【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#102


『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』(1968年11月22日発売)②


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■『ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス』


 2枚組の『ホワイト・アルバム』については、まずは1枚目、LPでいえばA・B面の曲から、順を追って紹介していく。


 さて、これまで紹介してきた曲と、この曲には、制作プロセスに決定的な違いがある。

この曲では、ついに8トラックの録音機器が導入されたのだ。


 これまでは4トラック。あの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の複雑怪奇な録音も、録音する「道=トラック」がたった4本しかないテープに収められていたのである。


 それがいきなり倍になった。結果、多くの音が入っている割には、音の劣化が少なく、クリアなサウンドになった。


 半面、「道」に余裕がある分、「とりあえず入れとくか」という感じの楽器や声も多いラフな録音スタイルとなり、それがアルバム全体の「緩い」印象とつながってくる。


 すでに「5人目のビートルズ=エリック・クラプトン」の回で紹介した曲だ。


 8トラックのうちの1トラックを占有する結果、クリアな音で響きわたる、クラプトンの見事なリードギターが、曲の印象を決定付けている。


 またクラプトンの参加にも感化されたのか、ギシギシと硬い音で響くポールのベースも、凝った動きをしていて、とても印象的なものだ。【オリジナル記事で試聴する


 実はこの曲、ジョージはかなり早い段階で準備をしていた。しかしジョンとポールが自分の曲を優先したため、なかなか録音の順番が回ってこない。それではとクラプトンを呼ぶと、メンバーも乗ってきて、録音が進められたらしい。


 そういう経緯の中、クラプトンとポールが独創的な演奏をビシッと決めた結果、ビートルズの代表曲のひとつとなったのだが、私が思うのは「ジョージが可哀想やろ」ということだ。


 というのは、クラプトンもポールもいない、ジョージがアコースティックギター1本で弾き語る「テイク1」があり(『ザ・ビートルズ・アンソロジー3』=96年に収録)、それが、まさに静かで優しくて(=ジェントリー)なかなかにいいのだ。


 そして「テイク1」を聴き慣れてしまうと、レコード音源の方がガチャガチャとうるさく感じてしまうのである。


 自らの曲の本質から外れる形で、クラプトンとポールにガチャガチャおいしいところを持っていかれたジョージの気分は、いかなるものだったのだろう。心中で静かに泣いた(=ジェントリー・ウィープス)のではないか。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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