WBC初優勝からわずか3カ月……ベネズエラ代表を襲った悲劇 ...の画像はこちら >>

WBCで初優勝したベネズエラ代表だが…… photo/Getty Images

家族を失った選手も

2026年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で初優勝を果たし、歓喜に沸いたベネズエラ代表。しかし、わずか数カ月後、その祝賀ムードは一変した。

6月24日に母国を襲った大地震によって甚大な被害が発生し、選手たちは優勝を祝うのではなく、復興支援に力を注ぐことを決めようとしている。

ベネズエラ代表を率いたオマール・ロペス監督は、WBC優勝を記念した11月のパレードを開催するため、数週間にわたって関係者や選手たちと準備を進めていた。野球熱の高い母国で、代表チームによる史上初の優勝パレードを実現することが、ロペス監督の夢だった。

ところが6月24日、マグニチュード7.2と7.5の地震がベネズエラ北部を襲った。首都カラカスと隣接するラ・グアイラ州などで甚大な被害が発生。ベネズエラ政府によると、8月3日時点で確認された死者は6125人に達し、6万0992人が病院で治療を受け、4万3679世帯が何らかの被害を受けたという。がれきの撤去も続いており、行方不明者の捜索は現在も続いている。

こうした状況を受け、ロペス監督は優勝メンバーと話し合い、パレードを延期することを決めた。

「国にとって本当に素晴らしいものになったはずです。でも、起きてしまったことによって難しくなりました。あまりにも多くの人が亡くなり、まだ見つかっていない人もたくさんいます」

ミルウォーキー・ブリュワーズのアントニオ・センザテラは、母国の惨状を前にそう語った。

現在、ロペス監督が思い描いているのは祝賀イベントではない。
今オフにWBC優勝メンバーを数日間ベネズエラに集め、義援金の募金や野球教室、物資の配布、被災地の清掃などを行う復興支援活動だ。サルバドール・ペレス、ロナルド・アクーニャJr.、マイケル・ガルシアらとも話し合いを進め、7月下旬には政府関係者とも具体的な計画について協議を始めたという。

コロラド・ロッキーズのエゼキエル・トーバーも「みんなで集まるのはいいと思う。でも、助けるために集まりたい。祝うためではない」と語っている。

「僕たちは優勝した。ベネズエラにとって本当に大きなことで、僕たち自身にとっても素晴らしい瞬間だった。でも、今、彼らが必要としているのは別のもの。助けが必要なんです」

選手たち自身も、遠く離れた米国でプレイを続けながら複雑な思いを抱えている。

ロサンゼルス・ドジャースのミゲル・ロハスは、地震発生時、妻と米国生まれの2人の子どもがベネズエラに滞在していた。パスポートの更新とベネズエラ国籍取得の手続きのためにカラカスを訪れており、建物が倒壊した現場からわずか数ブロックの場所にいた。滞在していた建物も揺れたという。


家族が無事だったことには安堵した一方、多くの同胞が犠牲になった現実に心を痛めた。

さらにボストン・レッドソックスのウィルソン・コントレラスは6月29日、ベンチで涙を流した。ドジャースの捕手エリエセル・アルフォンソはその6日後、16歳の妹エリアナさんと継母パトリシアさんががれきの下から遺体で発見されたことを知った。アルフォンソはその数時間後にメジャーデビューを果たしている。

今季の開幕時点で、MLB30球団にはベネズエラ生まれの選手が60人所属していた。多くの選手が母国への思いを抱えながら、米国でプレイを続けている。

「そこにいたい。でも、僕たちはここで仕事をしています」

センザテラはそう語り、トーバーも「何もできていないように感じてしまう。ここからできる限りのことをして、物資を送ったり寄付をしたりしている。でも、それでも助けになっていないように感じることがあります」と苦しい胸の内を明かした。

MLBとMLB選手会は6月下旬、復興支援のため米赤十字に100万ドルを共同寄付。複数の球団も多額の寄付を行ったほか、募金活動などを実施している。
ベネズエラ出身選手たちも、それぞれの形で母国への支援を続けている。

わずか5カ月前、ベネズエラはWBCで歴史的な歓喜を味わった。日本、米国、ドミニカ共和国など強豪国がスター選手をそろえる中、ベネズエラは準々決勝で日本を破り、準決勝ではイタリアを撃破。決勝ではエウヘニオ・スアレスの9回勝ち越し二塁打で米国を下し、悲願の初優勝を果たした。

ロペス監督にとって、あの優勝は母国に喜びを届ける特別な瞬間だった。しかし今、その喜びを上回るほど大きな悲劇がベネズエラを覆っている。

「私たちは希望だった。喜びや幸せな日々を届けられる存在だった。でも、この悲劇によって、私たちの国が味わっていたものがすべて奪われてしまったように感じます」

そしてロペス監督は、こう言葉を続けた。

「今は祝う理由がありません。亡くなった兄弟や姉妹があまりにもたくさんいるのです」

WBC王者としての歓喜を祝うのは、母国が復興を果たした後でいい。今、ベネズエラ代表が掲げようとしているのは、優勝トロフィーではなく、被災した同胞とともに復興を目指すという新たな使命だ。

編集部おすすめ