営業成績のいい人と悪い人は、何が違うのか。経営コンサルタントの河田真誠さんは「差がつくのは何を伝えるかではなく、相手にどのように質問するかだ。
成績のいい営業は、最初の質問が違う」という――。(第2回)
※本稿は、河田真誠『質問の魔力「よい質問」がすべてを解決する』(アスコム)の一部を再編集したものです。
■言語化力や共感力よりも、質問力
コミュニケーション力が必要ということに、異論を唱える人はほとんどいないと思います。
コミュニケーション力の重要性が叫ばれる理由は多様性の時代だからです。仕事の現場では同じチームメンバーでも多様な価値観を尊重する必要があります。顧客も多様な価値観をもっています。他者とすり合わせしながら進めていくためにも、コミュニケーション力が必要です。
コミュニケーション力の要素として「言語化力」「共感力」などのキーワードも注目されています。これらのキーワードももちろん大切なのですが、僕がより大切だと思うのはコミュニケーションにおける「質問力」です。
「言語化力の前に、質問力がある」僕はそう思います。理由は言語化力と質問力には以下のような違いがあるからです。
言語化力

自分の考えの解像度を上げる行為。
結果、解像度が上がることで相手に伝わりやすくなる。
質問力

曖昧なものの解像度を上げる行為そのものが質問力。質問力がないと、言語化力はつかない。

言語化力のベースにあるのは、「自分の言いたいことを伝える」という視点です。一方で質問力のベースにあるのは「相手の考えを明確にして、自分と相手の考えを調整していく」という視点です。
■「自分に質問してくれる人」は好感度が高い
トップダウン型など一方通行のコミュニケーションが通用していた時代であれば言語化力があることがより大切でした。でも今は双方向コミュニケーションの時代です。言いたいことをただ伝えるという時代は終わりました。双方向のコミュニケーションをとりながら、お互いの合意を形成していく。多様な考えがある中で「合意形成」をしていくスキルが求められています。だからこそ、質問力ファーストなのです。
言語化力「自分の考えを整理して伝える力」
質問力「相手の考えを引き出し、共に整理する力」

質問力があれば、聞く力も高まります。
聞くことで、相手にとっては「自分への興味がある」ということにつながります。それがコミュニケーションの円滑化になっていきます。想像してみてください。話がうまい人は、確かに魅力的に見えます。でも、話がうまいばかりで、自分の話ばかりする人はどんな印象でしょうか? おもしろいけれど、コミュニケーションがとれている感じはしないですよね。
それよりも、相手に質問を投げかけてくれる人のほうが、好感度が高くなるんじゃないでしょうか。優秀なセールスパーソンにも、優秀なコンサルタントにも、質問上手な人が多いと言われますが、相手の視点に立てば、それは納得感のあることだと思います。
では、営業成績トップの人はどんな質問をしているのでしょうか。一緒に考えていきましょう。
■「何かお困りごとはありますか」は×
× 何かお困りごとはありますか?

○ どんなことに時間や労力を取られていますか?

○ それが解決できたら(短縮できたら、少なくできたら)いいと思いませんか?

これまで数多くの営業職の人の相談にのってきました。相談内容はほぼ「どうしたら売れるのか?」についてです。
多くの営業職の人と話してわかったことがあります。
それは、売れない営業と売れる営業を分ける質問があるということです。
売れない営業の人がよく使っている質問、それが「何かお困りごとはありますか?」でした。一見するとお客さんのことを考えた適切な言葉のように思えます。でも、「何かお困りごとはありませんか」には大きな弱点があります。それは、「ありません」と答えられてしまう可能性があることです。
営業の人から「何かお困りごとはありませんか?」と聞かれたら、たいていの相手は「この人は自分に何かを売り込もうとしているな」と警戒します。なので「ありません」と答えられ、会話がそこで終了してしまう聞き方はNGなのです。
また、相手が困りごとだと認識していないこともあります。そんなものだと思っているなど、困りごと認識をしていない場合も、この質問では回答が得られません。
■「どんなことに時間や労力を取られていますか」が○
もし明確な困りごとがあったとしても、すでに対処してしまっていることもあります。
例えば、体のどこかに強い痛みを感じればすぐに病院に行くでしょう。そこまでひどくない痛みであれば市販の薬を買うかもしれません。
つまり「どこか痛いところはないですか?」という質問をした場合、あればすでに対処しているし、なければ「ありません」と回答されてしまいます。
では、成績のよい営業はお客さんに対してどんな質問をしているのでしょうか。それがこの質問です。
「どんなことに時間や労力を取られていますか?」
そして、その回答を得たら、続けてこう質問します。
「それが解決できたら(短縮できたら、少なくできたら)いいと思いませんか?」
この質問のよいところは、イエスノーでの回答ではなく、何かしらの回答が得られるところです。また、相手が困りごとだと認識していないことでも「あ、これは困りごとだったんだ」と認識できる点も魅力です。
さきほどの痛みを聞く場合であれば、「どんなことに時間や労力を取られていますか?」という質問に対して、「買い物に行くのがすごく億劫なんです。買い物に時間がかかっています」という回答があれば、その裏には病院に行くほどではないかもしれないひざの痛みがあるかもしれません。
■“相手が気づいていない課題”を言語化する仕事
この質問をすることで、本人も気づいていない「悩み」を発見できるのです。「困りごと」を質問するのではなく、「日常の負担」を質問する。すると、本人も意識していなかったようなことが出てくるかもしれません。
「実は、これに結構時間がかかっていて……」

「毎回、これをするのがすごく手間なんです」
「無意識の不満」が言語化されていきます。


そして、もう一歩進めた質問をします。
「それが解決できたら、どうですか?」
この質問で、「変わった後の未来」をイメージしてもらう。人は問題を認識し、それが改善された状態をイメージできたときに、「欲しい」が生まれます。
僕もこの質問を実は多用しています。営業の仕事は、言い換えれば「気づいていない課題」を言語化する仕事でもあります。うまくいっている営業は、商品を説明するのがうまいのではなく、相手がまだ気づいていない課題を言語化するのがうまいのです。「何に困っていますか?」では顕在化された問題しか拾えません。
引き出したいのは、例えば「日常の中にある違和感」だったり、「無意識の負担」だったり、「習慣化している非効率なこと」だったりします。それを引き出すのが、質問の力です。
■成果を出す営業は“視点を絞る”
ここでも重要なのは、「視点を狭めること」です。
「何かお困りごとはありますか?」という質問は広すぎて抽象的すぎる質問です。
一方で、「どんなことに時間を取られていますか?」はテーマが限定されている絞られた質問です。
さらに、「それがなくなったらどうですか?」という質問で、未来に視点を絞りこみます。
成果を出している営業はこのように「質問の設計」がうまいのです。

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河田 真誠(かわだ・しんせい)

経営コンサルタント

1976年生まれ。ビジネスにまつわるあらゆる問題を解決し、理想の未来に導いていく質問の専門家。一方的に知識や技術を教えるのではなく、質問をすることで自らの内側にある答えを引き出していくスタイルを貫く。コンサルタントや研修講師として、多種多様な業界・業種の業績アップ、業務改善をサポートをする。主な著書に『a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4776212773/presidentjp-22" target="_blank"質問の魔力』『君を一生ささえる「自信」をつくる本』(共にアスコム)、『売らずに売れる技術革新的な会社の質問力』(日経BP)、『人生、このままでいいの?』(CE メディアハウス)などがある。

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(経営コンサルタント 河田 真誠)
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