ハーフシーズンで開催された百年構想リーグのEAST、WESTで1位だった鹿島、神戸が引き続きJ1をリードしていくのか。新たな監督を迎えたチームが反抗をみせるのか。J1は実力が接近しており、複数のチームに優勝の可能性があると考えられる。移籍市場も第1登録ウインドウの期限は9月16日となっており、今後まだまだ動きがありそうだ。
登録人数制限なしの影響で富めるクラブがより有利に
ド派手なセレモニーとともに、ついにJリーグの新たな時代が幕を開けた photo/Getty Images
シーズン移行したことで、Jリーグにどんな変化が生まれるか?後述する移籍の話題とともに注目したいのが、2026年2月1日からプロA・B・C契約制度が廃止されていることだ。1チームの登録人数に関して、2025年まで上限ありだったところ、2026年からは上限なしとなっている。
2025年までプロA契約の選手枠が27名(第2種含む)、ホームグロウン義務がJ1は4名だった。契約制度が撤廃されて上限がなくなったことで(ホームグロウン義務は継続)、理論上は資金力のあるクラブが質の高い選手を抱えることができる状態になったわけで、今後はクラブ間の格差がより生まれてくると考えられる。
新シーズンが開幕したとはいえ、移籍市場の第1ウインドウは9月16日までなのでまだまだ動きがありそう。とくに、ACLエリートを戦う鹿島、神戸、柏、京都、G大阪。
王者・鹿島の新戦力ヤン・マテウス。開幕戦から2試合連続でスタメン出場を果たし、第2節では先制点をアシストしたが、その後負傷交代を余儀なくされた photo/Getty Images
一方で、鹿島はいまの段階で29人しか登録していない。J1、ルヴァン杯、天皇杯、ACLエリートを戦っていくには(U-21Jリーグは未参加)、少々心もとない選手編成となっている。安西幸輝、樋口雄太などケガ人がいて、2節名古屋戦ではヤン・マテウスが負傷交代している。こうした事実関係をみると、鹿島は9月16日までにまだ補強があるか。
移籍市場が開いている間は、どんな移籍も起こり得る。開幕前には右SBの玉突き移籍があった。
欧州主要国のリーグは8月31日、9月1日あたりを移籍期限としており、Jリーグとは日程にズレがある。これもポイントで、国籍に関係なく欧州内での移籍を模索したが実現しなかった選手が9月になってからJリーグにやってくる可能性もある。要は、2026/27シーズンの前半戦を戦う戦力は、各クラブ9月16日以降に出揃うことになる。
冬になれば移籍市場の第2ウインドウの期間があり、海外も含めてまた選手たちが動く。そこには移籍金が発生(フリーやローンもあるが)するので、より富めるクラブが選手層を整えていくことになる。Jリーグは以前からクラブ間に格差が生まれることを良しとしており、数年前からすでにその兆候は出ている。メガクラブ、ビッグクラブがあれば、プロビンチャもある。シーズン移行によって、その方向へ進む流れが加速することになる。
ACL勢は苦戦する 優勝本命は広島か
白星発進を決めたものの、続く第2節ではFC東京を相手に2-2のドローに終わった神戸 photo/Getty Images
J1をみれば、千葉が17年ぶりに復帰したことでメモリアルイヤーにオリジナル10が揃うこととなった。1節の横浜FM×鹿島は1993年のJリーグ開幕からずっとJ1で戦い続ける両クラブの対戦で、G大阪×浦和、広島×千葉は当時の開幕戦と同じカードだった。この2試合はG大阪、広島のホームゲームなのも同じだったが、広島ビッグアーチがエディオンピースウイング広島となり、万博記念競技場がパナソニックスタジアム吹田となった。
記念すべきシーズンを制するのは、どのクラブになるのか?鹿島、神戸、広島、柏、G大阪、町田あたりが上位グループにいると考えられ、2節を終えて鹿島、広島、柏、町田が連勝スタート、神戸は1勝1分けというスタートになっている。
