救世主か、それとも…アニメ制作にAI導入の波
日本を代表する産業となっているアニメの制作。
市場規模はここ10年で2倍以上に成長していて、日本で作られているアニメのタイトル数は年間で約300にのぼると言われています。
制作現場では人手不足という課題を抱えている中、ここにもAI導入の波が押し寄せています。
AIは救世主となり得るのか?それとも…アニメ制作の現場を取材しました。
アニメの原画「1話1万枚を超える作品も」
(横浜アニメーションラボ 原画担当 リ イクケンさん)
「第2原画作業は、監督の修正を反映して清書する仕事。この1カットが2枚で2~3時間かかりそう」
アニメの映像の元となる作画の作業。1枚の原画には完成までに様々なアニメーターが関わります。
映像の設計図ともいえる「絵コンテ」をもとに、レイアウト作業をする第1原画、修正や調整を行う作画監督や演出、それを清書する第2原画など、何人もの手が加わり原画が完成します。
さらに、画像をアニメーションとして動かすには、パラパラ漫画のように間をつなぐ絵を作る必要があります。これは「中割り」や「動画」と呼ばれるパートで、これも別のアニメーターによって制作されます。
こうしてできたカットに色や背景がついて、完成した映像の長さは1.5秒分です。
(横浜アニメーションラボ 大上裕真代表)
「連続した静止画が、何枚もつながって、1つの動画になる。少ない作品で4000枚くらい」
「最近のアニメーションでは、1話数で多いと1万枚を超える作品もあります」
「アニメーターが足りない」1作品で100人以上になることも
この膨大な枚数をアニメーターが描き、キャラクターに命を吹き込んでいくアニメ。
一般的に、アニメは企画発案~放送まで数年、作画作業に入ってからも半年~1年以上かかるケースもあり、携わるアニメーターも大所帯となります。
(大上裕真代表)
「(アニメーターの)人数は1作品で100人以上になることも多々ある」
―――Qアニメーターさんの数は足りている?
「現状タイトル数が多いので、各社、作画担当への営業(リクルート)はかなり一生懸命やっている状態。足りないというのは現状ある」
AI導入に「著作権」の壁…完成しても配信できないケースも?
こうした中、作業の一部をAIに置き換えられるものがないか研究しているという大上さん。ただ、現状導入は見合わせているといいます。
その理由はAIが抱える「リスク」です。
(大上裕真代表)
「著作権、何を元に学習して絵が生成されたのか、そこの保証は誰がチェックして、生成されたものがどの著作物にあたるのか。そこが分からないものについては使うことはできない」
著作権問題が指摘…動画生成アプリ「Sora」は提供終了
著作権に関して懸念を抱えるAI。
アメリカのオープンAIの動画生成アプリ「Sora」の提供終了が今年3月に発表されました。人気アニメキャラクターなどの動画を生成できることから、著作権侵害の問題が指摘されていました。
アニメ現場へのAI導入の壁。
権利をクリアしていないものを制作現場に持ち込むことは作品にとって大きなリスクで、最悪の場合、完成しても放送や配信ができない事態となります。
中割り工程を自動化「人の手で1枚30分」「AIは200枚を10~20分」
そんな中、権利上の課題を踏まえてAIツールを開発して、アニメ制作をサポートする会社があります。
(Crest Lab 坂東裕太社長)
「私たちのANICRA(アニクラ)の仕組みは、アニメスタジオから預かったデータのみ、許諾を得たデータのみを活用して、学習を行っています」
昨年末リリースされたAIツール「ANICRA」。権利関係が明らかな学習データを使って制作を補助するツールです。このANICRAを使って何ができるかというと…
(坂東裕太社長)
「原画と原画の間の動きを埋める『中割り』の工程をAIで自動的に作る」
たとえば、用意された5枚の原画をAIツールに読み込ませて、待つこと10分。「中割り」の絵が80枚できました。これにより作業を大幅に効率化できるといいます。
(坂東裕太社長)
「人の手で描くと、平均的には(1枚)30分、難しいものは1時間。AIだと全体で200枚を10~20分程度で作っていく。
一方で、アニメ制作の主役は「人」であることに変わりはないといいます。
(坂東裕太社長)
「映像として出ていくものは、人の手が加わったものというのが大事。アニメスタジオと一緒に作っている」
口パク・目パチを1分で生成「作画で作ると結構大変な作業」
こうしたサポートAIツールを開発している会社は他にも。
(KaKa Creation 担当者)「口パク・目パチを自動で作っていくツール。人が描かれている時は、口パクがあって目がパチパチしている。これを作画で作ると結構大変な作業」
元となるキャラクター画像と、そのキャラクターに喋らせたい音声を登録すると、約1分で、セリフにあわせて口と目に動きがついたアニメーションが作成されます。
さらに…
「CGの動きを特定のキャラクターでアニメ化」従来の工程を約8割カット
(KaKa Creation 担当者)「CGの動きを特定のキャラクターでアニメ化するようなプログラムもあります」
CG側で設定していなくてもキャラクターの服や髪の毛、顔の表情にAIが動きをつけて描きます。従来の工程を約8割カットできているといいます。
また、背景画像の制作も。サンプル背景から好みのテイストの背景にわずか1分で変換。この会社ではこれらのAI技術を活用してアニメ作品を制作しました。
批判の声も「アニメーターに失礼」「未来のコンテンツ産業を根本から破壊」
しかし、権利上の法的な課題もクリアして放送にのぞんだものの、批判の声が相次ぎました。
(30代女性)
「クリエイターが育つ土壌を壊し、未来のコンテンツ産業そのものを根本から破壊する行為」
(20代男性)
「アニメ業界に不利益しかないし、アニメーターの方々に失礼」
また、アニメーターの仕事が奪われないかという懸念もあります。
「完全AI作品ができてしまったら、作画部門はなくなってしまう」
(アニメーター 中野彰子さん)
「デジタル作画にしようと10年くらい前から導入したのですが、なかなか難しくて、紙で描いたほうが速いんです」
アニメーター歴46年の中野彰子さん。これまでにも作画や編集のデジタル化、3D導入など、アニメ制作の技術革新を経験してきました。
(中野彰子さん)
「(これまでの)技術革新の時は、作画的に排除される部分がなかった」
「ただ、もし本当に完全AI作品ができてしまったら、作画部門はなくなってしまう。
ただ一方で…
ベテランアニメーター「私の仕事がなくなったとしても、それはそれだと」
―――AIをどこまで許容できる?
(中野彰子さん)
「全て許容しなければいけないと思っています。それは時代の流れですから、私の仕事がなくなったとしても、それはそれだと思っています」
「(作画の仕事が)完璧になくなるというわけではなくて、人間がもう少し手を加えたり、人間っぽく見せたり、感情が分かるように修正を入れたり、(AIと)共同で作れたら淘汰されなくなるかなと思っている」
「まだみんな(AIに)慣れていない。AI側も慣れていないし、見る側も慣れていない。そのかけ橋になるのは、いま普通のアニメを作っているアニメーターだと思っています」
アニメの可能性を広げるのか、アニメーターを淘汰するのか。AIをどう扱っていくか、アニメ制作現場は答えを迫られています。
(2026年7月7日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特集』より)

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