移動する郵便局、「鉄道郵便」の時代
(写真上から)能登中島駅にある鉄道郵便車。車内には仕分け部屋が。中でしか押せない貴重なスタンプ
現在、郵便物を運搬するのはトラックや飛行機が主役です。でも、全国津々浦々をネットする鉄道が使われていた時期もあったのです。

鉄道郵便が廃止になったのは、昭和61(1986)年。今のJRになる前ですから、国鉄時代のお話です。では、始まったのは、いつでしょう?
実は、明治5(1872)年の鉄道の開業と同時に始まったのだそうです。つまり、114年もの歴史を経ていたんですね。びっくり。

この鉄道郵便車。
ただ郵便物を輸送するだけではなく、移動中に車内で、仕分け作業や消印の押印作業も行われていました。まさに移動する郵便局だったのですね。ここで押される消印には、走行する区間が書かれていたり、列車の方向が書かれていたりするため、今でもその「鉄郵印」については、コレクタや愛好家が多いのだそうです。
窓を開けて大事な郵便物が飛ばされてしまったら大変、ということから、窓は最小限しかなく、真夏にはそれはもうたいへんな思いをして作業をしたのだそうで。想像しただけでも暑そうです。

さて、その鉄道郵便車。
事業そのものが廃止になってしまえばお役御免。特殊な形状をしていることから、別の何かに転用することも難しく、ほとんどが解体されてしまいました。
現在、日本国内で完全な形で残されているのは、東京都国立市の中央郵政研修所の1両と、石川県の能登中島駅にある1両だけだそうです。
この夏、能登中島駅にある郵便車が一般公開されました。中を見せてもらえるだけではなく、実際の郵便局員の方が仕分け作業を実演してくださったり、その作業をやらせてもらえたり(!)
詳しい説明などもしていただき、その過酷な作業内容にクラクラしたり。たくさんの「へ〜」がありました。
そうそう、中でしか押せないスタンプもあったりしますよ。
およそ半年に一度ぐらいのペースで、一般公開をされるそうです。詳しくは、ふるさと鉄道保存協会さんへ。
(谷和原のぞみ/お気楽ステーション)