2026年初めに資産5億円を築き、日米二拠点生活を送る米国株投資家PAN氏。かつてははやりの情報をうのみにし、リーマンショックで全財産約700万円を失い退場した過去があります。

挫折から学び、現在はAI株中心に徹底したリスク管理を行うPAN氏の波乱に満ちた投資人生と、成功の秘訣(ひけつ)に迫ります。


リーマンショックで退場も経験、元手100万円から資産5億円を...の画像はこちら >>

PANさんプロフィール

リーマンショックで退場も経験、元手100万円から資産5億円を築けた理由 米国株投資家 PANさんインタビュー[前編]
米国株投資家、YouTuber、著者。外資系テクノロジー企業(NASDAQ100企業)でマーケティング職を歴任し、株式の新規公開(IPO)前の企業2社でストックオプションを獲得。日本と米国の両方で勤務した。2023年に早期退職。2026年初めに資産5億円へ到達。現在は日本と米国の二拠点で生活している。YouTube: PAN米国株投資ちゃんねる X: @PAN_US_STOCK 書籍: 世界最強の米国株で始める株の教科書

投資の原点は『金持ち父さん貧乏父さん』、元手300万円で始めた「言いなり投資」

トウシル:米国株投資家として、金融資産5億円という利益を積み上げておられるPANさんですが、まずは投資を始めたきっかけを教えてください!


PANさん:投資を意識したきっかけは、2000年ごろにベストセラーになった書籍『 金持ち父さん貧乏父さん 』です。当初はまったく投資に興味がありませんでしたが、当時勤めていたハイテク企業の先輩から日本語版を借りて読み「人間は投資家になっていかないと駄目」「お金にも働いてもらわなければいけない」という考えを強力にインストールされました。


リーマンショックで退場も経験、元手100万円から資産5億円を築けた理由 米国株投資家 PANさんインタビュー[前編]
『 改訂版 金持ち父さん貧乏父さん ーーアメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学 』/著者:ロバート・キヨサキ/初版は2013年11月発売/筑摩書房

トウシル:あの本をきっかけに投資に目覚めた方は多いと思います。読んですぐに投資を始めたのでしょうか?


PANさん:いえ、少し時間がたってからです。投資を始める前に、その先輩から「会社員はいつクビになるか分からないから、3カ月分の生活費をためたほうがいい」と言われたのを機に、意識して貯金をするようになりました。


 真面目にためるうちに貯蓄癖がつき、3カ月分が6カ月分、1年分とまとまった金額が口座に残るようになりました。そうなると「銀行に置いたままではもったいない」と考えるようになり、実際に投資を始めました。


トウシル:最初の元手はどのくらいでしたか。


PANさん:当時はまだ20代半ばで、その時口座に入っていた約300万円が元手になりました。最初は日本株から始めましたが、銘柄は自分で選んでおらず、対面証券の担当者に「買ったほうがいい」「そろそろ売り時だ」と、言われるままに売買していました。


 当時の情報源はマネー雑誌くらいで、自分で考えるだけの知識も情報もありません。流行していたBRICS投資(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国を含む新興国グループへの投資)にも飛びつきましたし、証券会社との付き合いで投資信託も買いました。


トウシル:今のPANさんからは想像できない「言いなり投資」ですね。


PANさん:そうなんです。僕は本来、リスクばかり考える性格です。家を選ぶときはハザードマップを見て、山や川、海、埋め立て地の近くを避けます。自宅にはバックアップ電源や2週間分の水と食料、非常用トイレも用意しています。それなのに、当時の投資は完全に人任せでした。


追加しては消えていく100万円…リーマンショックで約700万円を失い退場

トウシル:その「言いなり投資」が大きく変わるきっかけは何だったのでしょう。


PANさん:2008年のリーマンショックです。FXにも手を出していて、当時、高金利で流行していたニュージーランドドルを多く保有していました。


 その時も、一応過去10年のチャートを調べて、最安値まで下がってもロスカット(含み損が一定の水準を超えた場合に、FX会社が強制的に決済する仕組み)されないレバレッジに抑えました。今考えればまだまだ甘かったのですが、当時は「これなら堅実だ」と自信を持って投資していました。


トウシル:過去10年の最安値に耐えられるなら、かなり慎重にも見えますが…。


PANさん:でも、リーマンショックは「100年に1度の暴落」で、その想定を簡単に超えてしまいました。

毎日毎日下がり続け、気がつけば「100万円を入れなければロスカットになる」という状況です。100万円追加する→なくなる→また100万円追加する→なくなる…を、脂汗をかきながら繰り返しました。いつか戻ってくれることを祈りながら…。