昨季王者の鹿島はマテウス・ブエノ、ヤン・マテウス、広瀬陸斗という必要最小限の補強で開幕を迎え、いずれも接戦を劇的なゴールでものにしている。勝ち点3を積み上げているが、マテウス・ブエノがまだチームにフィットしておらず、横浜FMと対戦した開幕戦ではボールロストからピンチになっていた。選手数が少ないなか、2節名古屋戦でヤン・マテウスが負傷交代するなど懸念事項もある。J1連覇、さらにはACLエリート制覇を見据えて、強化トップ(フットボールダイレクター)の中田浩二氏がどう動くかだ。2026/27シーズンを戦う鹿島の真の姿が見られるのは、まだ少し先になるか。
神戸も現状は動きが控えめで、即戦力で補強したのはアンデルソン・ロペス、渡辺皓太、髙橋壱晟の3人。アンデルソン・ロペスはケガで調整が遅れており、渡辺は2節を終えて出場がない。髙橋だけが2節FC東京戦で長い時間プレイした状況で、鹿島と同じくまだまだこれからという印象。佐々木大樹、扇原貴宏などケガ人もいる。神戸もまた、真の姿が見られるまでに時間がかかりそうだ。
第2節浦和戦で2ゴールを決めるなど、ここまで3ゴールと存在感を放つ広島の鈴木章斗 photo/Getty Images
鹿島、神戸に加えて、柏、G大阪、町田はACLエリート、ACL2を国内の大会と並行して戦っていく。例年、AFCのコンペティションを戦うクラブはJ1で苦戦する傾向があり、実際に昨季はどちらにも出場がなかった鹿島と柏が最終節まで優勝を争っている。そう考えると、上位グループのなかでACLに出場しない広島の存在がクローズアップされてくる。
百年構想リーグから指揮を執るバルトシュ・ガウル監督は、もともと攻守に連動性のあったスタイルに磨きをかけ、ハーフシーズン+オーストリアキャンプを経て完成度の高いチームを作り上げている。10年ぶりに帰還した浅野拓磨は負傷欠場中だが、コートジボワール代表のセバスティアン・アレーを前線に、加藤陸次樹、鈴木章斗の2シャドーが絶妙な距離間で動き回る攻撃は連動性+速さがある。
中野就斗、東俊希、新井直人、菅大輝など両サイドのコマは揃っていて、中盤には“広島の象徴”だった青山敏弘から背番号6を受け継いだ川辺駿、ネクストスターの中島洋太朗、さらにはザルツブルクから戻ってきた川村拓夢もいる。最終ラインには経験豊富な3人、佐々木翔、荒木隼人、塩谷司が健在で、年齢を重ねて安定感&信頼感を増している。
広島は1節千葉戦に3-0、2節浦和戦に4-1で快勝している。浦和戦で鈴木が奪った先制点は最終ラインから正確にパスをつないでフィニッシュしたもので、相手のプレスをかわすお手本のようなゴールだった。昇格組の千葉、監督が変わった浦和との対戦ではあるが、広島は「個」の質が高い選手たちが、チームとして完成度、熟成度の高いサッカーを披露して連勝スタートを切っている。AFCのコンペティションもなく、今季J1の主役になる力を持っているのは間違いない。
明神監督のG大阪は継続路線 C大阪、浦和は時間が必要か
クラブのレジェンドで、近年はコーチとしてもG大阪を支えてきた明神新監督。
百年構想リーグから2026/27シーズンの間に監督交代を行ったクラブが5つある。浦和、横浜FM、G大阪、京都、C大阪で、このうちG大阪は前任者のイェンス・ヴィッシング監督がキャンプ中にアル・イテハド(サウジ)の監督に就任する急転直下の退任だった。
とはいえ、引き継いだのはヴィッシング監督、さらにはその前のダニエル・ポヤトス監督のもとでもコーチを務めていた明神智和監督で、G大阪は昨季ACL2で優勝した強度を高く保つスタイルが継続されている。今季のACLエリートはプレリミナリーステージからの出場となったが、江原FC(韓国)と敵地で戦い、延長戦のすえ名和田我空が決めた1点を守り切って本戦出場を決めている。
