“シーズン移行元年”の2026/27シーズンの明治安田J1リーグ開幕節が行われ、J1はFC町田ゼルビアが首位に立った。FC東京戦は相手に退場者が出て数的優位の状況で戦えたことも大きかったが、5−1の大勝という結果はチームに大きな弾みがつく白星に他ならないだろう。


「冷静に考えたら(相手は)10人でしたけど、いいイメージを持って終えられたのが、今回の試合だったと思います」と話したのは、3バック左の中山雄太だ。「町田は過去数年間、開幕戦で勝っていなかったので『絶対に勝とう』と入りました。そこでいきなり失点してしまい、出鼻をくじかれる形になった。今までだったらそのまま負けていたかもしれません。でも、そこから勝ち切れた。優勝するためには(7日に横浜F・マリノスに逆転勝ちした)鹿島のような底力を見せることが大事。そこが成長したところなのかなと感じますし、『今年の町田はちょっと違う』と思ってもらえたのかなという気がします」。

 こう力を込めた中山は、積極果敢な攻撃参加を繰り返し、ミッチェル・デュークの先制点、明本考浩の2点目、そしてテテ・イェンギの3点目をアシスト。「今日は雄太がいてくれたから勝てた」と最終ラインで共闘する岡村大八も絶賛するほどの異彩を放った。今季は最高のスタートダッシュを切れたと言っていいだろう。

 町田の背番号19が高いモチベーションを持って新シーズンに挑んでいる背景には、直近のFIFAワールドカップの日本代表メンバーに手が届かなかった悔しさがある。森保一監督率いる東京五輪世代にとって、2026年大会は“8年間の集大成”と位置づけられた大舞台だった。
中山自身もちろんそこを目指し続けてきたが、2024年のAFCアジアカップ以降は日本代表からも遠ざかる形になり、焦燥感や失望感にさいなまれたこともあっただろう。

 2022年のカタール大会はアジア最終予選で長友佑都と熾烈なポジション争いを繰り広げ、本大会メンバー入りしたにも関わらず、本番直前に右足アキレス腱を断裂。辞退を強いられただけに、ワールドカップにかける思いは誰よりも強かったはずだ。それが叶わなかったことで、本人も改めて自分自身を冷静に客観視し、何が必要なのかを熟考したに違いない。それを今季のJリーグで体現しようとしているのだ。

「今年は数字にこだわりつつ、攻撃参加だったり、得点の一つ前のパスというのは意識したいところ。チームが優勝するためにも攻撃力は必要なので、僕自身もそういうシーンは増やしていきたいですね。ボランチに入る方が攻守両面に一番関われるとは思うんですけど、現状チームでは後ろでやることが多い。そういう中でも、こうやって結果を出せることをしっかり証明していくことが大事なんです。個人的にもワールドカップが終わって、次の代表に入っていきたい。左利きのセンターバックというのは一つの武器ですし、大岩さん(次期日本代表監督)になったら4バックかもしれないですけど、僕としてはサイドバックありきの攻撃参加は目指していきたいと思っています」

 普段、自分の野心を表立って口にしない傾向の強い中山が「代表に入りたい」と公言したのだから、その思いは切実なのだろう。同じ目標を持つ同い年の相馬勇紀、今季から町田の一員になった明本考浩とともに最高の左サイドのコンビネーションを形成しつつ、中山はマルチな能力を前面に押し出していく覚悟だ。


 中山のように3バックの左、左ウイングバック、ボランチ、そして4バックのセンターバック、サイドバックを柔軟にこなしてくれるレフティは確かに貴重である。今大会4戦連続フル出場した伊藤洋輝、ケガで大舞台に立てなかった町田浩樹とやや重なる部分もあるが、豊富な経験値や攻撃センスという部分では中山は特筆すべき部分がある。

 日常的に戦っている場がJリーグという点を森保監督、大岩監督がどう評価するかは分からないが、日本代表復帰の道が決して断たれたわけではない。30歳の大台を迎えるこのシーズンを大事にして、偉大な先輩・谷口彰悟のように30代で一気に高いレベルまで上り詰めていければ、まさに理想的だ。

「FC東京戦のような(ゴール前に入っていく)シーンが1試合を通してミニマム数回出るというのが、僕の中では最低ラインかなと思っています。ゴールに直結する、あるいはゴールの前のシーンに関わる回数を増やせればチームにとってもプラスになる。そう意識してやっていきます」

 目の色を変えて3度目のワールドカップへの挑戦に踏み出した中山。2030年大会の時にはパリ五輪世代、ロサンゼルス五輪世代も台頭しているだろうが、ベテランの力も必要だ。33歳になる彼がその一翼を担えるように、ここからの1日1日を大切にしてもらいたい。

取材・文=元川悦子


【ハイライト動画】町田攻撃陣が爆発!FC東京vsFC町田ゼルビア

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