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ライヴレポート

奥田民生

奥田民生ひとりカンタビレ 2010.05.07(FRI) at SHIBUYA-AX

(撮影/TEPPEI)

前代未聞のツアー“ひとりカンタビレ”の感動のテーマ曲、完成!

 こんなライヴは、おそらく世界初。一人で全部の楽器を演奏するレコーディングは、古くはスティーヴィー・ワンダーやプリンス、レニー・クラヴィッツ、もちろんOT(奥田民生)も行なってきた。が、しかし、それを公開でやるとは。しかも全国ツアーに仕立てて、さらにお金を取って(笑)。ま、オツマミ付きだけど。

 雨のAXの場外にはオツマミ・カーが特設され、みんな傘を差して行列している。場内はというと、開場時からすでにOTがPCの前に座って準備中。お客さんはそこに憧れのOTがいるのに、立ち止まることはせず、チラ見するだけなのが面白い。近寄りがたいというよりは、あまりに自然にそこにいるので、自然と通り過ぎてしまう。そんな意味でも前代未聞のライヴなのだ。

 「6時半になりました。天気に恵まれたのでみんな揃いきっていませんが、始めさせて頂きます。どんな曲か分かるのは当分先なので、オツマミを買うも良し、ビールサーバーのお兄さんが練り歩きますので飲むも良し。よっぽどヒステリックな声でない限りしゃべっていても大丈夫。遠慮なく歩き回って下さい。普通のコンサートではないので」。確かに普通ではないことが次の瞬間に起こった。「今日はドラムからやるんですけど、響かない音で録りたいので、ドラムを囲います」とステージ上になんと小さなテントが運び込まれたのだった。会場から「エー、見えない」と悲鳴が上がる。後で聞いたところによると、AXは音の響きが良いことで有名だが、それがアダとなって、今日の曲には全く向かないドラム・サウンドになってしまうことが準備中に発覚。急いでAXのスタッフに相談したところ、臨時楽屋用のテントがあることが判明して、急遽借りることになったという。今回のツアーは異例なことづくめだが、中でもこのステージ・テントは爆笑モノ。OTチームの緊急対応能力がただよわせるゆるいユーモアが、このツアーの大きな魅力の一つなのだ。狙い通りのデッドなサウンドが録れて、OTはニコニコしながらテントの片付けを手伝う。

 この後もベース、ギターを驚異的な速さで録音。特にタンバリンは、このツアー一番の出来。見ものはやはり歌入れだった。さっきまでビールをちびちび飲んでいたOTだが、ここからはバーボン・ロック。「この歌は"雨"という言葉から始まる。わざとじゃないよ。本当に降るとは」。みんなOTの歌をシーンと聴き入る。歌い終わってOTが静まりかえっている客席をキッと見渡すと、みんな我に返ったように拍手。さらに同じ歌を重ねる。自分で歌ったメロディとはいえ、寸分の狂いもなく再現する辺り、やはりOTは天才だ。歌に限らず、ほとんどの楽器をテイクワンで仕上げることにも驚かされるが、中でも歌の技術はピカいち。この精度がないと、3時間で完成させる公開レコは絶対に無理なのだ。その歌をコピペして、あっという間に追っかけコーラスが完成。大拍手が湧く。「これはオレがすごいんじゃないの(笑)」。

 別のコーラスも次々に入れていく。一見、地味な作業だが、OTのこだわりドコロが一目瞭然で、興味のある人にはたまらないシーンが展開される。「サービスカットで、歌だけで聴いてみようか」。これも普通のアーティストではありえない、本気のサービスだ。OTアカペラ合唱団の見事なハーモニーに全員うっとり。

 「出来たんじゃないでしょうか。今さらドラムがイマイチとか言うな」とOTがニッコリ。時計は21時23分を指していた。いよいよタイトルの発表だ。「ひとりカンタビレのテーマ」という文字がスクリーンに浮かぶと、感動のどよめき。それはそうだ、僕等はこのOTでなければなしえない、画期的なツアーのテーマ曲の制作に立ち会ったのだ。リスナーの喜ぶ顔を想像しながら、一人でレコーディングする様子を描いたこの歌は<片付けて 着替えて 君の来るのを待って>と結ばれる。良いモノ見せてもらいましたわぁ!

 追伸:5/10札幌カンタビレの「かたちごっこ」は<ゆきどけのにぎわいの光>で始まる。これは、わざとだな、きっと(笑)。

【奥田民生ひとりカンタビレ】2010.05.23(SUN) at EIGHT HALLのレポートを見る

(取材・文/平山雄一)

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