

では、もし副腎疲労が疑われる場合、どのような対処法があるのだろうか。

「ストレスに対するとらえ方を変え、ストレスを発散する方法を知ることで副腎疲労を防ぐことは可能です。ストレスがかかる人すべてが副腎疲労になるわけではないことを理解することが大切です。また、生活と仕事とのバランス(ライフワークバランス)を見直すことも重要です。
朝起きられない、立ちくらみがする、疲れやすいなどの慢性疲労症状をきたす場合は、病院に行って通常の検査を受けても診断することが困難です。そもそも副腎疲労症候群という名前は、まだまだ一般的ではありません。適切なストレスケアを行っても症状の改善が見られない場合は、慢性疲労症状を正しく診断してくれる医療機関を受診し、早めに対処することが大切です」

40代になって30代のときよりも過度なストレスを感じるようになったというアップデートを感じているのであれば、副腎が疲労しないように注意したい。
(石原亜香利)

取材協力
小西康弘先生 小西統合医療内科院長
京都大学医学部卒。30年を超える豊富な臨床経験から、「副腎疲労症候群」などの病態に対して、検査によるエビデンスに基づいて根本的治療を提案している。
http://www.konishi-clinic.com/