ただ、中三日で迎えたこれまた敵地での水戸戦には1-1で引き分けており、J1とACLを戦う難しさにさらされている。G大阪は監督交代の影響はあまりなさそうだが、過密日程をどう戦っていくかが課題になる。
C大阪も続投予定だったアーサー・パパス監督をアル・イテファク(サウジ)に引き抜かれたことで、パブロ・マチン監督を新たに招へいして新シーズンに突入している。百年構想リーグではWESTの3位に食い込んだが、そのチームから石渡ネルソン、中島元彦、本間至恩が移籍。開幕戦こそホームで岡山に2-1で競り勝ったが、2節福岡戦は敵地で0-3と完敗している。新監督のもと仕上がっていくには時間がかかるかもしれない。
浦和もまた時間がかかりそうなスタートを切っている。J1の戦い方を心得ている曺貴裁監督を迎えたが、イサーク・キーセ・テリン、石原広教、関根貴大、松尾佑介など出場数が多かった選手がチームを去ったなか新たなチーム作りを進めており、1節G大阪戦3-4、2節広島戦1-4と厳しい連敗スタートとなっている。
新体制となった浦和にとってこの2試合を難しくしたのが、G大阪戦の前半途中にあったマテウス・サヴィオの退場だった。新監督のもと新加入の選手を加えて戦う初戦で数的不利になってしまうと、これはやはりきつい。一度は逆転する出力を発揮したが、すぐに追いつかれて逆転されてしまった。
続く広島戦は完敗で、現時点でのチーム力の差が如実に出た形となった。曺貴裁監督はこれまで、湘南、京都といったJ1とJ2を行き来するクラブを時間をかけて選手の成長をうながしてジワジワと強くしてきた。浦和はJ1で現実的に優勝を狙えるクラブのひとつだったが、曺貴裁監督の就任に併せていったん後退し、あえてこれまでとは異なるベースを構築する選択をしている。歩みを下げたスタートから、どこまで回復、さらには上昇していけるのか。浦和は自ら難しい選択をし、新シーズンを迎えている。
16歳ながら横浜FMのコリカ監督もその才能に一目置いている。開幕戦で衝撃デビューを飾り(J1の開幕先発選手としては史上最年少)、ゴールまで決めてみせた三井寺眞 photo/Getty Images
横浜FMはスティーブ・コリカ監督、京都サンガはランコ・ポポヴィッチ監督を招へいし、この両クラブもそれぞれ新しいスタートを切っている。ホームタウンのポテンシャルを考えればどちらもビッグクラブ、あるいはメガクラブになる可能性を持っており、それに付随する成績を収めたいところだ。
すなわち、新監督にかかる期待が大きく、厳しい目で評価されることになる。コリカ監督は16歳の三井寺眞を開幕戦から積極的に起用し、1勝1敗という成績を得ている。京都は10名のブラジル人を擁する新時代に向けた選手編成で、J1での指導経験が豊富なポポヴィッチのもとACLを含めてどう戦っていくかはこれからになる。
優勝争い、新監督を迎えたクラブの動向だけではなく、昇格組の水戸、長崎、千葉がどんな戦いをみせるかにも注目が集まる。とくに、水戸ははじめてのJ1参戦で、ホームスタジアムを水戸信用金庫スタジアムに変更したエポックメイキングな1年を迎えている。内野航太郎、舩橋佑、谷口海斗など計算できる即戦力を補強しており、残留に向けた意気込みは十分だ。
昇格組の水戸、長崎、千葉が残留を勝ち取ったときは、代わりに降格するクラブが存在するということ。前半戦を終えて危機感が芽生えたクラブは、移籍市場の第2ウインドウで積極的に動くことになる。優勝争いとともに、予測不能な残留争いも見どころとなる。
文/飯塚 健司
※電子マガジンtheWORLD323号、8月20日配信の記事より転載

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