レビュー

「誠実に高品質なサービスを提供すれば、ファンができる」。その常識は、もはや通用しない時代に突入したのかもしれない。

商品やサービスの品質が高いのは当たり前。コスパやタイパを追求するほど選択肢は増え、顧客は「どこでもいい、誰でもいい」という無関心へと流れていく。SNSでバズっても一過性で終わる。顧客に丁寧に接しているのに、あっさり他社へ乗り換えられてしまう。そんな悩みを抱えながら奮闘している企業や店舗は少なくないだろう。
本書が強調するのは、ファンを「増やす」ことではなく「深くする」ことの重要性だ。企業の売上と存続を支えるのは、価格や合理性を超越して、ブランドや商品に心底惚れ込む「少数の熱狂的なファン」である。この「沼るファン」を育てるカギは、98%の人が気づかない「2%のこだわり」と、顧客自身も言語化できていない「2%の微差」に気づく力である。
著者の清水群さんは、東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパンで勤務した経験があり、地方遊園地の再建、中小企業支援にも携わってきた。こうした実績をもとに、現場目線で、沼るファンのつくり方を解き明かしてくれる。本書には、多様な業界でアレンジできるような施策の事例も盛り込まれている。
AIやロボットが合理的な作業を担う時代だからこそ、一見非合理なほどのこだわりが人の心をつかむのだろう。
価格や利便性で選ばれる存在から、「これがいい」と指名され続ける存在へ。その一歩は、目の前の顧客に向けた、たった2%のまなざしから始まる。

本書の要点

・技術革新やオンライン化、サブスク化により、体験価値は急速にコモディティー化している。企業が生き残るには、「沼るファン」を生み出す必要がある。
・沼るファンは、1割で9割の売上を支える存在だ。企業の哲学や世界観に惚れ込み、新規客を連れてくる「伝道師」、ブランドを守る「防御壁」、価値を映す「鏡」となる。
・沼の種は、メイン価値ではなくサブ価値に宿る。ゲスト側の「簡単に気づかれないこだわり」と、スタッフ側の「2%の微差への気づき」が、顧客を熱狂させる。



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