 それに、ちょうどこの頃に子どもが生まれました。それなのに貯金は減っていく一方です。また勤務先は外資系企業でしたので、ある日突然仕事を失うかもしれません。これから先どうなってしまうのか、とにかく不安でいっぱいでした。


トウシル:人生の不安が同時に押し寄せてきたんですね…。


PANさん:はい…(しみじみ)。最後に100万円が残ったときに感じたのは「最後の現金を失った上で仕事までなくなったら家族を守れない」という恐怖です。そこで追加証拠金(略して追証[おいしょう]と呼ばれる)を入金するのをストップし、ロスカットを受け入れました。失った金額は約700万円。

当時のほぼ全財産です。


 資産の減少はそこで食い止められたものの、この先投資を続けるかやめるかさえ考えられないほど、ただぼうぜんとしていました。


 ただ、幸いにも仕事は失いませんでした。このときに学んだのは、「景気が悪くなっても企業はパソコンやインターネットを簡単には手放さない」「テクノロジーセクターは不況でも持ちこたえられる」という市場の動きです。決して安い勉強代ではありませんでしたが、このときの経験は今の投資にも役立っています。


4年の空白を経て再出発。ストックオプション3,000万円を米国株へ

トウシル:一度市場から退場した後、どのように投資へ戻ったのですか。


PANさん:4年ほどは投資から離れ、相場について考える機会もほとんどありませんでしたが、給与の一部を貯蓄する習慣は続けていました。


 その後、キャリア3社目に、上場前の米国テクノロジー系ベンチャー企業へ転職しました。自分が勤めている会社が成長し、2013年に上場した時、ストックオプションで得た資金が30万ドル、当時の為替で約3,000万円になったんです。


トウシル:再出発には十分な金額ですね。今度はご自身で運用したのでしょうか。


PANさん:それが…実はまた「言いなり投資」に戻ってしまいました(笑)。預金していた米国の銀行から「まとまった資金があるなら運用を任せませんか」と勧められ「プロに運用を任せるなら安心」と考えてラップ口座のような商品を契約したんです。


 しかし、毎月届く英語の分厚いレポートはよく分からず、ただ、資産だけがじわじわ減っていくことだけは理解できて、サーッと青ざめました。最終的には「やっぱり人の言いなりでは駄目だ!」と悟って全解約し、米国の証券口座を開いて、初めて自分で個別株を選び始めたんです。


トウシル:いよいよ、ご自身の意思による本格的な投資デビューですね! どのような基準で銘柄を選んだのでしょうか。


PANさん:選んだのはテクノロジー関連の銘柄です。財務分析は分かりませんでしたが、同じ業界に勤務していたこともあり、中の人目線で、「この会社の製品は他社より優れている」「広く使われていて評判がいい」といった点は判断できます。そこで、自分が理解し期待できる製品を持つ企業に投資し始めました。


 当時はまだ話題になっていなかったズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(現:ズーム・コミュニケーションズ:ZM)を買ったのも2019年ごろです。会社で使った経験から「予約しやすく、遅延も少ない。便利な製品だ」と感じ、将来性に期待が持てる製品でした。結果的に、コロナ禍により大きく成長してくれたのはうれしい誤算でした。


製品を見る力と会社員の「入金力」で、資産は億のステージへ

トウシル:ご自身で個別株の運用を始められてから、投資の成績や資産総額はどのように推移していったのでしょうか。


PANさん:テクノロジー株の上昇ウェーブにうまく乗ることができたため、節目の数字だけを見ると、2016年に1億円、2019年に2億円、2021年に3億円、2024年には4億円と順調に増えていきました。もちろん途中には厳しい相場もありましたが、自分が強みを理解しているテクノロジー関連銘柄の成長が資産を押し上げてくれました。


トウシル:投資のリターンだけでここまで増えたのですか。


PANさん:いいえ。投資益だけでなく、会社員としての「入金力」を掛け合わせた影響も大きかったと思います。何度か転職をしているのですが、「上場前のベンチャー企業に入社→上場してストックオプション利益を得る」というパターンを二度経験しています。実は、そういう会社を狙って選び、入社しました。そのおかげでぐんと利益をゲットすることができました。


 ただ、米国企業はやはりシビアです。13年以上勤め、2度の米国勤務も経験しています。ただ、1度目の米国勤務では、英語力やスキルが他の社員に追いつけず、日本へ戻ることになりました。そこで、「自分は本当に全力でやり切ったのか」という後悔が残ったんです。


トウシル:そこで、もう一度、米国で働きたいと考えたのですね。


PANさん:はい。2年ほどかけて社内で働きかけ、もう一度米国勤務に挑戦させてもらいました。今度こそ悔いを残したくないと考え、毎日1時間半のオンライン英会話を続け、自分の会議を録画して家で聞き直すほどの努力を重ねました。そのかいあって社内でも一定の評価を得ることができ、給与も上昇し、入金力が増していったんです。


 こうして本業の稼ぎを投資口座へ追加し続けたからこそ、資産の増大が加速しました。しかし、仕事も投資も軌道に乗ってきたそんなときに、あのコロナショックがやってきたのです。


「社員を一人も解雇しない」宣言後のレイオフ。2度目の米国勤務の結末

トウシル:2020年前後で気になるのはやっぱりコロナ禍です。あのパンデミックはPANさんのキャリアに影響を与えましたか?


