文章を書くのは難しい。途中で行き詰まってしまうこともある。
そんなとき、プロはどうしているのか。studio-K代表取締役の中野巧さんは「妄想インタビューをしてみるといい。例えば上司ならどう考えるか、など具体的な人物を想定して頭のなかでインタビューをする方法だ」という――。
※本稿は、中野巧『書ける人になる』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■「ぼんやりしながら」書きはじめる
「さあ、集中して書くぞ!」と意気込むほど、手が止まる。スポーツでも、緊張で体が固くなるほど上手くいかないように、文章も力めば力むほど書けなくなります。
なぜか? 集中した瞬間、あなたの中で「ジャッジモード」が発動するからです。
「これはいい内容か?」「ちゃんとした文章になってるか?」「変に思われないか?」。
まだ一行も書いていないのに、頭の中の審査員が手ぐすね引いて待っている。一歩進んでは二歩戻る沼に引きずり込まれて、しんどくなる原因は、ここにあります。
だから、最初はぼんやりしてください。
ぼんやりとは、判断を手放すことです。
良いも悪いもない。正解も不正解もない。頭に浮かんだことを、そのまま出す。「今日疲れた」「夕焼けきれい」「会議があった」。バラバラでいい。つながりなんていらない。大事なのは、審査員を黙らせること。
■「上手く書こう」をやめる
ぼんやりした状態で言葉を出していると、不思議なことが起こります。バラバラだったキーワードに、「あ、会議で疲れてたけど夕焼け見て癒されたな」と、つながりが見えてくる。審査員がいないからこそ、自由な発想が顔を出すんです。
これが面白い。集中しているときには絶対に出てこなかった言葉が、ぼんやりの中からポンと飛び出してくる。
「あ、自分はこれが書きたかったんだ」と気づく瞬間がある。
集中という強い光で一点だけを凝視するのではなく、ぼんやりとした明かりの中で全体を俯瞰する。書き始めるとき、まず最初にやることは「上手く書こう」をやめること。その遊び心が、結果として芯を食った文章を連れてきてくれます。
■「1分、1行」だけ書く
「今週は忙しいから、来週あたり、ゆっくり時間が取れたら書こうかな」
そう思ったまま、ハッと気づけば、もう何カ月も経っている……なんて、よくある話です。私も数え切れないほど経験しています。
仕事が一段落したら? 家族の予定が終わったら? そんな絶好のタイミングがやってくるのは、もはや奇跡です。
そこで、発想をちょっとだけ切り替えてみませんか?
「1分あれば、1行書ける」。そう思ってみてください。
電車を待っている1分。会議が始まる前の1分。お湯が沸くまでの1分。
その1分で、思いついたことを一言だけメモしておく。「最近気になること」「さっきの上司の一言」「嬉しかったこと」。それだけでいい。1行でいいんです。
■メモを見返すのが面白い
面白いのは、メモを後で見返したときです。「ああ、あのときこんなこと考えてたんだ」と、ちょっと笑えることもあります。自分の頭の中って、意外と面白い。「何これ?」って思うメモもあるし、「あ、これいいかも」って思うメモもある。メモが3つ、4つと溜まっていくと、バラバラだった言葉たちが、ふとつながる瞬間があります。そこから文章が生まれます。
メモを眺めていると、あの日の記憶や感情がふわっと蘇ってきて、「ちょっと書いてみようかな」って気持ちになります。その気持ちを大切にしてあげてください。

まとまった時間なんて待たなくていい。ほんの1分だけ、1行だけ。
その積み重ねが、あなたを書ける人に変えていきます。
■「人の頭」を借りて考える
ある日、高速道路で、赤いポルシェに割り込まれました。「あぶねっ‼」と、心に不満が大増殖。せっかくの家族旅行を壊さないように、ポジティブ思考をしようとしても、イライラは募るばかり。爆発寸前になったその瞬間、幼稚園児だった息子が言いました。
「うんち、したいのかなぁ」
大爆笑。不満のダークサイドに落ちかけていた車内は、一転して爆笑空間に変わりました。
息子は無意識に「妄想インタビュー」をしていたんです。ポルシェの運転手に「なぜ割り込んだの?」と問いかけ、その人が答えたのが「うんちがしたい」だった。結果、まったく違う物語が生まれて、現実がゴロッと変わりました。

■行き詰まったら「妄想インタビュー」
文章を書くときにも「妄想インタビュー」が有効です。一人で考えていると、自分の視点だけで行き詰まる。そんなとき「このテーマ、○○さんならどう考えるかな?」と、その人を目の前に登場させてインタビューしてみる。
上司なら? 読者なら? あの専門家なら?
その人から、自分では思いつかなかった視点が返ってきます。「あ、そういう見方があるのか!」と新しい発見や、自分が面白がれるポイントが一つでもあれば、インタビューは終了。きっとあなたは、もう書きたくなっています。
自分だけで考えることも大切ですが、ときには遠慮なく助けてもらえばいい。誰かの視点を借りれば、自分では見えていなかったことが見えてきます。一人で悩まず、あの人の頭を借りて、文章が書きたくなるスイッチを入れてみましょう。

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中野 巧(なかの・こう)

株式会社studio-K 代表取締役社長

エンパシーライティング開発者。『エンパシーデザイン・ラボ』主宰。大学の建築学部と積水ハウスでの設計業務で培われた「建築」知識と「文章」との共通点を見いだす。
「共感力」を磨くことが文章力、マーケティング力、コミュニケーション力、企画力などの仕事力を高めると考え、独自の文章メソッドを「エンパシーライティング(R)」を開発。企業研修や教育機関などで活用されている。近著『稼ぐ人の「超速」文章術』(Discover 21)。

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(株式会社studio-K 代表取締役社長 中野 巧)
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