戦車の歴史は、「矛」と「盾」の競争の歴史でもありました。より厚い装甲が登場すれば、それを撃ち抜くための強力な砲が開発される。
その歴史に終止符を打とうとしているのが、フランス・パリ近郊で開催された防衛装備展示会「ユーロサトリ2026」でKNDS Franceが公開した、新世代戦車砲システム「ASCALON(アスカロン)」です。同社の担当者は、この140mm砲について「ゲームチェンジャーではない。ゲームキラーだ」と表現しました。
その理由について担当者は、「装甲を強化すれば、それを撃ち抜く砲弾が開発されるという競争が続いてきた。しかし140mm化によって、その競争そのものを少なくとも30年間は終わらせられると考えている」と説明します。
もちろん、将来的には新しい複合装甲などが登場し、再び競争は始まるでしょう。それでも「140mmなら、そのゲームを終わらせることができる」と強い自信を示しました。
ASCALONは、KNDSが提案する次世代戦車砲のコンセプトで、その最大の特徴は140mm口径への対応を前提として設計されている点です。
現在、アメリカや西欧諸国を中心としたいわゆる西側諸国の主力戦車の多くは120mm滑腔砲を採用していますが、KNDSによれば、現在の120mm規格では弾薬の大型化による性能向上にも限界が見え始めています。ロシア・ウクライナ戦争を受けて各国が将来戦車の在り方を見直すなか、120mm砲の延長線ではなく、その先を見据えた新たな火力が必要になるという危機感がASCALON開発の背景にある考え方になります。
しかし、ASCALONの本質は「140mm砲」であることではありません。
KNDSが「ゲームキラー」と呼ぶ自信を支える理由の一つが、140mm砲そのものの性能です。より大型のAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)を使用できるだけでなく、担当者は口径拡大によって砲身の剛性を高めやすくなり、走行間射撃時の砲身振動を抑えられると説明します。その結果、弾の散布界が小さくなり、命中精度の向上につながるという考え方です。
実際、今年1月に実施した試験では、140mm仕様のASCALONを搭載した試験車両が、1000m先の目標に対して走行間射撃を実施。正面だけでなく側方目標への射撃も行われ、その命中精度はルクレール戦車と「まったく同じだった」と担当者は説明しています。
また、ASCALONは140mm仕様だけでなく、120mm仕様にも対応したモジュラー設計を採用しています。両者は弾薬後部(薬莢側)の構造を共通化しており、閉鎖機や反動機構をそのまま使用しながら、砲身を交換することで120mmと140mmの口径変更が可能です。
担当者によると、砲身の交換作業自体は約15分で完了し、射撃管制装置や自動装填装置の調整まで含めても、大隊規模であれば約1週間で120mm仕様から140mm仕様へ換装できるといいます。これは戦場で即座に変更することを想定したものではなく、将来の脅威や運用構想の変化に応じて、計画的に火力を強化できる設計思想を反映したものです。
この仕組みにより、ASCALONは既存の120mm砲弾の備蓄や整備インフラを活用しながら導入を進められる一方、必要に応じて140mmへ発展させる余地も確保しています。既存資産を有効活用しつつ、将来的な火力向上にも対応できることが、このシステムの大きな特徴です。
ASCALONの狙いは、単に140mmという大口径砲を実現することではありません。120mmから140mmまで同じアーキテクチャー上で発展できるモジュラー設計を採用することで、将来の脅威や技術革新に合わせて火力を進化させ続けられる戦車砲システムを目指しています。KNDSが示したのは、140mmという口径そのものではなく、「将来にわたって成長できる火力システム」という新しい戦車砲の設計思想だったといえるでしょう。

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