「生意気だ」と意見されたことも
――率直に伺いますが、メディア露出が多いと叩かれることも多いですか。小沢樹里:そうした側面はあります。当団体の松永拓也などは、SNS上で誹謗中傷をされたことが何度かニュースにも取り上げられていますよね。松永の場合はかなり顕著だとは思いますが、多かれ少なかれ、被害者遺族が心ない言葉に傷ついてきた歴史はあるのではないでしょうか。
――悲しいことです。
小沢樹里:私の話でいえば、犯罪被害者として活動をし始めたころ、わりと異端の存在だったこともあり、お叱りを受けることが多かった記憶があります。
――といいますと?
小沢樹里:犯罪被害者の先達には、「行政や捜査機関と馴れ合うのはご法度」という空気を纏う人たちもいました。それには理由があります。そもそも、行政や捜査機関の対応が万全とは言えないから、傷ついた犯罪被害者たちが自分たちで立ち上がらなければならなかった歴史があります。多くの犯罪被害者の方々が声をあげたからこそ、一部においては法改正を成し遂げることができたのです。こうした諸先輩がたの活動には心から感謝し、また敬意を持っています。
一方で、私が犯罪被害者になってしまった時点では、犯罪被害者等基本法(2004年)がすでに成立しており、もちろんそれだけですべてを網羅できているわけではないものの、犯罪被害者が置かれた状況を社会が少しずつ理解してくれるフェーズに入っていました。
そうしたなかで、私が必ずしも行政や捜査機関と対立的な態度を取らないことを批判する声が耳に届くこともありました。たとえば、私が遺族として記者会見をした際には、「生意気だ」という声もありました。
「相手に感謝をする」ことを忘れない
小沢樹里:非常に悲しい思いをしました。同じ立場なのにわかり合えないと、余計に辛さが大きくなりますね。そうした悩みは、多くの犯罪被害者が抱えているところだと思います。一方で、私が活動をしていくうえで大切にしたのは、行政であっても捜査機関であっても、「相手に感謝をする」ということです。捜査をして、進捗を教えていただくことにまず感謝をする。それが彼らの仕事だとしても、リスペクトを傾けることは大切だと思います。どのようにして人間同士として向き合ってもらえるかを考えていました。
「事実無根の投稿」が送検されるまで
――先ほどのお話は、犯罪被害者としてのスタンスの違いと受け止められる部分もありますが、一方で、完全な誹謗中傷に該当するものも経験されたとか。小沢樹里:2023年11月、X(旧Twitter)のスペース上で、交通事故のプロフェッショナルとしてメディアにも多く出ていた人物(A氏)と、交通事故遺族の男性(B氏)が、私を名指しで誹謗中傷をしました。ほかにも、複数の犯罪被害者の方を挙げています。なかには当団体の松永拓也を「あのボケね」などと発言したものもありました。
私に関して言うと、A氏が「樹里ってバカ女が」と話題を始め、B氏が「とんでもない悪党ですよ」などと合いの手を入れています。さらにA氏は、まったく別の事件の被害者遺族の名前を出して「あのー多分セックスしてんじゃないかと私は思いますけどね」と、まったく事実に反することを不特定多数の聴衆が想定される場所で話していました。B氏は「もう小沢樹里、メディアに注目されてる交通事故遺族片っ端から食いまくってるんですね」などと同調しています。
――当該スペースの記録を取られている。
小沢樹里:もちろん、音源も保存しておりますし、書き起こしもおこなっております。私やほかのご遺族に対する誹謗中傷の事実に対して、2024年7月4日、被疑者2名が検察庁へ送致(送検)されました。私に対しての虚偽発言については名誉毀損罪が適用されました。
仲間からの裏切りに虚しみを覚えるも…
――これら一連の事件について、小沢さんがもっとも肩を落とされたのはどのような部分でしょうか。小沢樹里:特にB氏については、ともに活動をしていた時期もあります。当時、その方のほうが講演会をたくさんやられていて。「今度、◯◯で講演会をやるんだ」とお誘いいただいたこともありました。私は常に夫と一緒に活動をしているので、「いつも夫婦一緒なんだね」と言われたこともあります。
活動をしていくなかでともに同じ方向を向いてやってきた仲間だと思っていましたが、まったく根拠のない品性を疑われるような発言をしていたことに、「これまでの信頼は何だったのだろう」と虚しくなります。A氏については、社会的地位のある人の発言がどれほど影響力があるのか、考えるべきではなかったかと思いますね。
――必ずしも同じ傷を抱えていればわかり合えるわけでないところに、やりきれなさがありますね。今後の小沢さんの活動に悪い影響がないとよいですが。
小沢樹里:そうだと思います。社会を少しでも変えられたらと思って活動してきましたし、誰しもそうだったのだろうと思いますが、どこかでボタンをかけ違ってしまうことがあるのかもしれません。
とはいえ、大局において犯罪被害者同士は気持ちを共有しやすく、厳しい精神状態のなかでお互いに前を向いて進んでいく力になりやすいことは揺るぎません。2023年のことは、精神的にどん底まで落ちましたが、噂に踊らされることなく状況を冷静に判断してくれた方が大勢いることに感謝をしています。私はこれからも、犯罪被害者になってしまった人が事件以外の余計なことで苦しまない社会を作る一助を担えたらと考えています。
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窮地でこそ、その人の真価が問われる。極限の精神状態でなお、小沢さんが周囲への感謝を持ち続けられるのは、彼女の高潔さもあるが、志を同じくする仲間に恵まれたことも大きいだろう。失意のなかでなお、彼女はあるべき未来を描き続ける。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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