2026年7~8月の円キャリートレードを検証した結果、収益額ではNZドルやポンドが優位でした。一方、投資効率(資金に対する収益率)では、少額で取引できるトルコリラが首位となりました。

ただし、新興国通貨は価値下落や暴落リスクも高いため、単なる収益率だけでなく、リスクと資金効率のバランスを考慮した運用が重要です。


最強通貨はやっぱりトルコリラなのか!?円キャリートレード「最...の画像はこちら >>

FX収益×スワップ収益×資金効率で明らかになった「リアル勝者」

下半期の円キャリートレードは「逆風」スタート


 政府・日本銀行が大規模な為替介入を実施したことで、7月末の相場は円高方向へ大きく動きました。円キャリートレードには強い逆風となって、ポジション解消や縮小の動きも見られました。損失を被ったポジションはもちろんありますが、実は多くの円キャリートレードは、介入後ももうけを生み出しているのです。


 今回のレポートでは、2026年7月1日から8月20日までの50日間の収益を比較して、この期間の円キャリートレードに「強い通貨」と「弱い通貨」を明らかにしていきます。


1:円キャリートレード「強い通貨・弱い通貨」ランキング

期間:50日間(26年7月1日から8月20日まで)
数量:10万通貨


 ランキング表は、ドル円と円クロスを買った(ロングポジションを保有した)場合の為替収益(キャピタルゲイン)とスワップ収益(インカムゲイン)を合算した総合判定です。


最強通貨はやっぱりトルコリラなのか!?円キャリートレード「最強通貨」「最弱通貨」を2カ月データで検証する
注:▲はマイナスを示す

「強い通貨」と「弱い通貨」の特徴


 この期間は、「ドルの急落(円高)」が目立った一方、オセアニア通貨などのクロス円では円安と高金利の両取りに成功しました。スワップの高さはもちろんのこと、運用通貨の選択が、円キャリートレードの損益を大きく左右することを如実に示す結果になりました。


1. 強い通貨:ニュージーランドドル(NZD)、ポンド(GBP)、豪ドル(AUD)


 これらの通貨に共通する特長は、為替収益(キャピタルゲイン)とスワップ収益(インカムゲイン)が両立していることです。ニュージーランドドルや豪ドルは、中央銀行の利上げ期待が強いことが高パフォーマンスにつながりました。またポンドは、7月の首相交代によって国政の不透明感が払しょくされたことがポンド高につながっています。


2. 弱い通貨:ドル、スイスフラン


 ドル(USD)については、為替介入による4円近い円高/ドル安の影響で為替差損が大きく膨らみました。損失はスワップによるインカムゲインを大幅に上回り、結果として期間中の円キャリートレードの中ではワースト級の厳しい結果となりました。


 スイスフラン(CHF)は、今回のリスト中で唯一のマイナス・スワップ(買いポジションでスワップ損失)に加えて、相場がスイスフラン安に動いたため、FXとスワップの双方がマイナスとなる弱い結果となりました。


2:投資効率で見た「強い通貨・弱い通貨」ランキング

 同一数量で収益額を比較すると、円キャリートレードの強い通貨はオセアニア通貨とポンドでした。ところが、円の投資額で比較するとランキングは全く違ってきます。なぜなら、通貨ごとに必要な調達通貨(円資金)は全く異なるからです。


 同一数量のランキングでは元手が少なくて済む新興国通貨(トルコリラ(TRY)やメキシコペソ(MXN)など)の効率性を見落としてしまうことになります。


 投資効率を公平に比較するためには、「投資元本(資金)に対して何%の利益が出たか(収益率)」で計算する必要があります。そこで、2では「必要な円資金に対する収益率」という観点から資金効率を比較します。


期間:50日間(26年7月1日から8月20日まで)
投資元本:7月1日時点のレート×1万通貨(日本円換算)


最強通貨はやっぱりトルコリラなのか!?円キャリートレード「最強通貨」「最弱通貨」を2カ月データで検証する
注:▲はマイナスを示す

1. 資金効率で圧倒的に強い通貨は、トルコリラ(TRY)とメキシコペソ(MXN)


 ポンドは1万通貨買うのに約216万円必要ですが、トルコリラは1万通貨をわずか約3.4万円で買えます。元本が小さいので見かけの利益額は小さく見えますが、投資額に対するリターンの割合(資金効率)では最強となります。


 同じ100万円を投資した場合、ポンド円の収益は+1万100円ですが、トルコリラ円の収益はその5倍以上の+5万1,600円になります。トルコリラは今回、FX収益率のマイナスをスワップポイントの収益がカバーして堂々の1位になりました。これはある意味、キャリートレードの理想的形とも言えます。


2. ニュージーランドドルは効率性でも上位


 同一数量の比較でトップとなったニュージーランドドル円は、資金効率でも2位につけました。

ニュージーランドドルは、新興国通貨よりも元本規模(円資金)は大きいものの、ポンドに比べると半分で、バランスよくリターンを伸ばしています。


3. 最強通貨は「トルコリラ」なのか?


 資金効率の数値(見かけ上の利回り)で比較すると、トルコリラが、円キャリーの最強通貨と言えます。しかし、実際のトレード戦略としてトルコリラが最適であると判断するのは危険です。


 なぜなら、効率が良い通貨は、裏を返せば「為替が少し動くだけで大金が動く」という、レバレッジに近い効果が最初から組み込まれているからです。(ポンドは1万通貨買うのに約216万円必要です。216万円でトルコリラは約62万通貨買えます)


 トルコリラが高スワップである理由は、国内インフレ率が非常に高く、政策金利が引き上げられているためです。一般的に、高インフレ国の通貨は中長期的に価値が下がりやすいという原則があります。実際、トルコリラは、対円で一貫して下落トレンドを描いています。「スワップはもらえるが、元本が目減りする」という構図です。


 また、トルコリラに限らず新興国通貨は流動性が低いため、経済情勢や政治的混乱によって暴落するリスクもあります。


 資本効率とリスクとのバランスを調整することがキャリートレード成功のカギといえます。次回は、このランキング表をベースとした円キャリートレードの最適ポートフォリオを考えます。


※本レポートで使用している数値や試算は、理解を助けるための参考例であり、実際の利益を保証するものではありません。為替相場や金利は変動するため、実際の取引結果は大きく異なる場合があります。


(荒地 潤)

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