【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】


 アルバム『アビイ・ロード』(1969年9月26日発売)④


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■『カム・トゥゲザー』


 傑作『アビイ・ロード』の記念すべき1曲目。ジョンの曲がアルバム冒頭を飾るのは『ヘルプ!』(65年)以来とは意外な話だ。


 リンゴの淡々としたドラムス、ポールの跳ねるベース、そしてジョージによる滑らかなリードギター、それぞれが素晴らしく、バンドとしてのビートルズの成熟を示すアンサンブルだといえる。


 しかし興味深いのは、大人っぽく成熟した分、初期作品のようなイキイキとしたグルーヴがまるで感じられないこと。


「憧れの黒人音楽のようにグルーヴして、聴き手の腰を揺らしてやる」という野心なんてゼロという感じの演奏だ。ただただ粛々とプレーしている感じがする。


 いや、すでにバラバラになっていた4人には、かつてのピチピチしたグルーヴなど叩き出せなくなっていたと考えるべきではないか。


 そんな淡々粛々な曲のタイトルが「カム・トゥゲザー=集まろう」とは、何とも皮肉だ。私はこれを聴くと、「あぁ、いよいよ解散間近なんだなぁ」と、しみじみしてしまうのだが、どうか。【オリジナル記事で試聴する


 ジョンの歌詞は、相変わらず、というか、いよいよ訳が分からない。驚くべきことに、私の持っているLPの歌詞カードには「対訳不可能」と書かれている。


 その下には「最初の部分がジョン、次にポール、そしてジョージ、リンゴという具合に、それぞれの特徴を(多少シニカルな見方で)とらえているものと思われる」と何とも謎な説明が付いている(対訳:吉成伸幸)。本当かしら。


 唯一分かりやすいのはタイトル。

「カム・トゥゲザー」とは「ミスター・サイケデリック」みたいなイメージの心理学者=ティモシー・リアリーがカリフォルニア州知事選への立候補を検討したときのスローガンだったというから驚く。


 つまり、元々は選挙のキャンペーンソングとして作られたのだ。ちなみにそのときの現職は、のちに大統領になるロナルド・レーガンだったとのこと(結局ティモシー・リアリーの立候補計画は頓挫)。


 実は、リリース後に、この曲の一部が、チャック・ベリーの『ユー・キャント・キャッチ・ミー』(56年)の盗作ではないかという騒ぎになる。


 結局、ジョンが同曲をソロアルバム『ロックン・ロール』(75年)でカバーするという、実にユニークな方法で決着したという事実にも驚く。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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