北朝鮮の金正恩総書記が軍高官の腐敗を公開の場で断罪した異例の「党・政・軍連合会議」をめぐり、その準備に当たる軍内部の大規模な検閲が、会議の約1カ月半前から始まっていた可能性が浮上した。軍の人事や兵站を担当する幹部を含め、複数の軍高官が処刑または処罰されたとの未確認情報も伝えられている。

金正恩氏は7月10日、平壌で党・政府・軍の幹部を集めた連合会議を主宰し、朝鮮人民軍総政治局の組織担当副局長だったパク・フィチョル氏とその側近らの不正行為を公開した。

北朝鮮メディアによると、朴氏は約4年間にわたり組織権と人事権を乱用し、賄賂を受け取って役職を売買したほか、側近を主要ポストに配置。国家資金や物資、住宅などを横領し、自身に対する「特別な幻想」を周囲に振りまいたとされた。

金正恩氏はパク氏らの行為を「故意の貪汚行為、略取犯罪」と非難。会議では関係者に対する事実上の公開裁判が行われたとみられるが、具体的な判決や処罰内容は明らかにされていない。

一方、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は21日、北朝鮮内部の消息筋の話として、労働党組織指導部と規律調査部が5月末から、国防省、総参謀部、総政治局を皮切りに、各軍団や師団の幹部を対象とする検閲を進めていると報じた。

検閲では、党政策の執行状況だけでなく、職権乱用や腐敗、不適切な男女関係なども調べられているという。総参謀部と総政治局の幹部には、過去5年間の行動を振り返る30ページ以上の自己批判書を提出させ、検閲内容について幹部同士で話し合うことも禁止したとされる。

この情報が事実なら、パク氏に対する7月の公開断罪を受けて検閲が始まったのではなく、5月末から進められていた大規模調査の過程で朴氏の事件が公表されたことになる。公開裁判は反腐敗運動の出発点ではなく、軍幹部を震え上がらせるために用意された「見せしめ」だった可能性がある。

さらに消息筋はRFAに対し、「海軍司令部の幹部部長や、ある軍団の後方部軍団長など、一部幹部が銃殺されたり処罰されたりしたとの噂が流れている」と証言した。ただし、消息筋自身も、これらの処罰が今回の検閲と関係するかどうかは明確ではないとしている。

「幹部部長」は軍内の人事を担当し、幹部の任免、昇進、配置、評価などに強い影響力を持つ。朴氏が人事権を利用して役職を売買し、側近を要職に据えたとされることを考えると、調査対象になりやすい部門といえる。

また、軍団の後方部門は食糧、燃料、被服、車両、住宅、建設資材などの兵站を管理する。軍需物資や国家財産の横流しが常態化しやすく、軍内部の腐敗を調べる上で重点的な検査対象となる部署だ。

人事と兵站は、軍幹部が私的な影響力や資金源を築く上で中核となる。今回名前が挙がった役職が偶然ではなく、朴氏を中心とする人事・物資配分のネットワークを追及する過程で処分されたのだとすれば、摘発は個人の汚職事件を越え、軍全体の権力構造に及んでいる可能性がある。

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