尾上右近(34)が歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」(26日千秋楽)の「怪談 牡丹燈籠(ぼたんどうろう)」でお峰役を好演している。次代のスター候補が眉なしの女房役に初挑戦。
成長著しい右近が、新境地に挑んでいる。伴蔵役の巳之助との初夫婦役で「僕と巳之助さんも小学校時代に出会って中学時代も高校時代も一緒。2人旅をしたこともある。今作でも前半は満たされていないけど、2人でいるのが楽しい。僕らの10代はそういう感じだった」と関係性を重ね、イメージを膨らませている。
これまで坂東玉三郎(76)、中村福助(65)、中村七之助(43)ら名女形が演じてきた役だ。怪談の中に描かれる人間の欲深さが見どころで「この役を『右近にやらせてみよう』と思ってくれたことが、うれしい。間違いなく、巳之助さんが推薦してくれたんですけどね。『けんけん(右近)と牡丹燈籠をやりたいって会社(松竹)に言っておいた』と言ってましたから」。意気に感じて日々、舞台に立っている。
さまざまな役柄で求められ、役者冥利(みょうり)に尽きる。「『尾上右近はこういう路線』ってイメージが定まらないのが、僕の存在価値。『こんなこともできるの?』って思われたい。立役、女形、舞踊、時代物、世話物、清元まで。厳選した商品を取りそろえたセレクトショップのような役者が理想です」。伝統芸能の担い手として「セレクトショップ」は軽い印象を受けるが、「軽いと見せかけて、重厚な芸を隠し持っているんです」と胸を張った。
俳優人生のターニングポイントは昨年4月。「生きる意味」というほど強い愛着を持つ「春興鏡獅子」を歌舞伎座で初めて勤めた。「異常執着から、永遠のテーマに存在意義が変化した。以前は醜いほど貪欲だったけど、今は歌舞伎の面白さを背負う立場としてお客様に『見て良かった』と思ってもらいたいという意識になった」
第10回の節目でファイナルとなる自主公演「研の會」(大阪・国立文楽劇場で9月5、6日、東京・明治座で10月2、3日)でも「春興鏡獅子」を披露する。「ずっと『鏡獅子をやりたい』と言い続けて、去年の4月は『歌舞伎座でやってもいいよ』という感じでやらせてもらった。いずれ『やってください』と言ってもらえるようになりたい。
巳之助をはじめ、平成1桁生まれの同世代に刺激を受けている。「とてつもなく絆を感じています。誰かが大役を勤めたら自分のことのように、うれしい。世代の厚みも大事ですが、個の力も大事。個々で勝負できるようになれば、一緒になった時に大きな力になる」。食事を共にする機会も多く、「僕は、まとめ役というより、かきまぜ役です」。あふれんばかりのエネルギーで世代の起爆剤になっている。
〇…右近はNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」(日曜・後8時)の足利義昭役も好評だ。その経験を生かした新作歌舞伎の企画を温めていた。「豊臣が主人公の作品を今年やりたいと、松竹に提案したんです。それは、決まらなかったけど、いつか新作をやりたい気持ちはめちゃくちゃあります」。

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