愛知・名古屋アジア大会は、19日で開幕まであと1か月を迎えた。2028年ロサンゼルス五輪で新たに追加された競技の一つ、スカッシュも実施される。

日本のエース、世界ランク6位の渡辺聡美(27)=Greetings=が、このほどスポーツ報知のインタビューに応じ、第一人者として1994年広島大会以来、32年ぶりに日本開催となるアジア大会優勝での、ロス五輪切符獲得を誓った。

 日本のエースが、初のアジア女王に挑む。スカッシュ女子で日本歴代最高位の世界ランク6位につける渡辺は、前回大会で日本勢初の銅メダルを獲得。母国開催の9月は、優勝での五輪枠獲得をかける。

 「今は楽しみ8割、多少の重圧が2割くらいです。アジアはレベルが高く、国内で国際レベルの試合をすること自体がすごく久しぶり。その舞台が五輪予選ということで、更に特別感が上乗せされ、楽しみな気持ちがあります」

 8歳で競技と出会い、12歳の頃にスカッシュ大国、マレーシアへ留学。17年の全日本選手権を史上最年少18歳で制してから、5連覇を達成した。イギリスの大学に通いながら国際舞台で実績を積み、現在は日本女子のトップとして世界最高峰のプロツアーを転戦している。

 「スカッシュは、年間11大会で獲得したポイントの平均点がランキングに反映されます。9月から翌年6月までのシーズンで、おおよそ15大会を目指してツアーを回ります。今年はロンドンからスタートしますが、1シーズンで約10か国。

大会の賞金やスポンサーさんの協力もいただきながら活動しています」

 23年10月、スカッシュは五輪競技に追加された。競技を始めた当初は「目指せるものではなかった」という夏の祭典だ。

 「子どもの頃、スカッシュは五輪競技ではありませんでした。試合のDVDを買ってトップ選手のプレーを見て、将来の夢は何ですか?と聞かれれば、ただ漠然と『世界一になりたいです』と言っていたと思います。オリンピックで金メダルを目指すということは全く想像していませんでした」

 追加競技として採用が決まった当初は、まだ実感は湧かず。心が動いたのは、24年パリ五輪だった。

 「自分が今見ている選手たちが人生をかけて臨んでいるこの大きな大会に対して、目指せる権利を与えられたんだと思いました。4年に1回、これほど多くの人に応援される大会もありません。純粋にうれしかったですし、パリ五輪を見ている時に、そういった実感が湧きました」

 日本の競技人口は約10万人。国内ではいまだマイナースポーツだが、競技普及への思いも強い。

 「スカッシュは、コートのどの角度からも試合を楽しめ、迫力を味わえます。スカッシュが唯一無二と言える点は、選手が肩を並べてプレーするところ。

様々な駆け引きや息づかいが、リアルに伝わってきます」

 1か月後に迫るアジア大会。優勝すれば、日本は五輪出場枠を獲得。日本スカッシュ協会は、出場枠を得た選手に内定を出す方針としている。

 「五輪に出るからには、金メダルを目指したいです。そこにいかに近づけるかが、この2年で大事になります。アジア大会は前回、第1シードに入りましたがプレッシャーに対応できませんでした。今大会、個人で目指すのは、もちろん金メダル。団体戦でも、チーム一丸となりメダルを目指して頑張りたいです」

 日本の第一人者は、覚悟を胸に自国開催の大舞台に挑む。(大谷 翔太)

 【取材後記】 息することを忘れるほど、スピード感あふれる技術戦が繰り広げられる。渡辺によると、スカッシュは「コート上のチェス」と言われるという。選手は横に並び、打つ度入れ替わる。前、横、後の壁を使い、いかに相手がワンバウンドでボールを拾えない位置に打つかの戦略が交差する。

「3手先くらいまでは考えています」と渡辺。頭脳と技術の戦いになるという。

 360度、全方位から来るボールを打つ。「上手な人は、ボールをほとんど見ていなくて。周りの情報を得ている感覚に近い」という言葉が面白い。認識はするが凝視しない。ボールだけではなく、体の向きやラケットの角度に至るまで視野に入れているという。「ずっとクモの巣のように、糸を張っているイメージでプレーしています」。アジア大会で、渡辺がどのようにクモの巣を張っているか、予想しながら見ると醍醐(だいご)味を味わえるかもしれない。

 ◆渡辺 聡美(わたなべ・さとみ)1999年1月15日、横浜市生まれ、27歳。8歳で競技を始め、12歳から5年間マレーシアにスカッシュ留学。八洲学園大国際高、ローハンプトン大(イギリス)卒業。

2017年から日本選手権5連覇。プロ選手として世界ツアーを転戦し、25年世界選手権ベスト8。同年ワールドゲームズで日本勢初優勝。Greetings所属。170センチ。右利き。

 ◆ロサンゼルス五輪の追加競技 野球・ソフトボール、スカッシュ、クリケット、ラクロス、フラッグフットボールの5種目が追加された。このうちアジア大会では野球・ソフトボール、クリケット、スカッシュが実施される。クリケットは1900年パリ大会以来、128年ぶりに五輪に復帰。投手にあたる「ボウラー」が投げた球を「バッツマン(打者)」が平たいバットで打って得点を競う。野球の原型と言われる。日本ではまだなじみが薄いが、世界の競技人口は約3億人、ファンは10億人。

 ◆アジア競技大会 9月19日~10月4日まで16日間、愛知・名古屋を中心に全43競技が行われる。日本開催は32年ぶりで、アジア45の国と地域から約1万5000人が参加。水泳や馬術が東京、自転車が静岡、サッカーが大阪など全55会場で実施予定。非五輪種目のカバディやセパタクローといった大会ならではの競技も行われる。サッカーなど一部競技は、開幕前から前倒しで開始する。

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