日本たばこ産業(JT、2914)の株価が高値圏で推移しています。7月24日の終値は6,461円。

会社予想の配当利回りは約3.7%と、高配当株の代表格として個人投資家に根強い人気があります。たばこは販売数量が長期で減り続ける「斜陽産業」というイメージが強いにもかかわらず、JTの利益は過去最高水準を更新し、株価も右肩上がりです。この一見ちぐはぐな現象はなぜ起きるのか。たばこ会社ならではの決算の見方を押さえたうえで、業績と株価の関係を読み解きます。



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■数量が減っても利益は伸びている



2025年12月期は、売上収益が3兆4,677億円、営業利益が8,670億円、当期純利益が5,102億円でした。会社は翌2026年12月期について、売上収益3兆6,970億円(前期比6.6%増)、営業利益9,210億円(同6.2%増)、当期純利益5,700億円(同11.7%増)と、過去最高水準の利益を見込んでいます。実際、2026年1~3月期は売上収益が前年同期比15.2%増、営業利益が同24.7%増と、力強いスタートを切りました。



たばこの本数が減っても利益が伸びる理由は主に3つあります。第一に値上げです。1本あたりの単価を引き上げることで、数量減を補って余りある収益を確保しています。

第二に、利益の柱が海外たばこ事業(JTインターナショナル)であること。世界各国で事業を展開し、円安になれば海外で稼いだ利益が膨らみます。第三に、加熱式たばこ「Ploom(プルーム)」など次世代製品への移行です。



■JTの売上は「たばこ税を除いた」数字で見る



ここで、たばこ会社ならではの決算の見方に触れておきます。たばこの店頭価格は、その多くをたばこ税が占めます。ポイントは、JTが売上収益を「たばこ税を差し引いた後」の金額で表示している点です。会社は収益認識の注記で、たばこ税を収益から控除し、これを除いた金額を売上収益として計上していることを明記しています。つまり、決算書に並ぶ売上収益には、私たちが店頭で払う税金分は含まれておらず、税を含めた市場規模はこの数字よりずっと大きい、ということです。売上の額面だけを他業種と単純に比べるのではなく、企業の実力は利益と利益率で捉えるのが素直です。



その利益率が、JTのすごみを物語ります。営業利益率は約25%。食品・飲料大手が数%~10%前後であることを考えると、際立って高い水準です。

ブランド力と、値上げしても客が離れにくい商品特性(いわゆる価格支配力)が、この分厚い利益率を支えています。株主資本利益率(ROE)も約13%と、キリン(約12%)やアサヒ(約8%)といった同じ食料品セクターの大手を上回ります。もう一つ、JTならではの特徴が、財務省が発行済み株式の約3分の1を保有している点です。法律にもとづく政府保有であり、安定株主が存在することは、経営の安定と手厚い株主還元の背景にもなっています。



■高配当株が"割安"を抜け出すとき



では、株価はこの実力をどう評価しているのでしょうか。



7月24日の終値6,461円をもとにすると、会社予想の1株利益(予想EPS約321円)に対する予想PER(株価収益率)は約20倍、1株純資産に対するPBR(株価純資産倍率)は約2.8倍です。配当利回りは約3.7%です。



かつてJTは「規制が厳しく、数量も減る斜陽産業」として、株価が長らく低迷し、利回りだけが高い"割安株"の代表でした。ところが、値上げと海外・円安効果で利益成長が続くと市場が認めた結果、株価は水準を切り上げ、高配当を受け取りながら株価上昇も期待できる銘柄へと評価が変わってきました。低PBRから抜け出しつつある今、単純な「利回りが高いから割安」という理屈だけでは語れなくなっています。



■高配当の裏にある「値上げと為替」への依存



JTの魅力は、景気に左右されにくいディフェンシブな収益と、手厚い配当にあります。会社予想の年間配当は242円で、生活必需品に近いたばこの安定需要が、その原資を支えています。



一方でリスクもあります。たばこ規制の強化や販売数量の一段の減少、地政学リスク(ロシアを含む海外事業への影響)、そして円高に振れた場合の海外利益の目減りです。加熱式たばこの競争も激しさを増しています。高配当という安心感の裏で、利益の源泉が値上げと海外・為替に大きく依存している点は、頭に入れておきたいところです。株価がすでに高値圏にあるだけに、これらの前提が揺らいだときの反応にも目を配る必要があります。



■執筆者からのまとめにかえて



以前は、JTは「政府が大株主で、規制も厳しく、数量も減る。高い配当だけが取り柄」という見られ方をされる典型的なバリュー株でした。それがいま、株価は当時とは見違える水準にあります。何が変わったのか。事業そのものというより、市場の"見立て"が変わったのだと考えると腹落ちします。



私は以前から、株式市場は「良い会社かどうか」ではなく「その良さが続くと信じられるかどうか」で動くと考えてきました。JTはまさにその好例です。

数量が減るという逆風の中でも、値上げと海外展開で利益を伸ばせると市場が信じ始めた瞬間に、低かったPBRが切り上がった。トヨタのようなバリュー株が置き去りにされる局面がある一方で、JTのように"斜陽"とされた銘柄が再評価される展開もあるわけです。注目したいのは、この再評価がどこまで続くか。カギは、値上げを続けられる価格支配力と、海外事業のかじ取り、そして為替です。高配当につられて利回りだけを見るのではなく、利益の源泉が本当に持続するのかを見極めることが、これからのJT株との向き合い方になります。



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