「ペップ後」のプレミアリーグの行方は? Photo/Getty Images
「カオス」ではなく計算された高速攻撃
「ポスト・ペップ時代」の幕開けか。2026-27シーズンのプレミアリーグ開幕節では、これまでとは少し異なる潮流が見え始めた。
グアルディオラがプレミアリーグにもたらしたものの一つが、ボールを保持することで試合を支配するという考え方だった。高い技術と緻密なポジショニングによって相手からボールを奪い、失わないことで守備にもつなげる。ペップ・シティの成功は、プレミアリーグ全体にも大きな影響を与えてきた。
ところが、今季の開幕節では興味深い現象が起きた。9試合のうち6試合で、より多くボールを保持したチームが勝利を逃している。
リヴァプールは60%のポゼッションを記録し、27本のシュートを放ちながら引き分け。マンチェスター・ユナイテッドは71%を保持したにもかかわらず、昇格組のハルに敗れた。トッテナムも60%を保持しながら3-0で敗戦。ノッティンガム・フォレスト、サンダーランド、クリスタル・パレスも、それぞれ相手を上回るポゼッション率を記録しながら勝利を逃した。
もちろん、開幕直後のデータであり、これだけでプレミア全体の変化を断定することはできない。それでも、単純にボールを保持することが勝利に直結しないという傾向は、今季の戦術を考えるうえで興味深い材料になっている。
そして、ロネイ記者がより注目したのが、試合そのものの「リズム」だ。
後半には多くの交代選手が投入され、試合が明確に複数の局面へと分断される。スコアや試合の流れに応じて、別の選手たちがピッチに入り、戦術の方向性そのものが変化していく。そこでは、かつてのように90分間を一つのゲームモデルで支配するというより、試合の特定の瞬間を狙って一気にギアを上げる戦い方が目立った。
象徴的だったのが、ニューカッスルのアンソニー・エランガだ。
リヴァプール戦で決めた先制ゴールは、わずか12秒、2本のパスで約70メートルを駆け抜けたカウンターから生まれた。そこにあったのは、即興的なひらめきというより、あらかじめ準備された動きと圧倒的なスピード、そしてフィジカルだった。
こうした「高速化」は、他の試合でも目立った。ボールを奪った瞬間に複数の選手が一斉に前へ走り出し、特定の状況をトリガーとして組織的に攻撃へ移行する。個人の自由な突破だけではなく、データや分析に基づいて「ここで一気に攻める」という瞬間をチーム全体で共有しているのだ。
ロネイ記者は、これを単純な「カオス」とは表現しない。むしろ「管理されたショック&アウェー」とでも呼ぶべき、計算された高速攻撃だと分析している。
つまり、ペップのポジショナルプレイが否定されたわけではない。ボールを保持することは、依然として相手を動かし、ボールを失った瞬間の守備を準備するための重要な手段だ。実際、グアルディオラ後期のマンチェスター・シティも、必ずしもポゼッション一辺倒ではなく、より直接的な攻撃を取り入れていた。
一方で、ポゼッションそのものを目的化すれば、リスクを避けるだけの停滞したサッカーにもなり得る。だからこそ現在のプレミアでは、ポゼッションによって相手を動かした後、あるいはボールを奪った直後に、どの瞬間でリスクを取って前へ出るのかが重要になっている。
今季は、ニューカッスルのマティアス・ヤイスレやトッテナムのロベルト・デ・ゼルビら、スプリントやトランジションを重視する指揮官も新たにプレミアで存在感を示そうとしている。
そして、興味深いのがグアルディオラの後継者となったエンツォ・マレスカだ。マレスカのサッカーは依然としてボール保持とポジショナルプレイを基盤としているだけに、プレミアで強まりつつある「高速・高強度」の潮流にどう対応するのかが注目される。
ペップがプレミアリーグから去ったことで、その影響力まで消えたわけではない。むしろ、10年間にわたってリーグ全体の戦術文化を変えたからこそ、その次の変化もまたペップの存在を抜きには語れない。
ポゼッションか、カウンターか。その単純な二択ではない。
ボールを保持して相手を動かし、狙った瞬間だけ一気にスピードを上げる。データ、フィジカル、交代選手、綿密な準備によって「自由に見える攻撃」さえ管理する――。
2026-27シーズンのプレミアリーグは、そんな新たな進化の入り口に立っているのかもしれない。ペップの時代が終わったのではなく、ペップによって変えられたプレミアが、さらにその先へ進もうとしている。

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