PANさん:当時、勤めていた会社の最高経営責任者(CEO)が、米国の人気テレビ番組に出演したのです。そこで彼は「このコロナ禍の危機にあっても、私は社員を一人たりともレイオフ(解雇)しない」と力強く宣言していました。ところがその後、私のポジションを含む大規模なレイオフが実施されたのです。


トウシル:ええっ! テレビでの宣言は一体何だったのですか…。


PANさん:ホントですよね(笑)。ある日、僕のスケジュールに予定にない会議の依頼が突然入ったのです。参加者を確認したところ、直属の上司だけでなく、本来そこにはいないはずの人事部のメンバーの名前がありました。


 僕は以前にも一度厳しい状況を経験していましたし、常に最悪を想定して働いていましたので、その画面を見た瞬間に「ああ~、そういうことだな」と全てを悟りました。そして予想通り、オンライン面談が始まると、予想通り、自分のポジションの閉鎖を告げられたんです。


トウシル:外資系は本当に厳しいですね…。


PANさん:ただ、良かった点もありました。上司に「僕のパフォーマンスの問題ですか」と一つだけ確認したところ、上司は涙を見せながら「あなたのパフォーマンスには何の問題もなかった」と言ってくれたんです。


 1度目の米国勤務では努力を出し切れなかった後悔がありましたが、今回はやるべきことをやり切ったと思えました。その意味では、少しホッとした部分もありました。


家族の安全を考えて日本へ。資産を後ろ盾に早期退職

トウシル:その窮地から、どうやって現在の生活へつながっていったのでしょうか。


PANさん:解雇通告の直後、社内システムへのアクセス権が完全に切れるまでわずか30分しかありませんでした。その間にこれまでお世話になった日本法人の社長へ連絡を入れると、幸いなことに「日本のマーケティング責任者として戻ってほしい」と打診されたのです。


 当時は米国内でコロナの感染拡大に端を発したアジア人への風当たりが急激に強くなっており、身の危険を感じることもありました。そのため、家族の安全を守るという意味でも、この打診はまさに渡りに船の選択でした。


トウシル:これまでの仕事ぶりが、日本での新しいポジションにつながったのですね。


PANさん:ありがたいことに日本へ帰国してからは、2023年に会社員を卒業するまで丸3年間、責任者として働くことができました。退職の引き金になったのは、会社の方針で「週3回の出社義務」が課せられたことです。


 僕の部下たちはリモートワークを続けているのに、マネージャーである僕だけが出社して、結局会社からオンラインで部下と話すという状況になりました。僕には組織のルールを変える力はありませんから、この働き方を受け入れるか、会社を辞めるかの二択しかありません。


トウシル:そこで、ついに会社員を卒業するという決断を下されたわけですね。


PANさん:はい。その頃には投資と入金によって資産も十分につくれていましたし、YouTubeやセミナーからの収入でも生活できるめどが立っていました。会社に人生の時間をコントロールされるくらいなら、自分の時間は自分で選ぼうと考えた結果、2023年に会社員を辞め、日米2拠点での生活で、自己資金で投資をしながらYouTube運営や投資情報発信などをして過ごしています。


トウシル:資産があったからこそ、働き方を自分で選べたのですね。


PANさん:そうですね。ただ、リーマンショックでほぼ全財産を失った経験があるので、資産が増えた現在も基本はフルインベストメントにはしていません。経済は何が起こるか分からないからです。


 一方で、守りに入ったわけでもありません。市場から退場しないための余力を残しながら、成長が期待できる分野には積極的に投資しています。現在はAI関連株を中心に、米国債券や現金、米国以外の資産も組み合わせています。


トウシル:リスクに備えながら、成長機会も狙っているのですね。後編では、現在のポートフォリオや「攻めの分散投資」、米国株の具体的な銘柄選びについて教えてください!


▼後編はこちら

ChatGPTも活用、暴落に負けない有望銘柄を選ぶ三つの条件とは 米国株投資家 PANさんインタビュー[後編]


(トウシル編集チーム)

編集部おすすめ